いすゞ ジェミニZZ ハンドリングbyロータス試乗 国産小型スポーツたちが忘れたもの【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

いすゞ ジェミニZZ ハンドリングbyロータス試乗 国産小型スポーツたちが忘れたもの【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はいすゞ ジェミニZZ ハンドリングbyロータスを取り上げます。

FR(後輪駆動)であった初代からFF(前輪駆動)への変貌を遂げ、1985年5月に誕生した2代目「FFジェミニ」。「街の遊撃手」というキャッチコピーとともに、パステルカラーのジェミニがぴったり寄り添いパリの街中を走っていくCM、といえば、思いだす方も多いかもしれません。

1987年のモデルチェンジを経て、その翌1988年、新開発の1.6L 4バルブDOHCエンジン・4XE1型を搭載、足回りを英国のロータス社がチューニングしてBBSホイールをオプション設定(ZZ-SEのみ標準装備)したのが「ジェミニZZ ハンドリングbyロータス」です。

ジェミニのスポーツモデルとしての認知度を一気に高めたこのモデルを、徳さんはどのように評したか。1988年の試乗記からリバイバル。

※本稿は1988年に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:ベストカー2015年6月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■英国メーカー ロータスによるハンドリング チューニング

世界一多くのクルマを作り、技術も世界一とうそぶく日本にあって、サスペンションチューニングをイギリスの小さなスポーツカーメーカーに任せるというメーカーもある? ま、混沌こそが面白く、楽しいクルマも現われ得るということなのだろう。

ところで、ハンドリングというものは、絶対的なものじゃない。こういうハンドリングがいいんだ、とは誰も断定できない。そこにあるのは“好み”であり、こういうハンドリングを好む、ということなのである。

ロータスというスポーツカーメーカーは、その歴史を通じて、スポーツカーのハンドリングに一家言持つことでよく知られている。

シャープなスティアリングフィールと少々ロールを許すサスペンションチューニングを持ち味としている。このロータスは今、GMグループの一員であり、同じGMグループのいすゞが同族のよしみで、ロータス流のハンドリングを与えてもらいたいと願ったものと想像できる。

ロータスにとってFF車のハンドリングはきっと初めての経験だったに違いない。ロータスはFFジェミニをどう調教するか? こいつはロータスファンならずとも大いに興味があるところだ。

■カラーリングは重要だ

ハンドリングbyロータスのカラーリングは深いグリーンにペイントされている。いわゆるブリティッシュ・レーシング・グリーンというやつで、なかなか魅力的だ。しかし、ロータスのレーシング・グリーンは時代により少しずつ異なるとはいえ、もう少し明るいということをいすゞは知っているだろうか。

若草色に近いグリーンにゴールドのストライプ、これが長くティーム・ロータスのカラーだった。

とはいえ今回のジェミニハンドリングbyロータスのグリーンにゴールドというストライプも悪くない。このカラーはイギリスのグラフィックデザイン華やかなりし頃のもので、かのオリエンタルエキスプレスのカラーリングでもある。

こういう特別なクルマにとって、カラーリングも特別な意味を持ち、0~400m加速タイムなどと同じくらい重要だと私は認識している。

■ロータスの技術へのキャッチアップは成ったか?

このハンドリングbyロータスだが、結論からいうと、“カニ蒲”ほどではないが、インスタントの“松茸のお吸いもの”レベル以上の出来にある。つまり、ロータスの香りはするのだ。その香りの重要な部分はロールにある。ロータスはかつてのエランにせよ、コーティナ・ロータスにせよ、比較的ロールを許している。

しかし、重要なのはロールの過度特性で、そいつが、コーナリングスピードとコーナーのRにより、自然に沈みこむようでなければダメなのだ。

ジェミニZZハンドリングbyロータスのロールは実にロータスのそれなのである。では、コーナリング性能そのものはどうかというと、当然エンジンパワー、タイヤのグリップレベルしだいということが関係する。

今回新型の1.6L 4XE1エンジンを搭載した。このエンジンはDOHC4ヴァルブで135馬力と強力だ。FFでこのパワーを吸収することは難しい。ドライバーがコーナーで不用意にスロットルを深く踏めば、フロントタイヤはグリップを失い、アンダースティアの傾向を強めてしまう。しかし、これはFFの宿命であり、ロータスを攻めるわけにはいかない。

次ページは : ■新型エンジン 1.6L 4XE1

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