東京モーターショーのダイハツブースに「間もなく発売される新型コンパクトSUV」として飾られた出展車が、東京モーターショー閉幕直後の11月5日、ダイハツ『ロッキー』&トヨタ『ライズ』の車名で発売された。
OEM車として供給されるライズは、ロッキーとの差別化を図るため、フロントグリル&バンパーデザインが異なっている。
当記事ではロッキー&ライズを詳細に解説するとともに、ライバル車との比較もお伝えしていきたい。
文/永田恵一
写真/DAIHATSU、TOYOTA、編集部
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■待望のコンパクトSUV、その概要
2017年の東京モーターショーに『DNトレック』の車名で出展されたコンセプトカーの市販版となるロッキー&ライズは、ボディサイズが5ナンバーとなる全長3995×全幅1695×全高1620mmということもあり、日本では唯一となる本当の意味での乗用車ベースのコンパクトSUVである。

開発はダイハツ ブーン&トヨタ パッソ、ダイハツ トール&トヨタ タンク&ルーミー&スバル ジャスティと同様に生産も含めダイハツ主導で行われ、トヨタにも供給される。
なお『ロッキー』という車名は、ダイハツが1990年にスズキの初代エスクードに対抗する、コンパクトクロカンSUVとしてリリースしたモデルにも使われたことがあり、マニアックなクルマ好きであれば懐かしさを感じるかもしれない。
クルマの土台となるプラットホームなどは、2019年7月に登場した軽スーパーハイトワゴンの元祖で四代目モデルとなる現行『タント』に続く「DNGA(ダイハツニューグローバルアーティテクチャー)コンセプト」で開発された。
タントを含めると第二弾、トヨタブランドでは初となるライズが初となるDNGAコンセプトはダイハツの軽自動車、ブーン&パッソとトール四兄弟の該当するAセグメント、今回のロッキー&ライズが属するBセグメントまで共通の設計思想を持つ。
その共通の設計思想は簡単に言えば、「いいクルマを廉価に提供する」という実にダイハツらしいものである。

■エクステリア
スタイルはロッキー、ライズともにオーソドックスなSUVといったところで、ボディ下部やフェンダーの樹脂部分を持つ点でもSUVらしさを感じさせる。ロッキー、ライズのエクステリアの違いはフロントマスクで(リアビューはほぼ共通)、ロッキーは六角形に近いフロントグリルが目立ち、ライズはミニRAV4という印象だ。
ボディカラーは、ロッキーにダイハツ初の小型車として1963年に登場したコンパーノに由来する「コンパーノレッド」、ライズに「ターコイズブルーマイカメタリック」という専用色を含め8色と豊富で、それぞれ最上級グレードにはルーフがブラックとなるツートンカラー3色も設定される。


■インテリア
インテリアは、メーカーオプションとなる9インチのディスプレイオーディオが目立つダッシュボードや、ブーツが付くシフトレバー、ガッシリとしたシルバーのドアグリップなどライズのエクステリア同様にミニRAV4的な印象で、SUVらしい楽しさを持つ点も目を引く。質感も後述するように200万円程度が中心価格帯となることを考えれば相応以上といったところだ。
またインテリアでは、それぞれの上級グレードに装備される液晶メーター(画面は先進、ワクワク、シンプル、アナログの4つから選択できる)、助手席下のアンダートレイやシフレバー下に代表される収納スペースが豊富な点も特徴となっている。

■室内空間&ラゲッジスペース
室内空間は東京モーターショー出展車で確認したところ、全長ほぼ4mの5ナンバーサイズのSUVとしては相応の広さを持つ。
ラゲッジスペースはスクエアな形状な上に、上下2段に使えるデッキボードを下段にすると369Lという、1クラス上のミドルSUV並みの容量を確保。さらにラゲッジスペース下にはFF、4WDともにアンダーラゲージもあり、アンダーラゲージは特にFFだと80Lという大容量となっており、これだけの広さがあれば遊びに行く際の荷物も積み切れるだろう。


■機能面
プラットホームは前述したようにDNGAのコンパクトカー用を使う。このプラットホームの特徴は骨格のスムース化や合理化、硬くて薄いハイテンションスチールの多用により高剛性ながら軽量な点で、ロッキー&ライズも車重はFF車で970~980kg(4WDはプラス70kgの1040~1050kg)に抑えられている。

サスペンション形式は新設計のフロントがストラット、リアがトーションビームというコンパクトクラスとしては定番と言えるものを使う。
エンジンは、トール四兄弟にも設定される1L直列3気筒ターボ(最高出力100ps/最大トルク14.3kgm)を搭載する。トランスミッションは現行タントと同じ思想を持つ変速幅の広いCVTのみの設定だ。
このCVTは、ロッキー&ライズに合わせて対応トルクが向上している。スプリットギアを採用しており、高速域になると伝導効率の高いギア主導(ギア+ベルト)に切り替え、これまでCVTが苦手としていた高速燃費を20%以上向上させることが可能だ。
駆動方式はFFと4WDで、4WDシステムは、ダイハツが独自に開発した「ダイナミックコントロール4WD」と呼ばれる電子制御4WDとなる。
この4WDシステムはドライ路面でも発進時や登坂時にリアに駆動力を配分するほか、雪道などの滑りやすい路面では定速走行中でもリアに駆動力を配分するなど芸が細かく、車重の軽さに加え最低地上高も185mm(FFも同様)と充分確保されており4WDの恩恵は大きそうだ。

■予防安全装備
予防安全装備は、フロントガラスに設置されるステレオカメラからの情報を基盤にした歩行者も検知する緊急ブレーキ機能、前後の誤発進抑制機能、車線逸脱抑制機能などから構成されるスマートアシストの最新版が全グレードに標準装備される。

さらに上級グレードでは、コンパクトクラスとしてまだ例が少ない斜め後方を監視するBSM(ブラインドスポットモニター)と後方を横切るクルマを検知し、バックで出庫する際などに役立つRCTA(リアクロストラフィックアラート)を6万6000円のメーカーオプションで設定。
また最上級グレードには、停止まで対応する先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(停止保持機能はなし、以下ACC)と車線中央をキープしようとするLKC(レーンキープコントロール)が標準装備される。
スマートアシストは機能こそ申し分ないが、同じ機能を持つタントではJNCAPのテストによる緊急ブレーキの性能、ACCとLKCの完成度ともにいまひとつで、ロッキー&ライズでは改良されていることを期待したい。
■グレード体系、価格


ダイハツ ロッキーの最上級グレード「Premium」は、価格設定は高いが、BSMとRCTAが標準装備されている。
トヨタ ライズでおすすめグレードを考えると、アルミホイールやオートエアコン、液晶メーターが付く「G」。ACCとLKCという運転支援システムが欲しいなら、「Z」を選ぶといいだろう。
■ライバル比較
5ナンバーサイズのSUVということで、直接的なライバルはないロッキー&ライズであるが、間接的なライバル車はそれなりにあり、ロッキー&ライズの強みと弱みを考えてみると
●スズキ クロスビー
クロスビーはジャンルとしてはクロスオーバーだが、車格とボディサイズという意味でロッキー&ライズにとって一番直接的なライバル車だ。
クロスビーは、ボディサイズが小さいこともあり室内とラゲッジスペースではロッキー&ライズに対し劣勢、緊急ブレーキの性能ではクロスビー優性だ。最上級グレード同士で価格も含めると(クロスビーのハイブリッドMZはFF/204万500円、4WD/218万5700円)、この勝負は後発なこともありロッキー&ライズの勝ちとなりそうだ。
●ホンダ ヴェゼル
3ナンバー幅ながらフィットベースということで、車格が0.5程度上のヴェゼルは1.5LガソリンのベーシックグレードとなるGホンダセンシング(FF/211万3426円、4WD/233万3426円)がロッキー&ライズの最上級グレードと競合する。
この2台は動力性能は車重も考慮すると同等と予想でき、室内とラゲッジスペース、安全装備&運転支援システムはヴェゼルの圧勝だが、ロッキー&ライズの5ナンバーボディはユーザーによっては小ささという武器と考えることもあるだろう。総合するとこの勝負は引き分けに近いと予想する。
●スバル XV
1クラス上のミドルクロスオーバーのスバルXVは1.6LNAのベーシックグレードの1.6iアイサイトは220万円(4WDのみ)と、ロッキー&ライズの最上級グレードと迷うユーザーもいるだろう。
この2台は、動力性能はXVの車重が1410kgと重いこともありロッキー&ライズの圧勝と思われるが、安全装備に代表されるクルマの質はXVの圧勝、装備内容はLEDヘッドライトやスマートエントリーなどが標準装備となるロッキー&ライズの最上級グレード優勢だ。
この2台に項目ごとに総合点を付けたら、質と量の勝負で案外いい戦いとなりそうだ。
ロッキー&ライズは、特に派手さはないクルマながら5ナンバーサイズのSUVがほかにないのもあり、商品力はかなり高い。
またここ数年、コンパクトカーのガソリンエンジン車でもグレードによっては車両価格200万円というケースも珍しくない。それだけに昨今のSUVブームも考えるとジャンルをあまりこだわらないユーザーだと、「値段がそれほど変わらないならSUVのほうが面白いか」とロッキー&ライズを検討することもあるだろう。
このあたりを総合すると、ロッキー&ライズが200万円前後のクルマたちに与える影響は意外に大きいものとなるかもしれない。