■マツダの戦略はお見事!! PHEVは未来への橋渡し的存在
というわけで、予定原稿量の半分を使って長々と前置きを書いて来た理由は、こういった背景を知るとCX-60に賭けるマツダの戦略がよく理解できるからだ。
クルマ好きからしてみると、新設計の直6エンジン、同じくブランニューのFRプラットフォームなど、CX-60というクルマは伝統的な価値観に立脚したプレミアムSUV。それゆえ、クォリティの高いオーセンティックなクルマを求める層に人気が高い。
ただし、CX-60にはオーソドックスな価値観と同時に、カーボンニュートラル時代の最新技術が惜しみなく投入されているのも忘れちゃいけないところ。
マツダはCO2削減というテーマにおいて内燃機関が果たすべき役割はまだまだあるという哲学だから、直6ディーゼルの燃焼にDCPCI(空間制御予混合燃焼)という最新テクノロジーを投入。
さらに、48Vマイルドハイブリッド仕様を用意するなどたゆまぬ改良を続けている。この成果として、3.3Lディーゼルとしては驚異的な好燃費をマークするなど、着実にCO2削減の成果を積み上げているのは高く評価したい。
そしてマツダ初のPHEVとして登場したCX-60 PHEVが、電動化への橋渡しを担う最適ソリューションとして用意されているのだ。
■CX-60PHEVはもはや電気自動車!? スムースさが魅力
今回テストしたCX-60PHEVは充電レベル100%で音羽の編集部をスタート。バッテリーフルの状態だと、普通の市街地レベルの走りではEVモードを選択しなくてもほぼエンジンが始動することはなく、走行感覚はBEVそのもの。とりわけ低速域の静粛性は抜群で、スムースかつ静々と首都高入り口を目指す。
首都高のETCゲートをくぐって合流のためにアクセルを踏み込むと、エンジンが始動するとともにイッキに加速。この辺のドライバビリティは、フィーリング的にはトルクに余裕のある大排気量NAエンジンっぽいもので、スポーティなサウンドをともなって高回転域まで延びてゆく。
駆動モーターは129kW/270Nmと余裕あるスペックだから、巡航スピードに達してアクセルを戻せばただちにEV走行に復帰。EVモードを選択すれば高速道路における100km/h巡航程度はらくらくモーターでこなすから、たぶん初めて乗った人は「PHEVってエンジン車というよりBEVっぽさが強いんですね」という感想を抱くと思う。
バッテリー満タンからのEV航続距離はカタログ値で74km(WLTC)とされているが、ざっくり「60kmは固い」と考えておけばOK。都心を出発してアクアライン経由館山道というルートだと、だいたい君津PAあたりで電池残量が2割を切るくらいになる。
■燃費も航続距離も向上!! PHEVを充電する意味は大いにアリ
本来、PHEVの魅力は「電池がなくなっても燃料がある限り内燃機関で走り続けられる」というところだが、今回は敢えて君津PAでバッテリーをチャージ。当たり前だが、充電後は燃費も航続距離も伸びるというメリットも存在する。
17.8 kWhのリチウムイオン電池が8割程度まで充電されたところでBEV車がやってきたので、場所を空けてあげるためそこで充電を打ち切る。
急速充電器に接続していた時間は20分ほど。PHEVはBEVよりバッテリー容量が小さめだからSOC(充電状態)の上昇はクイックだし、最終的にはエンジンで走り続けられる。BEVの後続車が来たら場所を譲ってあげる余裕があるわけだ。
今回、君津PAの充電器でバッテリーチャージした理由の一つは、車載バッテリーというエネルギー源があることで広がるPHEVのユーティリティを確認するというテーマがあったからだ。
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