東京モーターショー2019には、トヨタ グランエースが出展されて話題になった。ボディの基本部分は海外で売られるハイエースと同じだが、内外装は豪華に変更され、アルファード&ヴェルファイアの上級版という雰囲気だ。
さて、そうなると気になるのは、日本向けの新型ハイエースがどうなるかということだ。
2019年2月に海外向けの新しいハイエースが公開され、一部では同車が日本でも「新型ハイエース」になるとの報道も見られた。たしかにハイエースの現行モデル(日本仕様)は2004年発売と古く、新型の登場は近いとされる。
ただ、実はこの「海外のハイエース」を、そのまま「日本の新型ハイエース」として販売するには難しい事情もある。自動車評論家の渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA
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海外向けハイエースをベースに「新型グランエース」日本発売
グランエースの正式発表は11月25日だが、販売店ではすでに受注を始めており、価格は3列シートの「プレミアム」が650万円、4列シートの「G」は620万円だ。
アルファードにV型6気筒3.5Lエンジンを搭載する「GF」が532万4000円、豪華な「エグゼクティブラウンジ」が715万8800円だから、グランエースの価格はアルファードの上級グレードと同等になる。
グランエースのボディは商用車のハイエースで、エンジンは直列4気筒2.8Lクリーンディーゼルターボだから、価格は600万円以下に収まるかと思ったが意外に高かった。
グランエースのボディサイズは、全長が5300mm、全幅は1970mm、全高は1990mmに達するから、車内はかなり広い。3列シートの「プレミアム」は、2列目と3列目にアルファードの「エグゼクティブパワーシート」と同様の座席を装着した。
アルファードでこのシートに座れるのは2列目の2名だけで、3列目の座り心地は大幅に悪化するが、グランエースなら2/3列目の4名が快適に移動できる。
1列目も運転席を含めて不満はないから、6名が満足できるわけだ。5~6名で長距離を移動する機会の多いユーザーにとって、グランエースは魅力的だ。
日本向けの小型なハイエース廃止が「考えられない」訳
グランエースはリムジン感覚のミニバンだが、ベース車となる荷物を積むための海外版ハイエースは、日本国内で売らないのか。
この点を販売店に尋ねると、
「海外で売られる大柄な商用車のハイエースは、国内で扱うかどうか分からない。仮に海外版ハイエースを日本に導入しても、4ナンバーサイズのハイエースを廃止することはない」
という。
これは納得できるコメントだ。4ナンバーサイズ(乗用車の5ナンバーサイズと同じ規格)のハイエースバンは、商用車として絶大な支持を得ている。全長は4695mm、全幅は1695mmに収まり、最小回転半径は5.0mだから小回り性能はコンパクトカー並みだ。
その一方で、ワンボックスバンだから荷室は広い。4ナンバーサイズのロングボディ「DX」でも、荷室長は3000mm、荷室幅は1545mm、荷室高は1335mm(全高が2mを超える1ナンバー車のハイルーフは1590mm)となる。
この広い荷室と、混雑した街中や駐車場での扱いやすさは、日本におけるビジネスと物流で優れた使い勝手を発揮する。従って4ナンバーサイズのハイエースを廃止することは考えられない。
そして、現時点でもハイエースには、1ナンバー(※4ナンバーより大型の貨物自動車)のスーパーロングバンが用意されている。
全長は5380mm、全幅は1880mmだからグランエースよりも長い。しかも前席がボディの前端に位置するワンボックスボディだから、荷室長は3540mmに達する。荷室幅も1730mmと広く、荷室高は1635mmと高い。これだけ荷室が広ければ、バンとして申し分ない。
一方、グランエースのベースになった海外版のハイエースには、全長が5265mmのショートと5915mmのロングがある。全幅は1950mmで共通だ。
荷室長の数値は、ショートが2910mm、ロングは3786mmだ。ボンネットを備えたボディだから、全長はショートでも5265mmに達するのに、荷室長は2910mmだから4ナンバーサイズのハイエースよりも短い。
海外版のロングは荷室長が3786mmで、国内版のスーパーロングよりも長いが、全長も約6mに達する。トヨタ ダイナカーゴの2トン積み/ロングデッキと同等で、全幅は1950mmだからさらに広い。
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