■ひらりひらりと駆け降りるアウトランダーPHEV
続いてアウトランダーPHEVに乗り換えると、まず感じるのは車重の違いからくる重厚な感覚だ。
アウトランダーPHEVのステアリングレスポンスは、舗装路では車重を感じさせないクイック感のあるものだが、μの極端に低い氷上ではちと勝手が違う。
とにかく、コーナー進入時の減速と丁寧なターンインに気をつけるのがコツ。ここさえ間違えなければ、アウトランダーPHEVは従順そのもので、いったん曲がりはじめればイン側ブレーキを使ったヨー制御や前後トルク比を変化させるトラクション制御など、S-AWCの能力がフルに発揮されてライントレースをアシストしてくれる。
路面μが0.1以下の氷上ではわずかなトルク変化でスリップが発生する。それだけに、タイヤから最大限のグリップを引き出すには精密なトラクション制御が必須。前後2つの電気モーターによるS-AWCの優れたコントロール性能が、もっとも実感できるのが氷上での走りだったといえるだろう。
1日たっぷり氷と戯れた女神湖走行会も終わり、帰路はアウトランダーPHEVで東京を目指す。往路エクリプスPHEVでがんがん攻めた登りワインディングを、こんどは下るというわけだ。
先入観としては、200kg重いクルマで下りワインディングは厳しいかなと予想したのだが、これはいい意味で裏切られた。
新たに開発されたCMFプラットフォームは、アルミ鍛造パーツを多用するなどかなり贅沢な成り立ちだが、その甲斐あってか同セグメントの欧州車に一歩も引けを取らないクォリティの高い乗り味を実現している。
氷上ではやや重さを意識させる部分があったものの、オンロードの走りが予想以上に敏捷で、大柄なボディをモノともせず、ひらりひらりとタイトなダウンヒルを駆け下りてゆく。
動的質感という意味では、グローバルで見てセグメントベスト。精密で切れ味のいいステアフィール、しなやかに動くサスペンション、ボディコントロールの巧みさなど、すべてにわたって高い次元でまとめられている。
また、このシャシーの優れている点はダイナミック性能のみならずで、重厚感のある乗り心地と静粛性の高さも素晴らしい。
佐久ICから上信越道、関越道と高速道路のクルージングが続くわけだが、マイパイロット(日産でいうところのプロパイロット)を制限速度に設定してレーンキープアシストを効かせると、高速クルージング時の疲労度が圧倒的に軽減されて快適そのもの。試乗車の価格は570万円、走りの機能だけではなく快適性能に関してもそのプライスに見合った価値アリ、という納得感があった。
氷上も面白いけれど、一般道の走りも非凡。アウトランダーPHEVといいエクリプスクロスPHEVといい、最近の三菱はいい仕事をしてると思いました。
■歴史と伝統が「メーカーの個性」になる
最後にデリカD:5。今回、新雪が積もっているスキー場へ向かう登坂路を走ってみたのだけど、「普通のミニバンではとても無理だな」という道も、デリカD:5だとグイグイ走っていけるし、帰ってこれる。もちろん普通のミニバンに乗っている人はそういうところに近づかないわけだけど、デリカD:5なら行ってみたいなと思わせるし、実際に行けて帰ってこれちゃう。
このデリカD:5というクルマを紹介するときに、「唯一無二の価値観」というフレーズが定番のように使われるのだけど、実際に唯一無二なんだから仕方ない。本当に、ここまでオーナーのライフスタイルをクルマの実力(悪路走破性)で変えることができるなんてことは、滅多にないのだ。
デリカD:5で走っていると、「パジェロのミニバン版なんだな」ということを感じる。パジェロはもう国内販売を終了してしまったけど、デリカD:5に引き継がれて生きているんだなと、そういう気持ちにもなれるのでお薦めです。
こうやって三菱の得意なSUV(一台はミニバン)に立て続けに乗ると、「どんな場所にも行って帰ってこれる」という悪路走破性を磨き続けてきた、三菱自動車の歴史と伝統を強く感じることができた。
ジープから始まってパジェロを作り、ランエボを作って電子制御を磨いて、いま多くのユーザーの、人生の選択肢を広げるクルマ作りを続けている。こういう歴史と伝統が、このメーカーの個性に繋がっているわけだ。
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