■S-AWCがもたらす氷上での圧倒的安心感
テスト日の女神湖は気温マイナス6度前後。気をつけないと人間の方がすっ転びそうなほど路面μは低く、氷上テストには絶好のコンディションだ。
アウトランダーPHEVは合計7つのドライブモードが設定できる。ECO・NORMAL・POWERの3つは基本。さまざまな路面に対応したモードがSNOW・GRAVEL・TARMAC・MADの4つ。
普段なかなか走るチャンスがない氷上走行だけに、どのモードで走るかが悩ましい。雪と氷は近いだろうといことで、まずはSNOWを選んで走り出してみる。
ちなみに三菱自動車によればSNOWは文字どおり雪道などより滑りやすい路面で、スリップが少なく安心感の高い走りを実現している。またGRAVELモードは濡れた路面や未舗装路で力強いトラクション性能と高い操縦安定性を発揮するモードという。
結果的にこのSNOWモード、初心者にはオススメだ。
低μ路に最適化しているSNOWモードでは、アクセルレスポンスが穏やかになり後輪へのトルク配分が増える。とにかく安心安全に走りたいなら、これを選んでおけば間違いない。
路面μが0.1以下の氷上では、スタッドレスタイヤを履いていても限界はあっという間に訪れる。
アッと気づいた時にはもう手遅れで、ブレーキングに失敗すれば雪の壁に向かって一直線だし、曲がろうとしても制御不能なアンダーステアでアウトへアウトへはらんでゆく。とにかく、前輪のグリップを探りつつ慎重にクルマの向きが変わるの待たなければいけないし、コーナー立ち上がりの加速でもデリケートなアクセルコントロールが要求される。
もちろん、スタビリティ制御デバイス(ASC)オンが条件だが、アウトランダーPHEVをSNOWモードはこういう難しい条件をほとんど意識させないイージーさがある。
氷上で絶対にミスが許されないのは減速のタイミングだが、これさえ間違えなければ難しいテクニックはほとんど不要。コーナー内側のブレーキを使ったヨー制御や、前後輪のトルク比を細かく変化させるトラクション制御など、S-AWCの持てる能力をフルに動員。S-AWCが忙しく働いてくれる代わりに、ドライバーの負担はイッキに軽くなる。
もうちょっとアクティブに遊びたい上級者は、ステアリングのボタンでメニューを呼び出してASCをオフ。前述したGRAVELモードを選んでみるといい。
前後トルク配分が50対50のGRAVELモードはアクセルに対する反応がSNOWよりシャープ。ASCをオフにするとS-AWC側からの介入も最小限になるから、パワーでテールを振り出すようなアクティブな走りに挑戦できる。
さすがに、このモードではコーナー進入時の切り込みタイミングなどで、うまくキッカケを作れないとダーッとアンダーステアではらむし、立ち上がりでアクセルをオンするタイミングもシビア。
「ここでパワーオンでテールを振り出して……」と考えても、操舵のタイミングと荷重移動→アクセルオンのリズムが合わないと、なかなか思うようなコーナリング姿勢に持ち込むことができない。
このあたりのコントロールの難しさは氷上ならではなのだが、こういうミスが致命傷にならないのがS-AWCの素晴らしいところだ。
「ヤバイ!」と思ったら、焦らずにパーシャルスロットルでちょっと間を置くのがコツ。クルマ側ができる限りの回復処理をしてくれるから、それを待ってから対処するといい。物理限界を超えちゃえばアウトだけれど、雪の壁に刺さる前にクルマがコントロールを取り戻す可能性も少なくない。
限界速度が極端に低いから、こういう風に普段体験できないクルマのさまざまなアクションを安全に試せるのが氷上テストの醍醐味。三菱があえてAWD(オール・ホイール・ドライブ)ではなく、AWC(オール・ホイール・コントロール)といってる理由を再認識した、女神湖氷上テストでございました。
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