売れに売れて、日産としては約30年ぶりの月間販売台数ナンバーワンを奪取した、日産ノート。
2016年11月の販売台数は王者アクアを抑えて1位になった。そして、その原動力となっているグレードがe-POWERだ。
「どうせエコでEVチックな……」と思う方も多いかもしれないが、この記事を読むとe-POWERの見方が変わるかも?
大磯で行われた一風変わった試乗会を徹底リポートする。
文:WEBベストカー編集部/写真:西尾タクト
そもそもe-POWERってなに?
「なんとなく知ってはいるけれど、実はよく理解していない自動車用語ランキング」。そんなランキングの2016年版の上位にノミネートされるのはきっと”e-POWER”だろう。
しくみは基本的にはEV。しかしそこに発電用のエンジンが搭載されているのだ。混同されがちだがこれはBMW i3とは厳密には異なる。
i3はEVの緊急時用のバックアップとしてエンジン(レンジエクステンダー)を搭載しており、基本的には充電器からの充電を必要とするからだ。
いっぽうのノートe-POWERは発電源がエンジンであり、充電を必要としない。そのぶんガソリンの給油が必要で、バッテリー残量に応じて発電用エンジンが発電を行う。このe-POWERのメリットは2つ。
- ・ライフスタイルをクルマに寄せないで済む
- ・航続距離の心配が不要
EVの充電スタンドはここ数年で増加しているが、一般的になったとも言えない状況は続いている。
自宅への200V設備の工事なども考えると、ライフスタイルをEVに合わせていく必要性があるのは事実だ。
また航続距離も日産リーフが200kmの走行を行えると仮定しても、200kmごとに30分以上は充電のために足を止めないとならない。
その30分で高速道路ならほかのクルマは50kmも進んでしまう。時間的に拘束されるのもEVの課題だ。
この2点を解消する、まさに「EVへの入口」ともいえるのがノートe-POWERだ。


イラストのようにエンジンは駆動系には繋がっていない。バッテリーの充電値によってエンジンが稼働し、発電モーターを回す
ノートe-POWER NISMOにも注目したい
ノートe-POWERで熱いトピックはNISMO仕様の設定。ワークスチューンのNISMOだから簡単なパーツ装着だけではない。
フロアトンネルの補強などフロアだけで6カ所をチューニング。操縦安定性の向上をしつつも、質感の向上にも寄与している。乗ってみるとスポーツカーライクな”ガッシリ”感が嬉しい。
エアロも派手さだけでなくスーパーGTからのフィードバックを受けており、ゼロリフトを実現。
Cd値を悪化させずにダウンフォースを発揮する。タイヤはe-POWER NISMOは横浜ゴムのSドライブを装着し、燃費とハンドリングのバランスを取っているようだ。

“ワンペダル”ジムカーナが意味するものとは?
このノートe-POWERでおもしろいのがアクセルペダルのみで減速、停止、加速をまかなえるワンペダル走行ができること。
交通の流れを読みつつ、回生ブレーキをうまく使うことでブレーキペダルへの踏み替えが少なくて済む。日産の実験によると市街地で70%もペダルの踏み替え回数が減ったそうだ。
実際に編集部でも一般道と自動車専用道路を含む16kmのドライブで実験を行ったところ、一時停止箇所を含めてブレーキを踏んだ回数は0回。
もちろん安全に配慮しながら走行するのは大前提としても、電車のような新鮮な走行感覚を体験できるのは楽しいのひと言。
そして今回紹介するイベントが日産広報部が満を持しておこなった「ノート e-POWER ワンペダルジムカーナ試乗会」。
売れ筋のグレード「X」を使って、ワンペダルでの運転の可能性を味わってもらおうという狙い。回生ブレーキだけで減速、そして停止まで行うというなかなかハードルの高い競技だ。ルールは以下のとおり。
- ・アクセルペダルのみ使用可能
- ・サイドブレーキの使用は不可
- ・ブレーキペダル使用は5秒ペナルティ
- ・パイロンタッチは2秒ペナルティ
WEBベストカー編集部員が挑戦
WEBベストカー編集部員、塩川が今回は挑戦。走るのが大好きな人間だが、業界の猛者たちが集うこのような”競技系”試乗会に少しビビッている様子。編集長からの命を受けて、当日は現地入り。指令は「トップ10に入ってこい」だった。
現地にはレジェンドの津々見友彦さん、ベストカーOBでドラテク伝道師の大井貴之さんまでもが参戦。
41人がエントリーしている。いやはや走る前からすごい重圧。とにかくアマチュアで上位に入ることを考えて今回は走った。
6回の練習走行があり、その後に2回のタイムアタックという流れ。走ってみて思ったのがとにかく回生ブレーキのコツをつかむこと。
BMW i3の「ブレーキ効かせています」というガッツリした回生ブレーキではなく、自然な減速度の回生ブレーキなので、スイッチのオン・オフのような感覚とも違う。
丁寧に、先読みをして回生ブレーキの効きをジワリと確認する必要があった。練習1本目は48秒。
「40秒台ならなかなか上手だと思います」という広報マン。しかし次の「そろそろ本気のベストカーらしい走りを一発お願いしますよ」というひと言で奮起。
ついに最後の練習走行で41秒台を記録するのだった。ペナルティこそあったものの、このタイムならそこそこ速いはず。いよいタイムアタックにかかる。
本番に強い!? ナゾの集中力で会心の走り
計測は2回。別日程で参加していたカートップ誌の編集者が41秒台を出したとの情報もあって、”絶対に負けられない”と集中力を高める。41秒台を是が非でも出さないと。
計測1本目。パイロンタッチのペナルティがあり2秒加算で45秒。チャンスはあと1回。安全にいくか、リスクを冒して勝ちにいくか。
計測2本目は手堅くまとめて42秒78。総合10位とそこそこの成績で終了。手に汗にぎる試乗会になった。
総合結果は以下のとおり。ジャーナリストの皆さんはもとより、唯一の30秒台の大井さんのタイムは異次元だ……。
ちなみにベストカー本誌の編集部も同じ企画に挑戦しているので、ベストカー2017年2月10日号(新年1月10日発売)でのレポートをお楽しみに。