オランダのトラックメーカー、DAFは6月9日、大型トラックの上位機種「XF」のフルモデルチェンジを実施。同時に新たなフラッグシップとして「XG」「XG+」を発表した。
欧州の新たな寸法規定の施行に合わせて投入された新型は、すべての面で省燃費性能=CO2低減を追求した意欲作。クラストップの広さを誇る新型キャブやデジタルミラーの採用、さらに同社初となるプレミアムセグメントモデルの新設定など話題盛りだくさんで、市場からも注目されそうだ。
欧州トラッカーが注目するDAFの新世代フラッグシップトラックの実力をレポートする!
文/多賀まりお
*2021年9月13日発売トラックマガジン「フルロード」第42号より
■新規定に合わせてキャブを大型化
初のプレミアムセグメントモデルも設定
欧州では、セミ/フルトレーラの連結全長を緩和するECEの新規定が9月1日に施行。これは省燃費化による排出ガス低減と、安全性・快適性の向上を目的にした変更で、キャブのフロントオーバーハング延長と、乱流抑制用フラップ装着のためのトレーラのリアオーバーハング延長を認めるもの。
DAFの新型キャブはこれに合わせて設計されたもので、フロントオーバーハングを160mm延長。このスペースを活かしてコーナーパネルに大きな曲面を持たせ、フロントウインドウも端部が回り込んだ形状とするなど走行風の圧力を受けにくい形状を追求。約19%もの空力性能向上を実現した。
XFのキャブは、これまでと同じ2.5m幅で、フロア中央部には高さ175mmのエンジンを避けるためのフロアトンネルがある。当面の設定はキャブ前後長2360mmのフルキャブのみで、ルーフ仕様も室内光1900mmのハイルーフの1種類だ。
いっぽう、XFと骨格を共有しながら、新たに設定されたXGとXG+はダフ初のプレミアムセグメントモデル。フロア高を高めてトンネル段差を50mmに縮小。さらにキャブ後部を330mm延長してキャブ容積も拡大。キャブ前後長は実に2690mmにおよび、室内の広さはクラストップだ。
なおXGとXG+の違いは室内高で、XGの2025mmに対し、4mの全高制限に迫るXG+は2145mmと一層余裕がある。
■圧倒的な居住性を誇る新型キャブ
デジタルミラーなど先進安全装備も充実
キャブ前後長が長いXG系の居住性は圧倒的で、運転席には回転機能が備わり、インパネ中央部から引き出せる大きなテーブルに向かって食事やパソコン作業ができる。ベッド幅は800mmと余裕があり、電動式のリラックスベッドもオプションで選択可能だ。
また、新型キャブは直接視界を改善すべくフロントウインドウの面積を33%、サイドも15%拡大。ラウンドしたフロントウインドウによってフロントピラーの位置はドライバーに近くなり、斜め前方の視界を拡大。デジタルミラーを選べば死角はさらに減少する。
「デジタルビジョン」と呼ばれる同ミラーは、両サイドと広角のサイドアンダー、右コーナー(左ハンドルの場合)のフロントアンダーミラーのすべてをデジタル化するもの。フロントアンダーだけのデジタル仕様も存在する。
衝突安全性についてはUN-ECE・R29の最新強度基準に適合。フロントのファイアウォール部にクラッシャブルボックス構造を備えるとともに、前面衝突時にキャブを400mm後退させる仕組みをキャブヒンジに内蔵。キャブバックにもクラッシャブルゾーンを設ける。
■エンジンの見直しで低回転・高トルク化を実現
全車に勾配予測制御機能付き12段AMTを採用
エンジンは引き続きDAFの親会社である米パッカー社製。米国で展開されているのと同じMX-11型(10836cc)とMX13型(12901cc)を搭載する。
両機はシリンダーブロック/ヘッドの構造見直しにより高筒内圧燃焼に対応。新世代の燃料インジェクタとピストン(燃焼室)、ターボチャージャーを組み合わせ低回転・高トルク化を図ったもので、後処理装置も新世代型の尿素供給装置を導入。トータルで12kgの軽量化を達成している。
出力仕様はMX-11型が367PS/199kgm~449PS/240kgm、MX-13型が428PS/235kgm~530PS/275kgmまでの各3機種で、いずれのエンジンも最大トルクをわずか900回転で、最高出力も1600回転で発生する。
ギアボックスはZF社製の12段AMT「TraXon」を全量採用。同機にはGPSの位置情報と3次元マップを組み合わせて進路上の勾配に対してギア段とエコロール、エンジン出力の予測制御を行なう機能が備わる。マニュアル仕様は存在しないという。
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