デジタル化されたインテリア 「直感的になった」とは言うが…
ゴルフ8の最大のポイントは、インテリアのデジタル化だろう(VWでは「デジタルインテリアアーキテクチャ」と呼ぶそうだ)。デジタルメーターや、インパネ最上段に来ている10インチタッチスクリーンは、全グレードで標準装備となる。
先代最終モデルの「マイスター」のような豪華なインテリアとは対照的に、機能追求かつシンプルに仕上げた未来的なインテリアは、新鮮でありつつも、「無駄」がなさすぎることで、若干寂しくも思える。
いわゆる物理スイッチは数が減らされており、ナビゲーションの真下に並んだ、エアコン温度調節や、ボリューム調節、メニュー選択などの操作は、ほとんどがタッチパネル化されている。
VWは、「直感的に操作ができるようになった」としているが、これが本当に「直感的」な形式とは、筆者は思えない。ナビの下部分のタッチスライダー(2本の指で触ってスワイプする操作など)、は、最後まで慣れなかった。運転中の揺れる車内で、この手のタッチパネルへ正確に触り、正確に操作するなんてことは到底できないんじゃないだろうか。
「世界のベンチマーク」であるだけに、「ゴルフがタッチパネル化へ進むなら…」と、世界中のクルマがこうなってしまうのではないか、心配でならない。
走りの次元は他社車を圧倒している
試乗は1.0Lの「eTSI Active」と、1.5Lの「eTSI Style」の2台。一般道、ワインディング、流れの速い幹線道路など、リアルワールドで乗り比べた。
まずは1.0Lの「eTSI Active」に試乗。1.0L「eTSI Active」のポイントは、走りの軽快さだ。軽自動車のエンジンに毛が生えた程度の排気量(正確には999cc)で、よくもこれほど静かに、かつパワフルに走らせるものだなと、感激するほどだ。
低速からの加速の滑らかさ、そして強めにアクセルペダルを踏み込んだ際の加速の強さも、必要十分な性能だ。これらは間違いなく、48Vマイルドハイブリッドシステムの恩恵だ。
アシスト力は常に適切な強さで介入するため、より大きな排気量のクルマを運転している印象を受ける。また、アクセルオフ時にはエンジンをオフにしたコースティング(慣性走行)もするので、実燃費も伸びる傾向だ。
コーナリング性能や乗り心地は、先代同様で素晴らしく、間違いなく「世界のベンチマーク」としての実力が引き継がれている。高速走行時のステアリングホイールのN付近の落ち着きぶりも、先代と同様に高い。
ただし、リア周りからの音の漏れ(ロードノイズなど)は、若干、期待値を下回っていた。1.0 eTSIだと、リアがトーションビーム式となるため、それも影響しているのだろう。
続いて1.5Lの「eTSI Style」に試乗した。1.0L「eTSI Active」との走りに関係する違いは、パワートレイン(1.5L化)、タイヤサイズ(17インチ化)、フロントサスのサブフレームがアルミ化(1.0Lはスチール製)、そしてリアが4リンク式マルチリンクになる点だ。
車重は1.0L eTSI(1310kg)に対し、50kgほど重く、1360kgとなる。このため、1.0eTSIとは違って、乗り味に落ち着きが出ていることと、静粛性が増しているのがすぐに分かる。
ちょっと速めのスピードでコーナーに突っ込んで大きくロールさせ、ボディモーションを確認する。ゴルフ8は、コーナーの途中で荒れた路面を走り、タイヤが多少バタついても、サスやタイヤのたわみで吸収し、キャビン側には揺れをさほど伝えてこない。そのため、運転者はクルマの向きをコントロールすることに集中できるので、安心感が非常に高く、そして、運転が楽しく感じる。
これで、サスペンションはコンベンショナル(制御デバイスを使っていない)なのだから驚かされる。サスペンションストロークの多さなのか、バンプラバーの特性なのか、チューニングの巧みさなのか。さすがはVWだ。国産車で、この走りに肩を並べられるクルマを、残念ながら筆者は知らない。
ちなみに、WLTCモード燃費は、1.0 eTSIが18.6km/L(市街地14.7、郊外19.1、高速20.6)、1.5eTSIが17.3km/L(市街地12.8、郊外18.0、高速19.8)だ。
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