ドライ路面でも分かるe-4ORCEを目指した
今回の新型エクストレイルに採用された「VCターボe-POWER」は、1.5LのVCターボを発電エンジンに、高出力モーターを組み合わせる、近年の日産が誇る技術のひとつだ。
「なぜわざわざVCターボを使うのか」と、パワートレインEV技術開発本部エキスパートリーダー(兼)企画・先行技術開発本部 技術企画部 担当部長の平工良三氏に尋ねると、通常のエンジンは回転数を上げることで出力を発揮するため、パワーとノイズは比例関係となってしまう。だがVCターボだと、回転数を変えずに圧縮比をコントロールして出力を稼げるので、発電時の静粛性が向上する。車速100km/h近くまで2000rpm以下を維持するように設定しているそう。
また、e-POWER制御の改良によってエンジンの作動頻度を下げたほか、高遮音ボディや吸・遮音材追加や前席遮音ガラス採用などによって走行音を徹底的に抑え込んだことで、走行中の室内音は、-3dB(およそ-30%)も静かになったという。より力強く、より静かに、を目指したようだ。
また、アリアで初採用された、前後モーターと左右ブレーキで各輪の駆動力をコントロールするe-4ORCEも、エクストレイル用に専用チューニングをしている。車両計画・車両要素技術開発本部 車両計画・性能計画部 操安乗心地性能計画グループ主管 富樫寛之氏は、アリアとエクストレイルのe-4ORCEはどう違うのか?? という問いに対して「思想は一緒」だとし、「日産は、どのモデルでも、どんなシーンでも加速しながら曲がっていけるクルマを目指している。限界性能ではなく、一般的なドライ路面でも「上質な運転感覚」が分かるように、普段の運転時にある0.2G程度の加減速をするシーンで使いやすい、そういう価値を提供したい」としていた。
新型エクストレイルでは、そのe-4ORCEの効果をフルに発揮させるため、車体剛性40%アップ、フロントサスペンション横剛性55%アップ、また、従来のコラムEPSからラックEPSへと変更したことで、ステアリング剛性も50%アップさせ、遅れの少ないヨー応答を目指したという。
速くて静か、実に快適!!
時速30kmほどの低速でゆっくりと走りだしてまず気づくのは、車内の静粛性。BEVであるアリアに次ぐ静かさだ。18インチタイヤの恩恵もあるが、路面の凹凸を感じさせないソフトな乗り出しの印象で、「いいクルマ感」がヒシヒシと伝わってくる。アクセルペダルを踏み増して、時速60kmまで加速しても、(メーター内の表示によればエンジンは回転しているのだが)エンジン音は聞こえず、乗り心地もよくて実に快適だ。
さらに踏み増して時速100kmまで加速すると、ようやくVCターボエンジンのサウンドが聞こえる。余裕のある加速感で、踏みこむ分だけさらに加速していく速さの片鱗が感じられる。音の質もガサツな印象はなく、静かで上質。遮音がライバルとなるハイブリッド車たちよりも効いているのか、ロードノイズや風切音も静かだ。
高速直進性も高く、コーナーでも安心感が高い。減速から再加速のレスポンスも期待通りで、運転がイージーで楽しい。e-Pedalは完全停止まではおこなわないが、滑らかに時速15km程度の徐行速度まで減速してくれるので、最後のブレーキ操作だけ行えばいい。
e-4ORCEに関しては、残念ながら、試乗コースが短かく、舗装された綺麗な路面であったために、効果を堪能するほどには至らなかった。価値をうまく伝えられず、不甲斐ないが、e-4ORCEは、オン・オフされるような制御ではなく、絶えず介入しているとのことで、コーナー中での踏み増し操作や、下り坂でのコーナリングなど、ライントレース性が高かったのには、シャーシ性能が高い効果も含まれてしまう。「これがe-4ORCEか!!」と実感するには、もう少し、様々な路面で乗りたかった。
ちなみに、安心感が欲しい人は街中でもスノーモードにするとよいらしい。e-4ORCEが100%介入するモードとなり、悪路・雪道・アスファルト・砂利道など、どんな路面でも絶対的な安心感を味わえるそう。フルタイムe-4ORCEは、制駆動時の姿勢制御もしてくれるので乗り心地もとても良くなるそうだ。
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