うまく使えなかった「タイプR」ブランド
そしてFK2の「×」を紹介したい。ちょいと厳しいこともズバズバと書いていくつもりだが、ひとりのオーナーの言葉として捉えていただけたら幸いだ。
1.シビックらしくない
これを最初に持ってきてしまうのは憚れるがとにかく「シビック」ではない。デカイ、重い、高い、そしてターボ。
全幅1880mm、この数値を見たときはさすがに腰を抜かした記憶がある。ホンダはNSXにしろ、シビックにしろ、スポーツ車種のヒストリーの重みが大きい。
ましてや「タイプR」だ。簡単にその名を使おうものならファンは「ホンダ許すまじ」になってしまう。
例えば並が400円の牛丼チェーンが、いきなり松阪牛を使い始めて、値段が1500円になったら文句も溢れてくるはず。
「絶対に美味しいから高いんです」。「そんなことわかっちゃいるけど……」という反応になるのは仕方ない。消費者にもう少し丁寧なアプローチをすれば「ニュルスペシャルのシビック」というとらえ方をされたのかも。
2.シートがダメダメ
これは長期間使ってわかったが、ドライバーズシートがまったくもって理に適わない。腰の部分がナゼか知らないが反っている。お腹が前に押し出されるのだ。
以前あの脇阪寿一さんも指摘していたが、とにかくシートだけはどうにもダメ。先代のFD2型から開発陣が多くの時間を割いてホンダ内製にしたのだが、どうにもこうにも落ち着きが悪い。
ベルトホールにメタル処理をしていたりデザインはなんとなく「タイプR」なのだが、シートは座ってこそ価値が出る物。結局のところは「餅は餅屋」ではないだろうか。ちなみに塩川はブリッドのフルバケットシートに交換済みだ。
3.限定販売なんて「タイプR」ではない
これはソフト面での指摘になるが、750台の限定販売もよくなかった。だって一般ユーザーは試乗すら許されない。
「タイプR」はカタログモデルだから価値があると個人的には思う。FK2はホンダUKの生産で、モデル末期ということもあり販売台数が限定されたというホンダの懐事情はわかる。
しかしそこは期間限定の受注生産でもよかったのではないだろうか?
また日本ではチャンピオンシップ・ホワイトとブラックしかカラーが選べないこともよくない。ブルーやレッドといったスポーツらしいカラーが本国ではあるのに。
中古車市場でプレミア価格で流通してしまうことも、長い目で見ればタイプRブランドにはマイナスかも。500万円近いプライスはさすがに……。日本生まれのカタログモデルのタイプR。それが出る日はいつか来るのだろうか?
まとめると、いいクルマ!?
「○と×」でいろいろと述べてきたが、総評としてはこのクルマが存在する意義はかなり大きいと思う。310psのFFマシン。性能でいえば「タイプR」の名に恥じないモデルだ。ニュルブルクリンクへの挑戦は今後も続くようだ。
どうしてもクルマ好きの心情としてはソフト面での違和感は拭えないのも事実。しかしこのご時世にこんな「ぶっ飛んだ」クルマを作ってしまうあたり、まだまだホンダスポーツの灯火を消さないぞ!! という決意も見える。
次期型はきっとカタログモデルになるはず。
価格は500万円前後と従来のシビックとは異なる価格帯になってしまうだろう。しかし、ぜひホンダには新型を試乗できる機会を設けてほしい。
せっかくの紛うことなきタイプRなのに、このままでは「乗らず嫌い」を増やしてしまいそうだ。
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