三菱の軽乗用車「ek」シリーズが、2018年5月28日に一部改良を実施した。主な改良点は、先進の安全運転支援機能の向上だ。これにより全車が「サポカーSワイド」もしくは「サポカーSベーシック」のどちらかに該当するようになった。さまざまなアシスト機能が追加されたようだが、ではいったいどんな機能が加えられたのか。
改良型のekスペースの試乗レポートも交えてお届けしたい。
文&写真:大音安弘
■先進安全装備が大幅に進化
ekシリーズは、軽トールワゴン「ekワゴン/ekカスタム」と軽スーパーハイトワゴンの「ekスペース/ekスペースカスタム」で構成されているが、ekワゴン系は2015年10月、ekスペース系は2016年12月にそれぞれマイナーチェンジを実施しており、今回の改良点は、先進安全運転支援機能「e-Assist」に絞られる。しかし、ここが最も重要なところ。「e-Assist」のメカニズムが一新され、機能が大幅向上されているのだ。
まず2014年12月より採用された従来の「e-Assist」の内容を振り返っておきたい。
従来型では、検知センサーに「レーザーレーダー」と呼ばれるレーザー光を使ったセンサーを搭載。これにより自動ブレーキ機能である「低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM-City)」と障害物との衝突被害を抑制する「前進時の誤発進抑制機能」を備えていた。このシステムは、比較的安価で軽自動車向きだが、作動範囲と対象物が絞られる。FCM-Cityの作動速度域は約5km/h~約30km/hの低速域に限られ、検知対象は車両のみ。誤発進抑制機能は、約10km/h以下の速度域、前方約4m以内のクルマや障害物を検知した際、アクセルペダルを素早く強く踏み込むとエンジン出力抑制をするものだった。つまり低速域に限った機能だったのだ。
今回、一新された「e-Assist」は、センサーを「単眼カメラ」+「ソナー」に変更。これにより検知対象と作動速度域の大幅に拡大され、機能向上も図られたのが特徴だ。この単眼カメラは、日産セレナなどにも採用されるモービルアイ社製のもの。それだけポテンシャルの高いものといえる。それをekシリーズに搭載し、新「e-Assist」を開発したという。
では、具体的な進化についても紹介したい。
■軽自動車初の装備も用意
自動ブレーキである「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」は、対車両の作動速度を約5~約80km/hまで拡大。新たに歩行者にも対応し、作動速度域は約5km/h~約60km/hとなっている。衝突の危険を検知すると、警告。その後、自動ブレーキが作動し、衝突被害の回避軽減を図ってくれる。
誤発進抑制機能は、「踏み間違い衝突防止アシスト」に進化。アクセルペダルの急激な操作だけでなく、ブレーキの遅れにも対応。障害物に対しては前進及び後退をカバー。15km/以下の速度域で、衝突の危険性を検知すると、エンジン出力抑制に加え、自動ブレーキがアシスト。さらに前進時は、単眼カメラ+ソナーの組み合わせにより、障害物だけでなく、前方のクルマや歩行者にも対応。作動速度領域も約25km/h以下まで拡大されている。
踏み間違い防止機能で歩行者対応したのは、軽自動車初となる。
この変更により、eKシリーズは軽自動車ではトップレベルの安全性能を持つことになったといえる。
今回の改良では、これらの機能が「ekシリーズ」全車に標準化されたのも大きなトピックだ。これにより国が推奨する先進安全運転支援機能車の「セーフティ・サポートカー」、通称「サポカー」制度の装備内容が「サポカーSベーシック+」の基準を全車でクリア。さらに上級グレードを中心に一部モデルでは、車線逸脱警報システム「LDW」とオートマチックハイビーム「AHB」を装着。ここまで搭載するグレードが「サポカーSワイド」となっている。
コメント
コメントの使い方