「NISMO」はダウンフォースを29%アップ!
では注目のグレード「NISMO」はどうなのか? 実のところ、外観の変更点は前後バンパーやサイドのアンダースポイラーなど下半身に集中しているが、まるでモデル当初からあつらえられていたかのようにまとまりがいい。
フォーミュラeにインスパイアされたドットタイプのリアフォグもなかなか大胆な造形だが、決してヤンチャに見えることはなく、大人の上質さを感じさせる。
いたずらに対地アングルを犠牲にすることなく、エアロダイナミクスを大きく向上(ダウンフォース29%アップ!)させている辺りにNISMOの技術とこだわりを感じる。
内装は黒が基調。運転席に座るとまず、赤いスタータースイッチやステアリングのセンターマーク、ダッシュボードに施されたレッドカーボン調フィニッシャーやインパネのメタルエンブレムが目を惹く。
シート素材はブラックファブリックとPVC。レッドステッチとNISMOの刺繍で加飾され、SUVらしくほどよく嫌味のないホールド性はオプションのレカロよりむしろ好みかも知れない。
リアからぐいぐい押される感覚はNISMOならでは
NISMOグレードの走りを支えるチューニングには大きく3つの軸がある。まずは前後モーターの駆動や回生、エンジン制御を統合コントロールするVCM(ビークル・コントロール・モジュール)とe-4ORCEの味付けだ。コーナーからの立ち上がりが明らかに速く、リアからグイグイ押される感触がある。
もともとエクストレイルのモーターはフロント150kWに対してリア100kWの力があり、なんちゃってハイブリッド四駆の小型リアモーターとは一線を画す押し出しの強さがリアに与えられているが、その立ち上がりがさらに鋭くなった印象だ。ステアリングの切れ角も少なく、操っていて楽しくなる。
2つ目は専用スプリングとカヤバ製のショックアブソーバー「スイングバルブ」の採用だ。ロールなどダンパーの動きが遅い時はしっかりと、ガタピシ路面などダンパーの動きが速い時はやさしく働くスペシャルダンパーのおかげで、乗り味はスポーティだが意外にもジェントル。
実はこのサスチューン、AUTECH仕様に新たに追加された「スポーツスペック」にも同じものが与えられているのだが、NISMOは幅広リムのホイールとハイグリップタイヤで路面をガッチリホールドする仕様のため、乗り味はかなり違っている。
NISMOはSUVらしからぬ回頭性の良さで、テストコース試乗時の高揚感はハンパなかったが、AUTECHスポーツスペックのしっとりとした感触も素晴らしく、個人的にはこちらが肌に合った。
雪上ではアクセルで自在に向きが変えられる!
ただ両車の違いは基本的にタイヤだけなので、リプレイスタイヤのセレクト次第ではNISMOでもジェントルな身ごなしは可能。その逆も、つまりAUTECHでNISMOらしい走りを手に入れることもできるはず。迷ったら見た目だけで選ぶのもいいだろう。
3つめはエコ、オート、スポーツという3つのドライブモードにおける前後駆動配分の特別チューンだ。
僕は雪上の独自取材を通じて、T33エクストレイルの前後モーター+ワンペダル操作による雪道走行がいかにイージーかつ安全で、優れたトラクションが与えられているか肌身で感じてきたが、今バージョンのNISMO仕様及びAUTECHスポーツスペックでは、雪上のコーナリング中「アクセルで自在に向きを変えられる」までに、走りを磨き上げてきたという。
大前提である「安全」領域からもう一歩踏み出し、雪上のファン・トゥ・ドライブを可能にしたという話だが、これはもはやエンジン駆動車で敵う領域では、おそらくない。その意味で僕は電動化四駆には素晴らしい未来があると信じているのだが、とにかく、いちオフロードファンとして冬場の試乗がめちゃめちゃ楽しみになるチューニングだった。
いずれにせよ、今回のマイチェンによってエクストレイルの選択肢が大きく拡がったことは間違いない。
【車両価格】
エクストレイル NISMO e-4ORCE:541万6400円
エクストレイル NISMO advanced package e-4ORCE:596万2000円



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