2021年7月19日、トヨタの人気コンパクトハイブリッド「アクア」がフルモデルチェンジ。登場から約2か月が経過し、新型の販売傾向が少しずつ見えてきている。
爆発的ヒットを飛ばした初代とは違い、2代目アクアの売れ行きは少々独特なようだ。意外な動きを見せる新型アクアの販売状況をレポートしていく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
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■初代と大きく違う新型アクアの売れゆきと予定通り進まない「自社代替」
初代アクアが登場した際の、初月販売記録を覚えているだろうか。
2010年12月26日に登場した初代は、翌年1月31日までの約1か月間で12万台の受注を記録した。当時、トヨタが設定していた月間販売目標は1万2000台であり、初月で目標の10倍もの注文が集まったのだ。
この勢いと比べると、先ごろ登場した2代目アクアの初動は鈍い。トヨタが示した月販目標台数は9800台と控えめな印象だ。事前受注の注文台数は1万5000台程度と、実際の売れ行きもスローな立ち上がりになっている。
事前受注期に車両ディテールが公開されなかったアクアに対して、先代アクアを使うユーザーの買い替えに動く反応は鈍かった。営業マンも積極的に自社代替(先代アクアからの乗り換え)を進められず、販売店は予約台数の少なさに不安を感じていただろう。
また、いくつかのトヨタ販売店で話を聞くと、事前受注や発表後数日間の注文は、自社(トヨタ)ユーザーよりも、他社ユーザーの注文が目立ったという。他のトヨタ車ではあまり見ない、新型アクアの独特な売れ方だと営業マンは話していた
試乗車に乗ってみてから買い替え決めるという先代オーナーが多く、これからも安定して注文が入っていくことは見込まれる。爆発力ではなく安定感が、2代目アクアの売れ方なのだろう。
■ヤリスとは一味違う上質さでクラウンからの乗り換えも多数
大きく質感が高まった新型アクアは、これまでアクアに興味を持たなかったユーザー層を開拓している。特にトヨタ店とトヨペット店では、クラウンやマークXといった上級セダンに乗っていたユーザーが、新型アクアへ乗り換えるケースが増えていると聞く。
クラウンは14代目210系以前が、マークXはGRX130系が中心だ。
同じコンパクトカーでもヤリスでは、クラウンやマークXからの乗り換えはほとんど聞かない。新型アクアならではの動きに、トヨタ店やトヨペット店の営業スタッフも、驚いていた。
商談のきっかけは、話題作り程度にと、点検の待ち時間を使ってアクアの試乗を勧めたところからだという。実際に乗ってもらうと、走りの質感やクルマの完成度は、フラッグシップセダンのオーナーをも納得させるようだ。
上級セダンに乗るオーナーたちも高齢化が進み、そろそろ小さいクルマへ乗り換えたいという希望が潜在的にあったのだろう。コンパクトカー=チープというイメージがあり、乗り換えに二の足を踏んでいたところに、質感の高い新型アクアが登場した。
意外なほどスムーズに商談が進み、アクア同士の乗り換えよりも、販売しやすいという良いイメージを持つ営業マンも少なくない。メーカーの狙いでもあった、アクアが上級コンパクトへのシフトする道筋は、スムーズに進んでいる。
ヤリスとの共食いが危惧されていたが、アクアがヤリスと同じ市場で戦うことは少ないようだ。新型アクアならではの新しい販路が確立されている。
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