日産 チェリーX-1R。レーシングカーをイメージさせるオーバーフェンダーは標準装備
試乗車は50年前の個体にもかかわらずワンオーナーのノーマル車。走行距離は実走で5万kmという奇跡の車両
現代の感覚では控え目な80馬力という数字からは想像できないほどパワフル。車体の軽さが足のよさと力強さに貢献している
「チェリーの星野」と呼ばれた星野一義氏の偉大さを改めて感じながらの試乗となった
スキナーズ・ユニオン(SU)社製ツインキャブ搭載1171ccの水冷直列4気筒OHVが載せられ、最高出力80ps/6400rpm、最大トルク9.8kgm/4400rpmを発生。数字だけ見ると非力と思えるが、車重600kg台のX-1Rは俊敏な加速を体感させてくれる
A型エンジンはノーマルマフラーなのに、アクセルを踏み込むとキャブの吸気音とともに心地いいエキゾースト音を響かせる
日産自動車を代表する名機A型エンジンは、1966年から2008年までさまざまな車種に搭載された
発売当初のチェリーは4ドアセダンと今では珍しい2ドアセダン、3ドアバンのみだったが、1971年9月から2ドアクーペもラインナップされた
富士山をモチーフにした形状のリアセクションは「カプセルシェイプ」と名付けられた
レースシーンでの活躍も手伝ってX-1Rは若年層からも人気を博した
日産ワークスのレースマシンと同様、前後にFRP製オーバーフェンダーが標準装着された。幅広いタイヤが装着でき旋回性能が格段に上がった
昭和世代の懐かしいパーツのフェンダーミラー。先端が尖った形状なのは空気抵抗を意識したデザインだが視認性に不満はない
ルーフのプレスラインが独特。まさに職人技と思わせるこの溝は高速走行中の風の整流に貢献していそうだ
リアラゲッジに備わるスピーカーのような丸い物体はエアダクト。次写真のエアインテークと繋がっている
テールに備わるエアインテーク。室内に風を取り込むことで室内の温度を調整する工夫。エアコンが高級だった時代のアイデアだ
2ドアクーペにはBピラーはない。三角形のリアウィンドウを開けて走ると心地いい風が舞い込んでくる。春には快適ドライブが楽しめる
ハッチバックスタイルのリアセクションはとても広い。リアシートの背もたれも倒せるので2ドアクーペでありながらとても使い勝手がいい
50年経過した個体にもかかわらずオリジナルマフラーを装着。前オーナーが自動車修理工場を営んでいたこともあって奇跡的な保存状態
装着されているホイールは旧車の定番レーシングサービスワタナベ製。ホイール以外はフルノーマルなので純正ホイールを探しているそうだ
大衆車でありながらコストがかかる独立懸架サスペンションが採用されたのは、プリンス自動車出身の技術者のこだわり。フロントにはスタビライザーも装備された
コックピットは小さな車格のわりに広々としていて大衆車にありながらチープな雰囲気はない。メーターパネルは右にスピード、左に8000rpmまで刻まれたタコメーターが鎮座する。中央には水温計とフューエルメーターが備わる
昭和レトロの定番装備クラリオン製アナログラジオ。下にある3つのボタンは左からチョーク、シガーライター、ウィンドウォッシャー
いわゆるビニールレザー製シートは中央部に格子状の生地を採用し、鳩目の穴を開けることでレーシングバケットシートをイメージさせる
アクセルペダルはオルガンタイプなのに先端にアクセルワイヤーのリンケージが付いている。クラッチペダルは軽く駆動が繋がる感覚がわかりやすい
4速マニュルシフトはギアの間隔が広くクイックとはいえないが操作性に不満はなかった。ギア比が広いので高速走行中、5速がなくても快適に巡行できた
今では当たり前に標準装備されているエアコンはないが、ヒーターユニットには“HOT”と“COLD”の切り替えコックがあり季節に応じて設定できる
今回撮影にご協力いただいたのは「プリンスガレージかとり」さん。旧車を中心とした中古車販売や、当時ものの貴重なパーツなども取り扱う。〒287-0023 千葉県香取市伊地山23(東総有料道路沿い) お問合せ:0478-59-1359 営業時間:10時~19時 定休日:水曜日、第1日曜日