■その加速の鋭さはポルシェ911級
少々オーバーなブリスターフェンダーを持つ、ちっぽけな2ボックスカーに195/55R16という太いタイヤがラクに入る。
インテリアはもうまったく文句ない。黒地に黄色の文字のメーターは、スピード、レヴカウンターを中心に油温まで揃っている。
イタリア車の伝統といえる魅力的なダッシュボードである。ドイツ車では味わえない。シート地がまたいい。フロントシートはレカロ製だが、ただバケットが深いというのではなく、乗降性も充分考慮されているところがいい。
シート全体がランチアご自慢のアルカンタラと呼ばれるスウェード状のテキスタイル(パターンのこと)でいかにもイタリアンファッションを思わせるダイアゴナル(斜め縞)となる。
エンジンはランチア・テーマieターボの2L DOHCターボを搭載したもので、ターボコントロールは、フルスロットル時、数秒間ブースト圧が高められるオーバーシュートシステムがつく。
最高出力185ps、最大トルク31.0kgmは1200kgのボディには充分でまことに速い。メーカー発表値は最高速度215km/h、0~100km/h加速6.6秒、0~1000m27.1秒である。
ギアレシオは1000回転時でフォースが30.9km/h、トップ37.7km/hと、コンチネンタルツアラー並みの高さであるにもかかわらず、このスピードの低い日本でもドンピシャッと感じられるのはトルクが太く、一気の加速が可能だからだ。
スピードは圧倒的に速い。加速はポルシェ911カレラ並みだ。そのトルクの太さは、さほど低いギアでもないのに箱根ターンパイク登りで再三フォースに入ることで証明されよう。
ハンドリングはよく曲がる。特にスティアリングの切り始めの際のレスポンス重視型で、安定型の4WDとは違う。といってストレートの安定感は悪くない。よくできたスポーティなFFによく似ている。
そして、スロットルオフでテールが流れ出す感じはまさしくFFだ。おそらく、ランチアはスロットル操作でも、クルマの姿勢を積極的に制御したかったのだと思う。
乗り心地はやや硬め。しっかりダンパーは締め上げられている。ノイズは低く、エンジン音は快適だ。
つまり、485万円の戦闘的な2BOXカーは、若干リアシートやトランクルームが狭いとはいえ、1台で乗用車とスポーツカーを兼ね備える理想的なギアである。
◎ランチアデルタ HF インテグラーレ主要諸元
- 全長:3900mm
- 全幅:1695mm
- 全高:1380mm
- ホイールベース:2475mm
- エンジン:直4DOHCターボ
- 排気量:1995cc
- 最高出力:185ps/5300rpm
- 最大トルク:31.0kgm/3500rpm
- サスペンション:前後ストラット
- トランスミッション:5MT
- 車重:1200kg
- 価格:485万円
- 登場年:1988年
- ※当時の取り扱いはガレーヂ伊太利屋
メーカー公表値
- 0~100km/h加速:6.6秒
- 0~1000m:27.1秒
- 最高速度:215km/h

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