ドライバーの賃上げ・荷待ち時間の削減は本当に可能か?
物流の効率化については、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」及び「貨物自動車運送事業法」の改正により、施行後3年で(2019年比で)荷待ち・荷役時間はドライバー1人当たり年間で125時間削減され、積載率向上により輸送能力は年間16%増加すると見込んでいる。
政策パッケージによる輸送力への影響は、2024年度にプラス14.5%となり、政策なしの場合に不足するとされる14%をかろうじて上回る。2030年度は不足する34%に対して政策の効果がプラス34.6%となり、物流危機はギリギリで回避できるという試算である。
そしてトラックドライバーの賃金については、標準的な運賃の引き上げによる運賃改定の効果と、これまでに収受できていない荷役作業の料金により、初年度となる2024年度に10%前後(6~13%)の賃上げとなり、次年度以降も効果を拡大するとした。
意欲的な数字ではあるのだが、連合が掲げる2024年の春闘の賃上げ率目標が「5%以上」だ。運送業は全産業より労働時間が2割長く、給料は1割少ないとされるので、これくらいの賃上げを実現しないと他産業との差が開くばかりで、担い手不足はさらに深刻化するだろう。
とはいえ、現状で「標準的な運賃」を活用している運送会社は半数に満たず、多くの会社はそれ未満の運賃で仕事を引き受けているのが実情だ。中には運賃ダンピングを行なった上、コンプライアンスを無視して(過積載など)利益を出そうとする悪質な業者もある。制度の周知と悪質な事業者への指導は強化する必要がある。
具体的な政策とそのロードマップが示されたことには意義があるが、標準的な運賃の引き上げがどれだけ賃上げに繋がるのかは未知数だ。
荷主企業としても、物流コストの上昇分を消費者に転嫁するわけにはいかないので、立場の弱い運送会社とトラックドライバーに押し付けてきたという経緯があり、誰が物流費を負担するのかという問題に帰結する。
「物流革新」を本気で進めるなら、消費者も応分の負担を覚悟する必要がありそうだ。
【画像ギャラリー】政府の中長期計画と物流の2024年問題(6枚)画像ギャラリー