スカニアは鉱山用の前2軸・8×4駆動の大型ダンプを電動化した。8輪トラックには、北欧神話に登場する8本脚の神獣から「スレイプナー」というニックネームがつけられた。
スカニアは顧客とのコラボレーションを通じて実際の環境で新しいソリューションの試験・改良を続けている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Scania CV AB
スカニアが8×4前2軸ステアの大型BEVダンプを公開
スウェーデンのスカニアとLKABは協業をさらに深化させ、鉱山用トラックの電動化を進めている。
2025年12月9日に公開されたのは前2軸・後2軸の8×4バッテリーEV(BEV)大型単車ダンプで、フロントの2軸はステアリング可能な操舵軸となっている。先進的な取り組みを行なってるスカニアでも、こうしたトラックを電動化するのは初めてだ。
スウェーデン北部にあるLKABのマルムベリエット鉱山で運行を開始した新型トラックには、北欧神話のオーディンの伝説に登場する8本脚の馬に因み「スレイプナー」というニックネームが与えられた。力強さと革新性、信頼性を象徴しているという。
スカニアとしては初めて開発した車両だが、同社のモジュラー式の電動プラットフォームが重量物を積載した場合の走行性能と共に、鉱山という困難な道路環境での安定性をもたらし、複雑な課題への堅実な回答になるという。
LKABで移動式機械の電動化を担当するプロジェクト・マネージャーのピーター・グスタフソン氏は「このトラックが期待通りに機能するなら、ウェイスト・ロック(鉱山から出る不用鉱物)の運搬は完全に化石燃料フリーで行なうことができます」と話している。
LKABが運んでいるウェイスト・ロックは年間500万トンに及んでおり、CO2削減量は相当なものになる。
スカニアは顧客とともに先進的な取り組みを進める「パイロット・パートナー」プログラムを展開しているが、同部門を率いるトニー・サンドベリ氏によると、実用的なソリューションが高い目標を掲げる顧客にどのような影響を与えるかを示した一例だといい「学びと進歩を加速するためには、こうしたパートナーシップが不可欠」だと言う。
新世代の鉱山用電動トラック
スレイプナーは公共事業および鉱山セグメント向けに設計されたトラックだ。
鉱山で鉱石を採掘する際は、目的の鉱物以外にも大量の不用鉱物が出る。こうしたウェイスト・ロックは、環境汚染を防ぐため決められた場所に廃棄しなければならず、その輸送ニーズも膨大になる。
シュート式の積み込みステーションからティンヴァルスキュレの埋め立て地までは約5kmの道のりだが、高低差が250メートルある。オフロードを走行するトラックには38トンのウェイスト・ロックが積込まれ、車両総重量は60トンに達する。車両にはオンロードでは考えられないような負荷がかかる。
搭載するMP20型バッテリーパック2つは合計で416kWh容量で、電動モーターやトランスミッション、PTOなどを一体化したスカニア製電動機の「EM C1-4」(1モーター、4段トランスミッション)が400kW(約536hp)を発揮する。
従来の内燃エンジン車を完全に置き換えることが可能だといい、スカニアの電気駆動技術が、鉱山という最も過酷な環境にも耐えうることを実証するものになる。
スレイプナーはスカニアでも電動化が初めてとなる車型ではあるが、6×4大型ダンプを電動化した経験があり、それに基づいて開発を行なった。こちらのダンプは2022年からマルムベリエット鉱山で順調に稼働しているそうだ。
いずれの車両の開発も、革新的なソリューションに喜んでトライする顧客との関係性が重要になっており、LKABのような企業との緊密なコラボレーションを通じて現実の使用環境で電動ソリューションを試験し、改良を進めることができる。
スカニアのサンドベリ氏は「新しいトラックを実際に使用することで、私たちとお客様は、最も過酷な環境で電動化の規模を拡大する方法を理解することができます。この車両は、今後も登場するであろう様々な鉱山用ソリューションのほんの始まりにすぎません」と締めくくっている。
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