ついに日本でも販売が始まったCセグメントのクロスオーバーSUV、カローラクロスだが、早くもそのGR SPORT仕様が登場した。しかし、その発表は日本ではなく、台湾での登場となっているのだ。カローラクロスのGR SPORTはなぜ台湾専売なのか、そして日本でも導入されるのかについて渡辺陽一郎氏がトヨタと販売店に取材した。
文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ
【画像ギャラリー】台湾で専売されるカローラクロス「GR SPORT」の特別な仕様を写真でチェック!!
■台湾でスポーティなGR SPORTが登場!
最近はSUVの人気が高く、そのなかでも特に注目されている車種がカローラクロスだ。トヨタは以前からコンパクトなヤリスクロスとライズ、ボディが比較的大きなハリアーとRAV4を用意してきた。カローラクロスはその中間に位置する。
プラットフォームなどの基本設計はC-HRと同じだが、C-HRのクルマ作りは外観デザインを優先して後席や荷室が狭い。その点でカローラクロスは、外観をSUVの定番的な形状に仕上げ、特に荷室容量が大きい。そのためにファミリー層など、幅広いユーザーに適する。
エンジンは1.8Lのノーマルタイプとハイブリッドが用意され、売れ筋価格帯は240万~300万円だ。トヨタのSUVラインナップの中心に位置づけるべく、機能や装備に対して価格は割安に抑えた。
そしてカローラクロスは、タイ、台湾、北米などでも販売され、いわゆるグローバルカーとされる。その台湾仕様に、先ごろスポーティなGR SPORTが加わった。
■魅力的な特別仕様の内容
台湾で販売されるカローラクロスGR SPORTのフロントグリルは、ハニカム(蜂の巣)状のデザインで、色彩はブラックで精悍に仕上げた。ボディの下側には、アンダーガードを思わせるシルバーの樹脂パーツも装着される。内装もブラックのレザーでスポーティな雰囲気だ。
メカニズムについては、サスペンションを前後ともに強化した。ボディの底面には、補強パーツを加えて剛性も向上させている。電動パワーステアリングの設定も異なり、走行安定性、操舵した時の正確性、回頭性を高めて、スポーティな運転感覚を強めた。エンジンは直列4気筒1.8Lのノーマルタイプと、ハイブリッドの2種類を用意する。
カローラクロスGR SPORTは、このように魅力的な仕様だが、今のところ台湾の専売車種だ。なぜ日本国内には導入されないのか。トヨタに尋ねると、以下のような返答だった。
「カローラクロスGR SPORTをはじめ、どの車種においても、商品計画や投入時期は地域ごとにお客様のニーズを踏まえて決定している。日本での発売など、具体的な商品計画は、回答を差し控えたい」。予想どおりの返答だが、少なくとも台湾には「お客様のニーズ」があるということだ。
■日本で販売されると価格はいくらに?
もともとカローラクロスは、2020年7月にタイで初公開された。アセアン地域向けに開発されたから、GR SPORTも台湾で発売されたと見ることができる。ちなみにタイでは、ピックアップトラックのハイラックスとシャシーを共通化したSUVのフォーチュナーが用意され、この車種にGR SPORTが設定されている。つまり、GR SPORTはそれぞれの国や地域が力を入れて販売する車種にラインナップされるわけだ。
台湾では、GRスープラ、GRヤリス、86(現時点では先代型)も販売され、カローラアルティスにもGR SPORTを用意した。日産のGT-Rや370Z(フェアレディZ)を含めて、日本でも人気の高いスポーツモデルが豊富に用意される。カローラクロスにGR SPORTを設定したことも納得できる。
台湾におけるカローラクロスGR SPORTの価格は、標準グレードの最上級仕様と同程度だ。スペシャルティ指向の割高な価格設定ではないため、売れゆきも伸びるだろう。GR SPORTの価格を日本で販売されるカローラクロスの価格体系に当てはめると、ノーマルエンジン搭載車が280万円、ハイブリッドは315万円前後になる。
■GR SPORTでクルマの楽しさを身近に!
日本におけるGRは、GR86、GRスープラなどと併せて、ヴォクシー/ノアGR SPORT、C-HR GR SPORT、ランドクルーザーGR SPORTなども用意される。少々わかりにくいが、既存の車種をベースに、走りの楽しさを盛り上げることもGR SPORTの大切な役割だ。
今では国内で販売される新車の40%近くが軽自動車になり、トヨタの売れ筋車種は、直近ではヤリス、ヤリスクロス、ルーミー、アクアだ。国内全体、あるいはトヨタだけを見ても、日本はコンパクトで実用的な車種だけが好調に売れる市場になりつつある。
この流れを食い止めるのに効果的な車種は、カッコよさと運転の楽しさ、優れた実用性を併せ持ち、なおかつボディサイズと価格が手頃なスポーティカーだ。例えば既存の日本車では、スイフトスポーツが堅調に売れている。2021年における1カ月の平均登録台数は約800台で、スイフト全体の44%を占めた。
また先代ノートe-POWERでは、NISMOの販売比率が10%であった。コロナ禍の影響を受ける前の2019年には、1カ月当たり700~800台のノートe-POWER NISMOが販売されていた。
いずれも大量に売られる商品ではないが、安定して手堅く購入されている。そしてこのような手に入れやすい等身大のスポーティなクルマを作り続けることで、クルマの楽しさや興味も受け継がれていく。
■カローラクロスGR SPORT日本導入の見通し
従って将来的には、カローラクロスGR SPORTも、国内市場に投入されるだろう。その見通しを販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「今のトヨタは、幅広い車種にGR SPORTをそろえている。カローラクロスは売れ筋車種だから、GR SPORTを設定すれば売れゆきも伸びる。従って将来的には国内にも導入すると思うが、今はコロナ禍のために、東南アジア製の部品が幅広く滞っている。半導体に加えて、ワイヤーハーネスなども入ってこない。この影響もあり、現在のカローラクロスの納期は約4か月から6か月と遅延している。カローラクロスにGR SPORTが設定されるのは、納期が落ち着いてからだろう」。
コロナ禍が終息したら、カローラクロスGR SPORTを筆頭に、楽しいクルマたちが次々と登場するに違いない。その時を楽しみに待ちたい!
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