ランクル300は世界のクロカンSUVをリードできるのか!? 陸の王者頂上決戦!

■洗練された乗り味で、高級さとタフネスを両立

左からベンツ・G63 AMG、ランドローバー・レンジローバー、ランドクルーザー300
左からベンツ・G63 AMG、ランドローバー・レンジローバー、ランドクルーザー300

 地下駐車場からのスロープでは、ディーゼルのアイドリング直後からの滑らかなトルクで軽々走る。エンジン本体と車体の遮音性の高さからも出来のよさを実感した。

 気になったのは、アルミ材の強度対策か、ボンネットの左右が一段低くなっており、車体先端が見切れない。同じく低いベンツGでは盛り上がったウィンカーで感覚がつかめる。300ではコーナーポールが欲しくなるほどだ。

 街中では軽いタッチの操作で滑らかに流れに乗り、変速もスムーズかつ上質だ。

 もはや比較にもならないが、70系の車軸式サスを意識させるゴツイ乗り味などは皆無。フラットなターボのトルク上昇感といい、クロカン特有のスパルタンぶりは過去のものである。

 80系以来採用されるリンク式リアサスペンションは高速走行時の追従性が向上した。100系以降ではフロントの独立懸架化で、悪路での操安性は飛躍的に向上した。

 そして今回の300系では従来型に加えて高級SUVのしなやかな乗り味をモノにして、心地よい。

 ガソリン、ディーゼル両エンジンともV6ツインターボにダウンサイジング。時流に乗りつつ、ストレスなく応えてくれる。

ガソリン、ディーゼルともにV6としたランクル300。特にディーゼルは新開発された3.3Lで最大トルクは71.4kgmを発揮する
ガソリン、ディーゼルともにV6としたランクル300。特にディーゼルは新開発された3.3Lで最大トルクは71.4kgmを発揮する

 いずれもアイドリング領域から滑らかにトルクが発揮され、スムーズに大トルクを発揮する特性は、まさに王者の風格。

 高回転まで回しての加速も、ディーゼルはトルクの力、ガソリンは加えて伸びのある上昇感が楽しめる。

 このあたり同行したベンツGクラスのヤンチャな豪快感やレンジローバーの野太いV8パワーと一線を画し、ランクルには上品さを感じた。

レンジローバーとベンツGはV8で、ランクルはガソリン、ディーゼルともにV6を採用する
レンジローバーとベンツGはV8で、ランクルはガソリン、ディーゼルともにV6を採用する

 コスパ最強!! まさに『地球をエンジョイできるクルマ』の進化を実感した。まだ一時の試乗ではあるが、低速時のやや不整路面でのマッチングは、わずかにディーゼル優勢か。

 なぜかディーゼルには7人乗りの設定がないが、年1万km以上走るならお薦めだ。

(TEXT/根本純)

■ランクル300をさらに掘り下げる!!

 ランドクルーザーはオフロード系4WDとしては世界屈指のブランドで、とりわけ耐久信頼性に関しては間違いなく世界一と言われている。

ホイールベースは80系以来継承される2850mm。アプローチアングル、デパーチャーアングルなどは本格派クロカンにふさわしい実力。渡河性能は水深700mmを実現
ホイールベースは80系以来継承される2850mm。アプローチアングル、デパーチャーアングルなどは本格派クロカンにふさわしい実力。渡河性能は水深700mmを実現

 ぼくが面白いと思うのは、この評価をトヨタが意図的に狙って獲りに行ったわけではない、という点だ。

 もし、過酷なオフロード環境における耐久信頼性を優先してクルマを造ったら、答えはランクルにならない。

 出来てくるクルマは軍用車両や特殊車両に近いものとなり、オンロード性能は犠牲になりコストは増大するだろう。それはトヨタの仕事ではない。

 ランクルが目指しているのは、オフロード性能に優れた使い勝手のいい多目的車。それ以上でも以下でもない。

 価格でも世界中にたくさんの業務ユーザーを抱えているから、そんなに高価なクルマにするわけにもいかず、コスパにも相当気を遣っている。

新開発のGA-Fラダーフレームを採用
新開発のGA-Fラダーフレームを採用

 ただし、このへんがトヨタらしいのだが、ランクルのユーザーがもっとも重視するポイント、すなわち耐久信頼性に関してだけは別格扱いで、信じられないような執念深さでそれを徹底的に磨き込んでいる。

 先に「世界一を狙ったわけじゃない」と書いたが、この点に関してだけは開発チームの人たちも世界ナンバーワンという自負を隠さない。

 ランクルの耐久信頼性が世界トップクラスになったのは、たぶん60シリーズあたりからだが、それを誰に誇るでもなく淡々と改善作業を20年以上続けた結果、100シリーズの頃になると「周りを見回したら誰もついてこなかった」という状況に到達。

 200シリーズ以降は無人の野を行くがごとしで、今回の300に到るまでライバルといえるようなクルマは現われていない。

(TEXT/鈴木直也)

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