高速安定性は「床下で稼ぐ」
今回の新型クラウンのハンドリング性能に関するもうひとつのトピックが、空力性能だ。ご存じのとおり、新型クラウンは、従来型クラウンから大きくスタイルが変わったが、これによって従来型よりも重心位置は上がり、高速走行時などでは安定感の低下が起こりやすい。また車を浮き上がらせるリフトフォースも働きやすい。
こうした課題に対する従来のアプローチであれば、ラゲッジ後端を持ち上げたデザインに修正したり、リアスポイラーを付けたりするものだが、新世代クラウンの変革を象徴する「新デザイン」は死守しなければならない。そのため、空力エンジニアたちが着目したのが、フロア下へ追加するニューアイテムであった。
車両性能開発担当の太田健一氏、岩脇彩香氏によると、安定感のために欲しかったのが、車体を地面に押し付ける力だったという。上屋のデザインは崩さないためには、絶対に床下でやらなければならないと考え、さまざまなアイテムを採用。そのひとつが「エアロスタビライジングアンダーボディステップ」と呼ぶパーツだ。
空力性能向上のためには、通常ならば、アンダーフロアパネルはフラットな板にするものだが、あえて段差を設けることで、流れに変化を与え、床下の空気をスムーズに後ろへ流す、新しいアプローチにトライしたそう。
風洞実験では再現できる風にも限界があるため、車両評価ドライバーによる実走行で、何度も実験を繰り返したそう。「デザインが良くなったけど、走行性能は従来型に劣る、といったことは絶対に言われたくない」 空力エンジニアとしての意地がモチベーションだったそうだ。
最大の課題は、21インチ大径タイヤのバタつき
トヨタ車における運動性能のすべてに関わる部分の監査(評価)を担当するという、凄腕技能養成部の片山智之氏によると、新型クラウンの質感の高い走りは、TNGAのボディ剛性はもとより、エンジン、サスペンション、アブソーバー、空力性能、音振性能、すべてにこだわってつくりこんだことによるものだという。机上計算だけでなく、何度も走りこみ、時速10km、20kmといった低速も、これまで以上にこだわったそうだ。
他にも、わずかな質感の変化に注目して、サスアームの塗装の膜厚を10分の数ミリ厚くしたり、コイルスプリングにプロテクタを追加するなど、工夫と努力を積み重ねてきたという。かつて、アルミテープによる操安チューニングなどを真面目にやっていたトヨタ開発チームの自慢の新作だけに、今回の新型クラウンに仕込まれたアイテムの数々は、相当に期待ができそうだ。
だが、21インチ大径タイヤ(225/45R21)のバタつきをどれだけ抑えこめているのかは気になるところ。でかいタイヤホイールは、カッコよい以外はすべてがデメリットとなる。特に極低速走行では、振動が大きく出る。「21インチだから乗り心地は悪くてもよいでしょ??」というわけにはいかない。
極低速での高品質感は、クラウンの最大の魅力であり、ここが期待を超えるレベルで完成していないと、認めてはもらえないだろう。公道試乗が非常に楽しみだ。
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