ランクル300は世界のクロカンSUVをリードできるのか!? 陸の王者頂上決戦!

■圧倒的なヘビーデューティー性能を誇るランクル

 今回のランクル300の取材には、ライバルとしてレンジローバーとメルセデスGクラスを持っていったのだが、「何よりもまず耐久信頼性」というランクル本来の“立ち位置”は明確だった。

 例えばオンロードをスポーツカーのようにカッ飛ばすなら、Gクラスのほうが洗練されているしファントゥドライブ度も高い。

メルセデスベンツ・G63 AMG
メルセデスベンツ・G63 AMG

 まして、今回持ってきたのはG63AMGだったからパフォーマンス的にも別格。カーボンニュートラルくそ食らえという気分で、内燃機関最後の徒花をエンジョイする背徳感がスリリングだ。

 いっぽう、エレガントな走りでは、レンジローバーにまさるSUVはない。端正なスタイリング、シックなインテリア、しなやかな乗り心地。にわか成金では乗りこなせない上品さとノーブルな味わいが素敵だ。

ランドローバー・レンジローバー fifty
ランドローバー・レンジローバー fifty

 こういうお金持ち向け高級4WDから乗り換えると、ランクル300の乗り味はよりヘビーデューティ寄り。

 ダウンサイズターボ化と新型ディーゼルエンジンでドライバビリティの質は近代化されたが、少し緩めのステアフィールやセパレートフレーム特有の乗り心地など、過酷な環境下で業務用として酷使されるのを前提としたクルマ造りの方向性は踏襲。

 また、これほど高度なオフロード性能を詰め込んだクルマが、エントリー500万円で買えるところも業務ユーザーへの配慮として素晴らしい。この点はトヨタ以外どのメーカーにも真似できない。

 もちろん、ランクルの本当の意味での実力は、日本の環境では試しようがない。

 以前、ランクル200のチーフエンジニアをつとめた小鑓貞嘉さんに話をうかがう機会があったが、ランクル本来の実力が問われるのはたとえば以下のようなシチュエーションだという。

「オーストラリアとかへ行くと、送電網の点検で毎日毎日200kmも300kmもオフロードを走行するユーザーさんがいるわけですよ。

 普通のクルマだとまずひと月ももたずに壊れるんだけど、そこで壊れると乗ってる人の命にかかわる。開発者としては責任を感じるとともにファイトが湧く現場というわけです」

この写真はGR SPORTのインパネで、専用デザインのステアリングなどが装着されるが、基本的なインテリア造形は全モデル共通だ
この写真はGR SPORTのインパネで、専用デザインのステアリングなどが装着されるが、基本的なインテリア造形は全モデル共通だ

 そこまで過酷な環境で使われるランクルは世界中でも1%以下だろう。しかし、圧倒的な余剰性能がブランド価値創造の原動力になるのはスポーツカーと同じ。300km/hで走る人はほとんどいなくても、300km/h出る実力がスポーツカーの価値だ。

 都会を走るランクルもそれと同じ。どんな過酷な状況でもこのクルマなら走破できるという絶大な信頼感こそが、ランクルを選ぶ最も大きな理由。それを再確認した試乗でした。

(TEXT/鈴木直也)

■GR SPORTは究極のランクル

オンロードでの操縦性、乗り心地にも優れるGR SPORT
オンロードでの操縦性、乗り心地にも優れるGR SPORT

 ランクル300のGR SPORTは特別なモデルではなく、ZXやVXなどと並んで、1グレードとして設定されている。

 “GR”のイメージから、オンロード志向の仕様なのかな? と思ってしまったが、さにあらず。

 ランクルの目指す性能をより磨き上げる……、つまりよりラフロードでの走破性能を高めるのがランクルGR SPORTの狙いなのだ。

 そのための装備として、電子制御で前後スタビライザー効果を変化させるE-KDSS、前後電動デフロック、専用チューニングされたサスペンションなどを標準装備する。

(TEXT/鈴木直也)

GR SPORTのタイヤはラフロードでの走行性能を重視した265/65R18。ZXは20インチ
GR SPORTのタイヤはラフロードでの走行性能を重視した265/65R18。ZXは20インチ

●トヨタ ランドクルーザー ZX(ガソリン)主要諸元
・価格:730万円
・WLTCモード燃費:7.9km/L
・全長×全幅×全高:4985mm×1980mm×1925mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2500kg
・最小回転半径:5.9m
・最低地上高:225mm
・アプローチアングル:32°
・ランプブレークオーバーアングル:25°
・デパーチャーアングル:26°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ、V35A-FTS
・排気量:3444cc
・最高出力:415ps/5200rpm
・最大トルク:66.3kgm/2000-3600rpm
・トランスミッション:10速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/55R20

●トヨタ ランドクルーザー ZX(ディーゼル)主要諸元
・価格:760万円
・WLTCモード燃費:9.7km/L
・全長×全幅×全高:4985mm×1980mm×1925mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2550kg
・最小回転半径:5.9m
・最低地上高:225mm
・アプローチアングル:32°
・ランプブレークオーバーアングル:25°
・デパーチャーアングル:26°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型6気筒DOHCディーゼルツインターボ、F33A-FTV
・排気量:3345cc
・最高出力:309ps/4000rpm
・最大トルク:71.4kgm/1600-2600rpm
・トランスミッション:10速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/55R20

●ランドローバー レンジローバー fifty 主要諸元
・価格:2299万2000円
・WLTCモード燃費:6.7km/L
・全長×全幅×全高:5005mm×1985mm×1865mm
・ホイールベース:2920mm
・車両重量:2650kg
・最小回転半径:6.1m
・最低地上高:220mm
・渡河性能水深:900mm
・エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
・排気量:4999cc
・最高出力:525ps/6500rpm
・最大トルク:63.8kgm/2500-3500rpm
・トランスミッション:8速AT
・サスペンション:ストラット/ウイッシュボーン
・タイヤサイズ:275/40R22

●メルセデス・ベンツ G63 AMG 主要諸元
・価格:2218万円
・WLTCモード燃費:6.6km/L
・ホイールベース:4665mm
・全長×全幅×全高:1985mm×1975mm×2890mm
・車両重量:2530kg
・最小回転半径:6.3m
・最低地上高:215mm
・アプローチアングル:31°
・ランプブレークオーバーアングル:26°
・デパーチャーアングル:30°
・渡河性能水深:700mm
・エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
・排気量:3982cc
・最高出力:585ps/6000rpm
・最大トルク:86.7kgm/2500-3500rpm
・トランスミッション:9速AT
・サスペンション:ダブルウイッシュボーン/リジッドアクスル
・タイヤサイズ:275/50R20

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