運転しやすいFCバス
ところで、バスマガジン編集部では東京都に納車されたFCバスと同じ型の車両をすでに取材、試乗しているので簡単に紹介しておこう。
バスの車体は日野自動車のブルーリボンがベースとなり、パワーユニットにトヨタのFCシステムが組み合わされる。外観で最も特徴的なのは屋根かもしれない。
フタコブラクダのように屋根上の前後に突起があり、前方に高圧水素タンク、後方にはバッテリーが積まれている。
重量物を上方に搭載するのは自動車として邪道と思われる読者の方も多いかもしれないが、現在の路線バスではバリアフリー対策としてノンステップの低床フロアが必須で、そのため屋根上のスペースを活用せざるを得ないのが実情だ。
エアコンユニットも屋根上に設置するのがバスでは常識である。ちなみに、モーターは後輪の後ろに設置されている。従来のバスのエンジンとほぼ同じ位置だ。またヘッドライトのデザインが特徴的で、やはり近未来をイメージさせる。
コクピットは従来のバスと大きく変わらないが、シフトノブはトヨタのハイブリッド車に近く、シフト操作も軽い。Dレンジに入れて走り出してみると、シフトだけでなくアクセル、ブレーキ、ステアリング操作すべてが軽く感じられて扱いやすい。
ボディが大きいことを除けば乗用車ライクな感覚で、これまでのバスより運転しやすいといえる。実際にFCバスを運転した都バスドライバーの声を聞いてみたところ、同じように操作性の良さを挙げる意見が多かった。
さらに、サスペンションは適度に硬めで立って乗車する場合でも乗り心地は良さそうだ。静粛性が高いため車内アナウンスのボリュームを絞ったほうがいい、といった現場のドライバーならではの感想も聞かれた。
推定価格1億円とも言われたFCバスだが、東京都へは月額約25万円のリースで納車されている。
車体のメンテナンスや修理は基本的に都バスが行い、FCシステムに不具合があればトヨタのディーラーが対応する。
また、課題となる水素ステーションに関して東京都は、当面は有明など民間施設を利用するとしているが、2020年に70台体制になれば施設の不足は明らかで、営業所内の設置も視野に入れて検討していくという。
環境対策の旗手として、また深刻なドライバー不足に直面しているバス業界の救世主として、期待大のFCバスの今後に注目したい。
コメント
コメントの使い方