トーヨータイヤが長年に渡って販売しているタイヤに「トランパス」がある。ミニバン専用タイヤのパイオニアとして歴史を紡いできたトランパスだが、新製品がデビューするごとに大きな進化を遂げてきた。
2022年1月に発売予定の最新のトランパス「mp7」はウェット性能についても大幅な進化を遂げているという。ベストカー取材班は自らの手でその真実を知るために茨城県になるJARI城里テストコースへと出かけた。
文:鈴木直也/写真:平野学【PR】
【画像ギャラリー】テストコース全開チェックで判明!! トランパスの真価は全方位的安心感だ(9枚)画像ギャラリー
■26年にわたるミニバン専用タイヤの伝統とプライド
トーヨータイヤが最初のトランパスを発売したのは1995年のこと。当時はミニバン専用という概念はコロンブスの卵で、「その手があったか!」と感心したものだった。
考えてみればこれは当たり前の話。普通のセダンとミニバンでは、重心高も違うしロール剛性も違う。大人数乗車を前提としたミニバンでは、荷重の変動も大きい。タイヤに求められる性能は、おのずと異なってくる。
スポーツカーをドライバー中心のクルマとすれば、ミニバンは家族のクルマ。快適な乗り心地や素直なハンドリングなど、同乗者の快適性を重視した設計が求められる。
そのためには、コンパウンドはもちろん、トレッドパターンや内部構造など、タイヤ全般にわたって専用に設計したほうがいいに決まってる。以来四半世紀、トランパスはミニバン専用タイヤの代表選手として市場に浸透し、車種や使用用途にフォーカスしたタイヤ設計という概念も一般化したのだった。
ミニバン専用タイヤの代名詞ともなったトランパスだが、競争の激しい人気ジャンルでトップブランドの座を守るには不断の進化が欠かせない。そこで、トランパスの最新モデル、7代目となる『トランパスmp7』の実力を試してみようというのが今回のテストの目的だ。
新しいトランパスmp7の商品コンセプトは、
(1)雨の日での安定性の向上
(2)伝統のロングライフ性能を継承
(3)ふらつきを抑制し、より安定した走行の実現
この3点が重点項目だ。
ナノテクノロジーを駆使して開発したスーパーグリップコンパウンド、ブロック剛性を高めたダイナミックテーパー形状のグルーブ、接地圧を均一化して摩擦抵抗とふらつきを低減する内部構造などを、従来モデルに対して重点的に強化してきている。
■走り出した瞬間に感じる“イイモノ”感
テスト車として用意したノア・ハイブリッドに履かせたのは、205/60R16のトランパスmp7、空気圧は指定の240kPaでセットしてある。乗員4名+テスト機材を積み込むと、ちょうど「アウトドアレジャーに向かうファミリー」といった荷重レベル。この状態で、まずは都内の一般路を走り出す。
どんなタイヤでも、新品に履き替えた直後の走り出しは「しっとりしてイイ感じだねぇ」と感心するものだが、mp7の第一印象は、これまで感じた「新品効果」の中でもトップクラスだ。
具体的にいうと、コンパウンドがソフトでトレッドラバーが分厚いイメージ。夏タイヤから冬タイヤに換えると乗り心地がソフトに変化するが、経験がある人はアレを思い出すとちょっと似ている。
転がり出しの最初から路面への当たりがソフトで、道路の目地や段差などからくるショックがじつにイイ感じにダンピングされていて心地よいのだ。ミニバンのサスペンションは基本的に乗り心地重視のセッティングだが、バネはソフトなんだけどブッシュやダンパーのセッティングがイマイチなクルマも少なくない。
また車検を2回、3回と経てオドメーターの数字が伸びると、経年劣化も気になってくる。そういうミニバンに乗ると、路面の段差越でブルンと嫌な“オツリ”が残ったり、ギャップ越えのショックの大きさにビックリしたりする。
mp7の重厚でダンピングが効いた乗り心地フィールは、こういう欠点をカバーしてくれる効果が大。家族のためのタイヤチョイスとして、これはmp7の大きな魅力だと思う。
■テストコースで感じた驚くべきウエット性能の安定感!!
さて、都内で撮影した後、茨城県城里町のJARI(日本自動車研究所)テストコースまで約130kmのドライブだ。「何用あってJARIまで?」というと、今回とりわけトーヨータイヤが自信を持っているmp7のウェット性能を確かめるのが目的。
そのためにJARI城里テストコースのウェット試験路を用意。従来モデルmpZとの比較テストを交えて、新しいトランパスmp7のウェット性能の限界を試してみようという企画だ。
ウェット試験の前の足慣らしとして、まず最初に実施したのはドライ路面でブレーキテスト。初速60km/hと100km/hからフルブレーキングして停止距離を計測する。
このテストでは、第一印象と同じ「コンパウンドがソフトでトレッドラバーが分厚いイメージ」を再び実感した。一般的にブレーキングで差がつくのは制動開始直後の減速Gの立ち上がりだが、mp7のドライブレーキングは「初期の食いつき」がきわめて良好。そこでソフトなコンパウンドが貢献している印象が強い。
続いて実施したウェットブレーキングでは、さらに予想以上の食いつきぶりを発揮した。
今回のウェット路は水膜の厚さが20mm程度あるヘビーウェット状態だったが、100km/hからでもほとんどハイドロプレーニングの気配なくいきなりガツンッと減速Gが出るのにちょっとビックリ。別表にあるとおり、従来モデルのトランパスmpZを大きく上回る結果を記録している。
テストドライバーとしては、直前に行ったドライブレーキングの感覚が残っているから「ウェットだとこのくらい距離が伸びるだろうな」という目算があるわけだが、一発目のテストでその予想を裏切る短距離で停止。一瞬「アレ、初速を間違えたかな」と思ったくらい、ウェットでも初期制動の食いつきがいいのだ。
この後、従来モデルのmpZにタイヤを履き替えて、複数回のハードなブレーキングテストを実施したのだが、その結果は別表のとおり。トーヨータイヤが主張する「ウェット制動15%短縮」という主張に偽りはなく、きわめて優秀なウェット性能を実証したのだった。
JARIでのテストは、ブレーキングの他にドライ/ウェット双方の路面でスキットパッド旋回を試したが、ここでもmp7の操安フィールは優秀だった。
■ミニバンの苦手とする操安性能をカバーしてくれるタイヤ
ミニバンという車種の特性上、クルマ側のダイナミック性能はあまり期待できないのが現実。ステアリングギア比は遅めだし、乗り心地を考慮したサスペンションはピッチもロールも大きく揺すられる。
こういう弱点を全てカバーするのは不可能だが、ステア操作に遅れが少なくステアリングを伝わって返ってくる路面フィールにしっかりした手応えがあるのがmp7のいいところ。
操安フィールに関しては、従来型のmpZと新製品のmp7はよく似たキャラクターで、手応えの確かな操舵フィールと上質な乗り味が共存しているのが共通する美点といえる。
ただし、タイヤのグリップ限界近くまで追い込んでみると、ドライはほぼ互角ながらウェットではmp7の圧勝。そのへんはウェット路面でダブルレーンチェンジを試すと一目瞭然なのだが、mpZの限界速度をmp7なら鼻歌まじりで通過できるくらいの差がある。
コメント
コメントの使い方