AWDはさらに乗り心地がいい
後半戦はソルテラAWDの試乗だ。FWDと比べると約90kg重たくなり、タイヤも20インチ(235/50R20)となるので、それなりに引き締まった足回りになるかと思ったが、路面が荒れたところではそれなりの突起ショックを受けるものの、ボディの揺れは18インチよりもむしろ小さく、すっきりとした乗り味となっており、AWDの方が乗り心地の印象はいい。
途中、運転を代わってもらって後席にも乗ったが、後席も乗り味は前席とさほど変わらず、膝周りも広いので実に快適だった。
加速シーンでも、AWDの方がレスポンスよく、ピッチングモーションも小さく収められているので、AWDの方がクルマの仕上がりレベルは高いといえる。また、FWDとAWDで同じバッテリー容量71.4kWhなのに、満充電時の航続距離はAWDが540km(WLTCモード)、FWDが559kmと、わずか19kmの差。スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」は、AWDを選んで間違いないだろう。
やはり「BEVであること」が最大のネックか
クルマ本体への細かな指摘はほかにもあるが、それよりも大きな課題は、急速充電場所に対する不安だ。BEVを所有するうえでの最大の課題は「走行残距離をマネージメント」すること。充電設備がある場所はナビゲーション上に表示されてはいるのだが、使用中の可能性もあり、すでに「待ち」が発生している可能性さえある。
今回の試乗会でも、筆者が乗る隊は、充電場所を2か所やり過ごし(一般の方と同業者が充電中だった)、3カ所目でようやく入ることができた。また、後続の試乗隊も筆者が充電している後ろで、最大で2台待ちの車列ができた。2台待ちにもなるとざっくり1時間待つことになる。次の充電設備に行ったとしても、空いているとは限らず、大幅なタイムロスとなるばかりか、下手に動き回ることで電欠となってしまう可能性もある。
ピュアガソリン車やハイブリッド車のように、ガソリンスタンドで満タン給油を5分でするのとは、ワケが違う。わずか300km未満の移動でさえ、いつ充電できるのかと、気を使うのがBEVだ。
トヨタとしても、2025年を目途にすべてのトヨタ系ディーラーに急速充電設備を設置すると発表しているが、そうしたBEVのカーライフに一般の顧客が順応できるのか。慣れてしまえば、事前に充電個所をチェックしておき、休憩時間も考えた行動予定を計画できたりもするが、今回の試乗コースのような山間部のドライブルートの場合だと、インフラが整っていないため、覚悟が必要だ。
bZ4Xの月額料は高いが、利用する価値はある
もう一点、話題となっているのが、bZ4Xは全数リース販売とし、個人のユーザー向けにはサブスク「KINTO」方式のみにするという点だ。bZ4X(Z/FWD 税込600万円)の場合、初回に申込金77万円を支払ったうえで、4年目の終わりまでは月額利用料10万7800円を支払い続けることとなる。
この月額利用料の中には、自動車税や自賠責保険、車検費用、メンテナンス、消耗品交換、バッテリー保証、そして任意自動車保険(車両保険も付いている)までも含まれている。85万円の政府補助金と、地方ごとに出る補助金(東京都の場合だと45万円)が別途受けられるとはいえ、かなり高い月額料だが、月額料のほかにクルマにお金がかかることはなく、クルマが自分の所有物にならないことを気にしないのであれば、利用する価値は高い。
なお5年目を迎える前に乗り換える場合には、中途解約金が発生する(例:1年目で解約すると税込132万円が必要)。5年目以降は、中途解約金は無く、月額利用料も徐々に減少する。
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スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」は、クルマの出来は申し分なく、いまなら補助金もたっぷり出る。「乗るならいま」といいたいところだが、BEVは(少なくともいまのインフラ状況では)むやみにおすすめすることができない。購入を検討されている方は、BEVのカーライフに自分を合わせることができるか、よく考えたうえで購入してほしい。
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