■借りられる金額は法律で上限が決まっている
そうはいってもファイナンス会社は債務者保護の観点から融資できる上限が、法律で規制されている。いわゆる大学入試共通一次試験での足切りのようなものだ。割賦販売法では2010年12月改正法施行から、「支払可能見込額」を超えるクレジット(ローン)契約は原則としてできないと規定している。
「支払可能見込額」とは利用者の年収から生活を維持していくために必要な支出や債務などを除き、利用者が無理なくクレジット代金として1年間に支払うことができる金額である。
それは「(年収)-(生活維持費)-(クレジット債務)」という基本的な計算式で算出することができる。
基本となる1年間の「生活維持費」は法律で機械的に決められており、世帯(同一生計)の人数、住宅所有の有無、居住地などによって異なるという。「クレジット債務」は向こう1年間のクレジット代金の年間支払い予定額だ。これは自社だけではなく「指定信用情報機関」を利用し、他社のクレジット債務を確認することが法律で義務付けられている。
クレジット債務は「1回払い以外の分割債務」のことを指すが、住宅ローンのような有担保ローンは含まれない。ただ携帯電話の通話料のように携帯電話本体の分割料金が含まれているものなどはその対象となり、さらに「クレジット会社によってはガス水道料金などクレジットで払っている1回払いのものもまとめて指定信用情報機関に申請している場合もある」(経済産業省関係者)という。ポイント欲しさになんでもクレジットカードで支払っていると、信用保証情報の上では実態以上に大きな債務を抱える債務者として扱われ、マイカーローンが組めないという事態に陥りかねないから要注意だ。
■年収だけでなく家族の数やクレジット利用状況も考える必要あり
では年収300万円の独身男性(親と同居、家賃支払いなし)と年収500万円の男性(4人家族で住宅ローンを抱え、クレジット債務が年間150万円ある)は「アルファード」のハイブリッドモデルで代表的な「SRハイブリットCパッケージ」(車両価格(税込み)572万円)をローンで購入することができるか、実際に5年ローンで試算してみよう。
トヨタモビリティ東京の見積もりシミュレーションを活用すると5年60回払いの場合は一回が11万3300円(支払い総額は680万2428円)となる。つまり1年間に支払わなければならない金額は135万6000円になる。
年収300万円の男性の支払可能見込額は「300万円-90万円-0円=210万円」。一方で年収500万円の男性の場合は「500万円-240万円-150万円=110万円」となる。
年収500万円の男性は支払可能見込額が1年間に支払わなければならない「アルファード」のローンの額を下回っているので、これではローンを組むことはできない。つまり支払可能見込額だけで判断すると年収300万円の男性は「アルファード」を購入するためのローン組むことができるが年収500万円の男性はローンを組むことができないという事になる。つまり年収の高低で審査が決まるわけではないということだ。しかもここで指摘しているのは最低基準であり、具体的な審査はどのような判定基準で審査が行われているかは外部にはわからないようになっている。
しかも支払可能見込額が支払額を下回っているからといって絶対に審査を通らないかというと、かならずしもそうではない。クルマが生活必需品である場合には除外規定がある。
さらに年間の支払額を支払可能見込額の範囲を超える場合でも頭金を増やしたり、残価設定ローンなどを活用したり、年間の支払い額の上限を下げたりするという事もできる。本当に乗りたいクルマがあれば、自分であれこれ考えるよりも最寄りのカーディーラーと相談したほうがいいのかもしれない。
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