信頼性と効率性を両立
燃料電池は水素と酸素を反応させ、電気を作り出す装置であり、電気を蓄えておくため車両にはバッテリーも搭載している。電気で駆動するeアクスルが推進力を生みだし、全体のプロセスで排出されるのは水蒸気だけとなる。
NextGenH2でも水素駆動の中心にあるのはセルセントリック製の燃料電池スタックであるBZA150型だ。搭載するのはこのユニットを2基組み合わせたツインシステムで、合計出力は300kWとなる(1基当たり150kW)。同機はキャブ下のエンジンコンパートメントにコンパクトに収められている。
GenH2による数年間の徹底的な試験を経て、この水素駆動コンセプトは実走行環境での信頼性と効率性において高い評価を受けている。顧客トライアルによる平均燃費(100km当たりの水素消費量)は「5.6kg/100km」から「8.0kg/100km」の間だった。
(この燃費を単純計算でNextGenH2の満充填(水素85kg)の航続距離に直すと、それぞれ1517kmから1062kmとなる。ここに新型キャブやeアクスルによる燃費の向上分が加わるので、ディーゼル車並みの航続距離は確実に実現しそうだ)
顧客による燃費の差は、主にそれぞれの使用環境での連結総重量(GCW)の差を反映しており、顧客の平均GCWは16トンから34トンだった。
量産コンポーネントを活用し成熟度を高める
メルセデス・ベンツのNextGenH2トラックは、新型車でありながら高い成熟度を誇っている。これは同社の量産型トラックに搭載される最先端のコンポーネントを採用しているためだ。
例えばキャブはBEVの「eアクトロス600」やディーゼル車のフラッグシップとなる「アクトロスL」に搭載される「プロキャビン」を採用している。従来型キャブより空気抵抗係数を9%改善したもので、燃料電池トラックには初搭載だ。
eアクトロス600ではeアクスルも自社開発しており、電動モーターに2段の後退ギアを含む4段トランスミッションを組み合わせている。このeアクスルもNextGenH2と共通化されたため、高度なドライブエクスペリエンスはeアクトロス600譲りとなる。
高トルクでダイナミックな駆動系、スムーズなハンドリング、車内外の静粛性などは、水素をエネルギー源とする電気自動車である燃料電池トラックでも最大限に享受できる。出力は、エコノミーモードでは最大340kW(約460hp)、パワーモードでは最大370kW(約500hp)で、急勾配や高積載といった過酷な運転環境でも力を発揮する。
走行用の高電圧バッテリーパックもダイムラー・トラックが(BEVトラック用に)開発している101kWh容量のリン酸鉄リチウム(LFP)電池だ。バッテリーは燃料電池が発電した電力のバッファーとして機能するとともに、回生したエネルギーを貯蔵するのにも使われる。
エネルギー回生は下り坂や制動時に余分な慣性エネルギーを電気に変換しバッテリーに戻す仕組みで、効率的な回生により全体の航続距離が延び、水素の消費を抑えることができる。
高電圧コンポーネントとE/E(電子・電気)アーキテクチャもeアクトロス600を踏襲する。そのため、アクティブ・ブレーキ・アシスト6などの最新型の安全システムを備えるほか、現行のサイバーセキュリティ基準にも準拠するなど、成熟した実用的な成り立ちである。

