首都圏をはじめとする非降雪エリアにお住まいのドライバーにとって冬場にスタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)に交換するということは大きな負担になる。
そこで注目したいのがオールシーズンタイヤなのである。
冬の突然の降雪。そんなときも慌てず冷静に、当たり前のように愛車を走らせる。そんな余裕のドライビングをサポートするオールシーズンタイヤの実力をチェックしよう!!
文/梅木智晴(ベストカー編集委員) 写真/平野学、グッドイヤージャパン
いち早くオールシーズンタイヤを日本に導入したグッドイヤーの最新タイヤ
オールシーズンタイヤと言うと、日本のユーザーにとってはあまり馴染みがなかったカテゴリーだ。とはいえ、ここ最近、日本国内でもオールシーズンタイヤの商品ラインナップが増えてきて、タイヤショップでも目にする機会が増えてきた。その先駆けとなったのが2016年に日本での販売を開始したグッドイヤーの『VECTOR 4SEASONS』だったのだ。
アメリカでは新車装着時のタイヤがオールシーズンタイヤということが一般的だ。ドイツやイタリア北部などの欧州では冬季スノータイヤを装着するクルマが多いのだが、日本のスタッドレスタイヤとは異なり、高速走行の機会が多い欧州のスノータイヤは、オールシーズンタイヤ的な性格が強く、豊富な商品ラインアップを誇っているのだ。
1989年、米国オハイオ州で創業したグッドイヤー社はF1やインディカーレースをはじめとするモータースポーツのトップカテゴリーでタイヤ開発を続け、高い技術力を持つ、今年創業125周年を迎えたしたタイヤ・ゴム事業の老舗企業だ。現在、世界22か国、48の製造拠点を持ち、ベンツやBMWをはじめとする世界のプレミアムブランド自動車メーカーの新車装着タイヤにも指定されている。こうした高い技術力と実績を背景とした信頼性は、タイヤという、唯一路面に直接接するパーツには欠かすことのできない重要な指標となることは言うまでもない。
そのグッドイヤーが2022年夏、最新技術を投入して送り込んできたオールシーズンタイヤが『VECTOR 4SEASONS GEN-3』なのである。従来の『VECTOR 4SEASONS Hybrid』もベーシックなオールシーズンタイヤとして販売が継続され、新しい『VECTOR 4SEASONS GEN-3』はプレミアムオールシーズンタイヤという位置付けとなる。
ドライもスノーも「いいとこどり」で安心安全のユーティリティプレイヤー
オールシーズンタイヤはその名の通り、春夏秋冬季節を問わず使えるタイヤ、という意味だ。日本では主に北海道や東北地方、信越地方や北陸~山陰地方といった日本海側の地域では冬季の降雪に備えてスタッドレスタイヤに履き替える。地域にもよるが10月下旬から11月上旬にはスタッドレスタイヤに交換し、4月から5月にかけてサマータイヤに履き替える。つまり冬用タイヤとその他3シーズン用タイヤの2セットを所有し、それぞれ使わない時期には保管し、年2回の交換が必要となる。
いっぽう、年間を通じて降雪がほとんどない地域も多く、首都圏をはじめ名古屋や大阪都市圏、九州各地など、年間を通じてサマータイヤのままというドライバーも多い。それでもひと冬に1~2度ある降雪に備えスタッドレスタイヤに交換するものの、結局ウインターシーズンの間、一度も雪道を走ることなく春先、サマータイヤに戻したというケースも少なくはないはずだ。かくいう私ウメキもそうだった。
ドライ路面も雪道も走れるタイヤと言うと、オールシーズンタイヤって、結局のところどっちつかずの“ほどほど性能”のタイヤなのでは!? と思われる方もいるだろう。
たしかに、ハイグリップでシャープな操縦性に特化したスポーツタイヤのようなガッシリした操縦性があるわけではない。乗り心地と静粛性を徹底的に追求したプレミアムコンフォートタイヤのような傑出した上質感があるわけでもない。また、スタッドレスタイヤのようなツルツルのミラーバーンでのブレーキング性能があるわけでもない。
でも、スポーツタイヤでは上質な乗り心地や静粛性は得られない。プレミアムコンフォートタイヤではシャープな操縦性やガッシリとした剛性感あふれる操縦性やグリップ性能は得られない。それに何よりも、サマータイヤでは雪道を走ることはできない。
『VECTOR 4SEASONS』シリーズは、特定の「ある性能」が突出していることはないのだが、スノー性能を含めたあらゆる性能が高いレベルでバランスしている。そう、どんな守備位置でもプロレベルでこなすことのできるユーティリティプレイヤーのような存在なのだ。唯一苦手とするのは凍結路面。北海道や北東北のように気温が氷点下となるシビアコンディションではスタッドレスタイヤの使用を強く推奨する。
ドライの高速道路から山間部の積雪路まで安心してドライブ!!
本年2月下旬、BC社用車のスバルレヴォーグにグッドイヤーの最新プレミアムオールシーズンタイヤ『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を装着して都内から関越道で湯沢まで行き、国道17号線を東京方面に戻りながら三国峠を越え、沼田市から国道145号線を走り草津温泉を目指した。高速道路のドライからウエット、冬用タイヤ規制区間での性能を確認し、さらに一般道での圧雪路性能をチェックするためのルートだ。
『VECTOR 4SEASONS Hybrid』では高速巡航時に“シャー”という高周波のパターンノイズがやや気になったが、『VECTOR 4SEASONS GEN-3』ではパターンノイズが劇的に低減していることに驚かされた。また、乗り心地がしっとりと、トレッドゴムが粘るようなソフトなタッチも印象的。従来品はトレッドが硬く、路面を叩くような感覚があっただけに、この乗り心地のよさは意外だった。
高速道路での直進安定性やレーンチェンジでの応答性などは一般的なサマータイヤと比較して特段の差異は感じない。もちろん、スポーツ系タイヤと比べれば切り始めの反応にややマイルドさを感じる場面もあるが、コンフォート系サマータイヤと同等のドライ性能と言って差し支えない。
グッドイヤーとしても『VECTOR 4SEASONS Hybrid』の高周波パターンノイズとトレッドの当たりの硬さは十分承知していたようで、『GEN-3』 では特徴的なV字シェイプのトレッドパターンの印象は変えることなく、センター部に向かうほど溝が細くなるトレッドパターンデザインによってパターンノイズの低減を実現した。また、ブロックに細かなサイプがより多く刻まれたことで、ウエット路での排水性が高まり、さらにトレッド面の路面に対する当たりもソフトになったのだ。
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