■「リミテッド」は本国で人気のディーゼル+MT
そんなカングーのフィナーレを飾る「リミテッド」には、本国のカングーで最も多い仕様であるディーゼル+MTが選ばれた。「フィナーレを飾る限定車は、もっとも活躍するカングーを日本のファンにも味わってほしい」というルノー・ジャポンの心意気なのだ。
そのビジュアルは、現行カングーの人気仕様のエッセンスが積極的に取り入れられている。
まず限定車で人気が高いアイテムのひとつである「ブラックバンパー&ドアミラー」と「ブラック鉄チン」を備えたフレンチシックな仕様に、限定車で好評だった4色とカタログモデルの2色を合わせた全6色のボディーカラーを用意した。
特別装備としては、LEDデイライト、バックソナー、専用エンブレムを装着。インテリアカラーについては、カタログモデル同様のブラックのファブリックシートとなる。
最大の特徴となるディーゼルエンジンは、正規仕様としてはカングー初。尿素SCRとDPFによる排ガス処理システムと最新のコモンレールシステムを備えた環境性能に優れたもの。
エンジン仕様は、1.5Lの4気筒SOHC直噴ターボ(ディーゼル)となる。最高出力116ps/3750rpm、最大トルク260Nm/2000rpmを発揮。燃費消費率は、19.0km/L(WLTC)となる。
ちなみにカタログモデルとなる1.2L直列4気筒DOHC直噴ターボ(ガソリン)は、最高出力115ps/4500rpm、最大トルク190Nm/1750rpmを発揮。燃費消費率は、JC08モードでの公表値となるが、12.9km/Lなので、ディーゼルのほうが圧倒的に燃費に優れる。ただ車重に関しては、ディーゼルのほうが70㎏重く、1520kgとなる。
■エンジンの味わい
ディーゼルモデルを語るうえで、これまでのパワートレインについても触れておく必要があるだろう。
初期型からフェイスリフト後まで長らく活躍した自然吸気1.6L直列4気筒エンジンは、ゆるいカングーのキャラには最適なおっとりしたもの。実用上の大きな不満はないものの、シグナルスタートで一歩遅れるカメさんであった。しかもATは、今どき4速。そのため、限られたパワーを使い切れる5速MTの支持率は高かった。
その状況を一変させたのが、2014年登場のダウンサイズエンジンの1.2L直列4気筒DOHC直噴ターボだ。平凡なスペックではあるが、低回転のトルクが増したことで、発進加速も向上。シグナルスタートで出遅れることも皆無に。加速もよくなり、より乗用車らしさも増した。
その一方で、最新型の洗練されたダウンサイズターボの走りが、おっとりした緩さの味わいが魅力のカングーと、ややミスマッチな部分があったのも本音だ。
■おっとりしつつ力強い加速はカングーにピッタリ
さて今回の主役であるディーゼルMTに話を戻そう。最新型ディーゼルなので、エンジン音は意外と静か。ただ質素なカングーの遮音性は高くないため、ややエンジン音が元気に感じられる。しかし、うるさいというほどではないのでご安心を……。
走りの差は発進時から実感。低速トルクが厚いディーゼルなので、クラッチミートは楽ちん。エンストとも、ほぼ無縁だ。アクセルワークに対するエンジン回転上昇は、ややおっとり。
ただ回転数の上昇とともに、モリモリとトルクが沸き上がる。加速は、1.2Lターボのような俊敏さはないが、専用のクロスされた6速MTにより、パワーを紡ぎながら、スムーズに街中を駆け抜ける。一般道ならば、5速で充分。6速は完全にクルーズ用だ。
その力強くゆったりとした走りは、まさにカングーにぴったり。車内に届くエンジン音に耳をすませば、メーターを見ずとも、シフトタイミングもばっちり図れる。シフトを巧みに操り、街中を元気に走らせる感覚は、ドライバーの胸を熱くするが、意外とスピードは出ていない。でも、それでいいのだ。法定速度内でも、操る楽しさが味わえるクルマは今どき、貴重だ。
もちろん、トルクはしっかりあるから、多くの荷物と人を載せても、非力さは感じさせないだろう。これぞベスト・オブ・カングーと言い切れる。
ただ導入台数は、最後の最後の生産枠一杯でもたった400台のみ。「カングーリミテッド ディーゼルMT」は、クルマ好きファミリーの日々をワクワクさせる最高の相棒となるだろう。迷わず、ディーラーにGO! と言いたくなる一台だ。
コメント
コメントの使い方