あぁ…大事……新型クラウン「反対もあった」大胆な路線変更を成し遂げた鍵は若手起用と「壁」

■まず「任せる」、次に「壁になる」

「今の時流にちゃんと乗ったセダンを作っていくこと、変革していく時代に対応してゆくことが大事なんじゃないか。自分たち(古い人間)が思うように作っていったら、クラウンは変わらないんじゃないか。だったらそういう(「クラウンとは」だとか「セダンとは」というような)概念が全然ない、若い人間にやらせたほうがいいんじゃないかと思って、思いきって彼ら彼女ら(若いデザイナー)に任せました」

 トヨタ社内でもごく限られたキャリアを持つ人間しか関われないクラウンシリーズに、こうして若手社員が関わることになった。そして若手に仕事を振るだけではなく、重要なポイントはここからである。

「僕らベテランが、(彼ら彼女らへ干渉しようとする勢力への)”壁”になって、彼らに生き生きと楽しんでやってもらうことで、クルマも生き生きと楽しいものになると思っています。そういうのは形に出るんですよ」(宮崎氏)

 日本中の中間管理職に聞かせたい名言だと思うが、それはさておき、こうして任された若手デザイナーたちが出してきたプランが、「リフトアップ(≒クロスオーバー化)」であったという。

新型クラウンの先行デザイン。この時点ですでに「クロスオーバー」の要素が大きく前に出ていることがわかる
新型クラウンの先行デザイン。この時点ですでに「クロスオーバー」の要素が大きく前に出ていることがわかる

 若者にとってクルマとは「乗って楽しいもの」だけでなく、海にもキャンプにも行けて、乗り降りもしやすい、荷物も積みやすいかたちであることが重要だったという。

「自分たちにとって本当にほしいセダンってなんなんだろうなと考えていったら、リフトアップに辿り着きました」(新型クラウン担当外形デザイナー、矢野友紀子氏)

 上記に続けて矢野氏は下記のとおり、経緯と事情を語る。

「クラウンというクルマはトヨタのなかでもすごく歴史があって、それをリフトアップするということは、反対意見もありました。でも進化しないと、新しいことをしないと埋もれてしまう、という危機感のほうが強かったです」

 ここでも「危機感」が語られていたのが印象的だった。そしてプロジェクトを進める上で、社内的な反対意見も、そしてもちろん不安もあったが、デザイン部内での「カッコいい」という評判が高く、そのことがプロジェクトチームの後押しとなったとのこと。

 伝統と格式、つまり長いあいだ愛されてきた歴史があり、そして歴史があるからこそ「変わること」が難しくなっていた「クラウン」。その「しがらみ」がトップから現場レベルまで通貫する「危機感」を共有させ、ついに大きな路線変更を成し遂げられたという。それにはひとえに管理職たちの「壁になる覚悟」と、それに応えた若手の活躍があった。

 もちろんこれは「成功談」ではない。むしろこの話が成功談になるか失敗談になるかは、これから。この新型クラウンが世間にどう受け取られるか、もっと直接的に言えば、売れるかどうかが重要な試金石となる。

 新型クラウンクロスオーバーの発売は今年秋となる。伝え聞いた話では、この三連休で、全国のトヨタディーラーには新型クラウンについての問い合わせが多く寄せられていて、大変な騒ぎになっているとのこと。

 車両本体価格は435万~640万円。トップグレードにオプションを付けていくと乗り出し720万円超。高額ではあるが、どうせならめちゃくちゃ売れて、「クラウンの物語」に大きな足跡を残してほしい。

【画像ギャラリー】これが…クラウン…?? 思わず唸る大胆デザインに至る道筋がわかる新型クラウン外観デザインスケッチ全公開(33枚)画像ギャラリー

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