北海道在住の菊地さんは、道内の道を知り尽くしているベテラントラックドライバー。今回「トラックドライバーが綴る忘れ得ぬ道」と題して、自分で道を切り開く山奥の工事現場の思い出や、北海道の道を走る上でオススメのルートなどを語ってもらいました。
文/ベテランドライバー菊地さん、写真/フルロード編集部・写真AC(トビラ写真)
※2021年6月発行トラックマガジン「フルロード」第41号より
山奥の工事現場の思い出の道
私たちトラックドライバーは道を走るのが基本ですが、私のように山奥の工事現場へ荷物を配達する人間は必ずしも道を走るとは限りません。
バックホーやブルドーザーでブッシュを切り開き、グレーダーで平らに慣らした土の上に鉄板を敷き詰め、その上を延々バックで進むなんてことも多々あります。トラックの幅に合わせて敷かれた鉄板の上をバックで押して行くのは緊張します。
空荷のシャシーなら例え落としても重機で上げられますが、その重機を積んでいる時は失敗できません。ブレードの大きなブルドーザーを積んでいる時などは、後ろがまったく見えませんから、誘導員と無線で話しながらバックすることもあります。その場合、誘導員もトレーラの熟練ドライバーでなければなりません。
実はこれ、2人の息が合うと実に面白い仕事になり、一度も切り返さずに現場に着けると、かなりの達成感を分かち合えます。これは重トレーラの「あるある」ではないでしょうか。特殊な大型車にはもう何年も乗っていませんが、よい思い出です。
さて、雪道でも夏のアスファルトを走るのと変わらない速度で走るのが北海道のドライバーですが、あらゆる凍結路面が消える4月頃から、アスファルトのグリップを改めてありがたく感じます。やはり冬は夏よりも緊張しているんでしょうね。
冬が明けると憂鬱な道路が現れる場所があります。一時期透水性のアスファルトが流行ったのですが、あれは北海道ではNGでした。吸い込んだ水が凍結して排水されず、氷の膨張でアスファルトを持ち上げてしまい、その結果路面が穴だらけになったのです。
ご存じの通り重量物を運ぶトラックのほとんどはエアサスなど付いていませんから、それはもうひどい振動地獄です。輪止めやシャックル、その他固定の甘い道具類はすべて荷台から落ちて行きます。
最近はそんな道も減りましたが、低規格の田舎道は今も春先は穴だらけです。時々普通車が深い穴に落ちてロアアームを破損しているのを見かけます。雪解け時期の北海道の道には気を付けてください。