今どきのクルマは空力抜きじゃ語れないが、ユーザー自身が空力について考える機会はめったにない。そんな中ホンダアクセスがやってくれた。自ら空力パーツを作って愛車に装着し、サーキットを走って効果を確かめるというイベントを開いたのだ。楽しいうえに空力の勉強にもなった真夏の1日を紹介しよう!
文/ベストカーWeb編集部、写真/池之平昌信、ベストカーWeb編集部/提供:ホンダアクセス
■ホンダ車オーナー以外にも実効空力のスゴさを体感してほしい!
ホンダ車の純正アクセサリーや、コンプリートカー「Modulo X」を手がけるホンダアクセス。これまでもユーザーと開発陣が交流するイベントを何度も開催してきたが、今回は内容がさらにグレードアップした。その名も「夏休みに学ぶ実効空力体感イベント」。
おさらいしておくと、実効空力とは、ホンダアクセスがこだわり続けてきた「日常の速度域で体感できる空力効果」のこと。同社の手がけるエアロパーツやコンプリートカーは、レースの全開走行のような場面ではなく、普段の街乗りや高速ドライブに主眼を置いて開発されてきた。
今回のイベントで着目したのは、その実効空力の結晶ともいえるシェブロン(鋸歯)形状のデバイス。見た目は一辺がギザギザした細長い板なのだが、クルマに付けると乗り味が激変するという注目のアイテムだ。
一辺が3㎝の正三角形が並んでいる単純な形状ながら、見た目以上に効果は大きい。ルーフ四隅に加速度センサーを取り付け、実走行によって動きを計測したり、ステアリング操舵量の計測を実施したそうだが、車両の揺れが収まっていることや、操舵量が減っていることが確認できているという。
どうやら車体後方に生まれる空気の渦を、霧のように細かく砕く効果があるらしい。ちなみにホンダアクセスがシビックタイプR用に開発したテールゲートスポイラーも、この技術を用いている。
そこで実効空力デバイスをみんなで自作して愛車に装着し、テストコースを走って空力効果を体感してみようというのが今回のテーマ。しかも驚くなかれ、ホンダ車以外も参加可能という大盤振る舞い。より多くのクルマ好きに、実効空力を理解してほしいというホンダアクセスの熱意の表れといえよう!
■実効空力デバイスを自分で作る!?
夏空に恵まれた8月11日。会場となったモビリティリゾートもてぎのホンダ・コレクションホールに、続々と参加者が集まってきた。愛車を見てみると、フィットやオデッセイ、S660などに交じって、スズキ ソリオやスバル レガシィ、R2(!)といったクルマの姿が見える。岩手や沖縄など日本全国から来られた12組の方々だ。
お客様を出迎えたのは、Modulo開発統括を務める福田正剛さんや、完成車性能担当の湯沢峯司さん、開発アドバイザーの土屋圭市さん、スーパーGTドライバーでHonda純正アクセサリーのアンバサダーを務める大津弘樹さんらを始めとするホンダアクセスの開発者たち。われらがベストカーWebからは、編集長塩川雅人が司会として参加させていただいた。
朝9時、イベントがスタート。はじめに「実効空力とはなんぞや」という技術説明が行われた後、皆さんの緊張をほぐすべくトークショーがスタート。参加したのは福田正剛さんに土屋圭市さん、大津弘樹さんの3名だ。
冒頭、FD2型シビックタイプRから始まったモデューロの歴史について聞かれると、福田さんが「お客様の声と、土屋さんの叱咤激励で進化してきた(笑)」と振り返った。それを受けて土屋さんが、「福田さんはほんとしつこい(笑)。とにかく走らないと満足しない。実効空力エアロは、段ボールを切ってあれこれやるところから始まった」と思い出を語った。ご自身も段ボール切りに精を出したという。
現在フリードのModulo Xを日常の足に使っているという大津さんは、乗り心地が非常にいいと話し、「空力は時速100km以上のものだと思っていたが、実効空力デバイスを付けたN-BOXに乗ったら時速30kmでも効果を感じた」と驚きを語った。「レースカーでの空力はより高い速度で速く走るためのもので、乗り心地が良くなることはないが、実効空力は走り出してすぐ、乗り心地にも違いを感じる」という言葉が印象的だった。
トークショーが終わると、いよいよ工作の時間。5mm厚のスチレンボードを使って、実効空力デバイスを切り出す作業だ。
参加者たちはそれぞれ、カッターと定規を使ってシェブロン形状のデバイスを切り出していく。スチレンボードが一度で切れずにとまどう人もいたが、ホンダアクセスの開発メンバーたちが常に机を回り、的確に手ほどきを行う。おかげで全員が、30分ほどかけて3つの実効空力デバイスを完成させることができた。
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