■細かな性能アップで所有する喜びを高めてくれる!
実物を見るまでは、「ノートの装備をちょちょいと変えた上級モデルなのだろうな」と思っていたが、自分の目で確かめてみると「オーラの商品企画をした人は天才かもしれない……」と思い始めた。
ベースのノートの良さを残しつつも、巧みに「これがオーラだ」と、ユーザーを納得させる要素が散りばめられている。
上質で大人っぽいデザインもそうだが、例えば、この3ナンバーサイズ化にも意図が感じられる。普通であれば、「5ナンバーサイズは取り回しやすい」という印象があるため、コンパクトカーがモデルチェンジして3ナンバーになっただけで「何事だ!」と批判されることがある。
その一方で、一般的には「3ナンバー=高級」というイメージも強い。オーラは、少しフェンダーが大きくなっただけで、取り回し自体はノーマルモデルとほぼ変わらないのは明白。
そのため、使い勝手はそのままに、この3ナンバーによって「ノートとは違います」「ちょっと良いクルマなんです」というオーナーの自尊心と所有欲を満たせる気がするのだ。
その他にも、モーターの出力は、ノーマルモデルに対して、20ps/20Nm増加した136ps/300Nmとなっている。試乗してみると、日常のシーンで使う分には、実はそこまでパワーアップしたようには感じない。
そもそもモーターは急激にトルクが出るようになっているので、思い切りアクセルペダルを踏み込むような比較をしない限り、加速感はそこまで変わらないのだろう。大切なのは、明確にパワーアップしていると数値で分かること。これも「良いものを買った」という納得感につながると思う。
さらに言えば、メーターの液晶パネルが7インチから12.3インチに拡大されていることもポイントだ。画面は高精細で綺麗だし、これまで高級車でしか見たことのないような大きさなので、新しいガジェットを手に入れたような嬉しさがある。
テレビやiPhoneなどと一緒で、画面が大きいというだけで、気持ちの上で「勝ってる」感が強い。
これだけ上質さを感じさせてくれるオーラなら、「もっとオプションを盛りたい」というユーザーも多いはず。
そのひとつに、BOSEオーディオのオプションがある。ヘッドレストにスピーカーが内蔵されているので、運転席や助手席を開けた瞬間、そのスピーカーとBOSEのロゴが目に飛び込んで来る。これだけでも「良いもの感」のインパクト大だ。
ちなみにBOSEはセットオプションになっているので、単体では装着できず、運転支援機能のプロパイロットや純正のナビゲーションシステムなど、全てセットで付いてくることになる。これらがコミコミで、なんと約40万円の高額オプション!
これらのオプションを付けても、同様の装備を整えた欧州車よりも安いかもしれないが……それにしても高い。良いオプションが揃っているだけに、「それぞれ単体で装備できるなら、自分のライフスタイルに合わせてもっとオーラを自由にカスタマイズできるのに」と、ちょっと残念に思った。
■e-powerの滑らかさと力強さで運転を楽しめる
実際に運転してみると、日産のe-powerらしく、モーターの滑らかで力強い加速感が印象的だった。新型になり、ルノーと共通のCMF-Bプラットフォームを採用していることもあって、先代のノートと比べて飛躍的にスムーズに気持ちよく走らせられるようになっている。
e-powerは、モーター駆動なので電気自動車のような乗り味なのだが、クルマ全体のバランスが整っているので癖が少ない。これなら、電気自動車やe-powerに触れたことがない人でも、モーターでの新鮮な走行を楽しみつつ、不安なく運転できると思う。
ただ、少し気になったのは、乗り心地とエンジン音。サスペンションなどはノーマルと同様だが、タイヤサイズが1インチアップして17インチになった影響もあって、でこぼこした路面を走ると少し硬さを感じる。
また、モーターのみで走っている時にはとても快適だが、バッテリー充電のためにエンジンがかかると、途端にエンジンの唸る音が室内に入ってくる。インテリアが上質だからこそ、こういった騒音が余計に気になってしまうのかもしれない。
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クルマを運転するのが好きな人は、「ノート オーラよりももっと運転しごたえのある欧州車が良い」と思うかもしれないが、運転の楽しさをそこまで追求しないのであれば、オーラは、生活を豊かにしてくれるコンパクトカーとして良い相棒になりそうだ。
上質なコンパクトカーを求めている人のツボを刺激する様々な要素に加えて、最新の安全装備や運転支援技術なども盛り込まれているので、その隙のなさに感服するばかり。正直、オーラは近年のモデルの中でも、万人に勧められるクルマの代表かもしれないと感じた。
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