愛車の水没がきっかけでレースの沼にハマっていく
それを聞いた松本さんはチームが新車にするタイミングで参戦車両を山下さんに譲り渡し、山下さんはレースの沼にハマっていく。
「クルマができていたので、初めて乗った時はなんてしっかりしたクルマなんだと驚きました。ところが、レースデビューの直前の練習走行でシフトチェンジをミスし、オーバーレブでエンジンブローさせてしまいました。悔しくてそれから練習に励むようになりました」
『初めてのレースあるある』だが、いったいどんな練習をしたのだろう。松本さんに聞いてみた。
「練習はレースが開催されるサーキットで行うことがほとんどです。もてぎや富士、SUGOが中心になります。私が前を走り、山下さんに後ろについてもらうカタチが多いですね。コーナーのライン取りやブレーキングポイント、シフトチェンジのタイミングなど、とにかく身体で覚えてもらうことが上達の近道です。そこからさらに上を目指して車載映像やデータロガーを見ながらのアドバイスもさせていただいております」
やはり、自らもYaris Cupなどのモータースポーツに参戦していることで、言葉ではなく、走りを見せ、教えることができることが大きい。
「走りをまねるというと簡単に聞こえますが、最初はぜんぜんうまくいきません。でも少しずつ練習でのタイムが上がってくことで楽しくなっていきました。やはり、先生(松本さん)がいることで、アドバイスももらえるし、トラブルがあっても安心ですから、サーキット走行に集中できることが大きいと思います」
それから山下さんはお店に来ることが増え、松本さんとどうしたら速く走れるか? 熱く語るようになっていく。
ヴィッツレースからYaris Cupになってから活動を本格化。松本さんからタイヤの使い方や戦術の立て方、集中力の保ち方などを吸収していく。山下さんは今ではMC前とMC後2台のYaris Cup Carを持ち、旧型を日常の足に使い、新型は10月のSUGOでレースデビューさせるという。
「Yaris Cupはとにかく台数が多く、相手との駆け引きが面白いんです。相手にプレッシャーを与えミスを誘う戦いで運転テクニックも大事ですが、頭脳戦なのです。松本さんのおかげでハマっちゃいました(笑)」
山下さんは千葉県市原市のご自宅からお台場の職場までYaris Cup Carで通勤しているという。「もうロールケージつきのマニュアル車じゃなきゃ乗れないかもしれません」と楽しそうに語る。
Yaris Cupというレースの沼に引きずり込んだ松本さんは「Yaris Cupは詰将棋のようなもので、ハマる人はハマるんですよ」と笑顔で教えてくれた。そして、山下さんの技量は年々アップし、決勝レースでしっかりとリザルトを残せるまでになった。
「ヴィッツレースの頃を10とすれば、今は70~80くらいまで飛躍的にレベルアップされています!楽しんで上達されているのでこちらもうれしいです」 レースで絆を深めていく。素敵なお二人に出会えてこちらも新鮮な気持ちになれた。
・プロフィール
松本 英之(まつもと ひでゆき):GR Garage Netz Sport千葉の店長。ヴィッツレースでは2020年グランドファイナル(全国戦)2位、Yaris Cupでも2023年 東日本シリーズもてぎ戦での優勝をはじめ入賞多数。2024シーズンは関東シリーズ4位、2025シーズンも現在シリーズ4位とランキング上位の常連。お客様の目的や技量に合わせたアドバイスには定評があり、いつの間にかレースの魅力に引き込まれていくお客様も多い。また国家1級自動車整備士の資格を持ち、運転だけでなくセッティングやカスタマイズにも造詣が深い。
お客様・山下 真弘(やました まさひろ)さん:トヨタ86をショップでカスタムを施したが、イマイチしっくりこずGR Garage Netz Sport千葉に来店。2017年大雨の冠水でトヨタ86が水没。そのタイミングでかねて興味のあったヴィッツレースへの参戦を決意。練習走行でエンジンブローさせるなどもしたが、徐々に慣れYaris Cupでは決勝に残るほどの腕に成長。Yaris Cup Carは2台持ちで10月25~26日にSUGOへ新車で初参戦する予定。



コメント
コメントの使い方