■伝統は守りつつ徹底的に走りと質感を向上させて6代目の驚き
走りに関しても、いろいろ進化をとげてきた。当初は自然吸気の2L 直4エンジンと4速ATのみの組み合わせだったパワートレーンは、そのあとにいくつかのバリエーションを加えながら、5代目では1.5Lターボと本格的なハイブリッドとなり、6代目にはその改良版が搭載されている。
いずれもドライバビリティがさらに向上し、アクセルワークに対するリニアさが増すとともに音や振動が低減するなど、洗練されたドライブフィールを実現しているのは乗ると明らかだ。
シャシー関連の進化も想像以上だ。従来型よりトレッドが拡大して重心高が低くなったおかげでロールしにくくなることから、足まわりをこれまでほど固めなくても大丈夫になり、そのぶん乗り心地をよくすることができた。その恩恵は、後席に乗るとよりいっそう実感できる。
これにはボディ剛性のさらなる向上やストロークの拡大ももちろん効いている。クルマの動きがより掴みやすくなったことと併せて、パワーステアリングのチューニングが見直されて、よりすっきりとしたフィーリングになった。
回生のからむハイブリッドのブレーキフィールもかなり自然な仕上がりになっている。ドライバーにとっても同乗者にとっても極めて快適な走りを実現している。
静粛性についても、パワートレーン自体の音の発生を抑えるとともに、特にリアから侵入する音への手当てを綿密に行なったとのことで、走行中に1列目と3列目でも苦にせず会話できるほどの静かさを実現していることにも驚いた。
むしろ、あまりに静かになったことで、タイヤの発するノイズが目立ってしまうようになったそうだ。そのあたり、全体的に安普請だった初代の走りを思い出すと、本当に隔世の感がある。
2代目ではいくぶん改善され、3代目以降は低床プラットフォームによるハンドリングのよさを積極的にアピールしてきたステップワゴンだが、その強みを内に秘めながらも、6代目では「#素敵な暮らし」のために黒子に徹するべく、やや方向性を修正したようだ。
インテリアだって初代はかなり安普請な印象で、それでもまあ自分好みにアレンジするための「素材」としてはアリかなと当時は感じていたものだが、その後26年あまりで、これほどまで多くの機能が盛り込まれて見栄えもよくなるとは、思いもよらなかった。
競合車やフリードでは跳ね上げ式のところ、床下収納式とした3列目シートも、すっかりステップワゴンの伝統のひとつになってきた。一部では好評だった5代目の「わくわくゲート」が廃されたのを惜しむ声もあるが、待望のパワーテールゲートがいよいよ採用されたのは歓迎だ。
6代目が内容的には非常に充実していて、完成度の高い仕上がりであることは間違いない。その点では、初代が現役の時にどうだったか当時の水準で考えても、6代目はぜんぜん比べものにならないほどよくできている。
では6代目が初代を超えられるかどうかというと、やはりどうしてもどれだけ売れたかという台数の話になるので、なかなか超えるのは難しい。いまでは同じ土俵の強敵に加えて、上にも下にも少なからず競合するライバルがいるので、大ヒットした初代のような印象的な売れ方をすることはよほどでなければないだろう。
それでも、いまどきのコワモテだらけのミニバンの中で、やさしさあふれるステップワゴンもそれなりに存在感を発揮しそうな気がする。
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