「さよならセブン 今までありがとう」25年間連れ添った相棒「1999年式RX-7」とのお別れセレモニー 80歳の誕生日に愛車を譲渡し免許返納の潔さ 長持ちさせる秘訣とは

■RX-7購入の経緯と1966年に免許を取得してからどんなクルマに乗ってきたのか?

息子さんとともにドライブ旅行に行った際に撮った写真(撮影:西本誠さん)
息子さんとともにドライブ旅行に行った際に撮った写真(撮影:西本誠さん)

 1966年、21歳で免許を取得した西本さんの最初の愛車はトヨタパブリカだった。その後、2年後に再度パブリカを購入し、コロナ→コロナ→コロナと来て、コロナクーペと6台乗り継いできたが、コロナクーペが10万kmを超えたあたりからエンジンの調子が悪くなったため、2ドアのスポーツクーペに乗り換えようと思っていた矢先、息子さんと一緒に見ていた『頭文字D』に登場するFD3S型RX-7に一目惚れし、購入を決意。

 これまでずっとマニュアル車だったため、次のクルマはAT車にしようと思っていたそうだが、欲しいクルマがRX-7だったためマニュアル車を選んだという。

西本さんがRX-7を購入したのは1999年12月。5型のRX-7 TYPE RB Sパッケージ(5速MT)
西本さんがRX-7を購入したのは1999年12月。5型のRX-7 TYPE RB Sパッケージ(5速MT)

 西本さんが購入したFD3S型RX-7は、1999年1月~2000年9月まで生産された5型のRX-7 TYPE RB Sパッケージ(5速MT)。TYPE RBの搭載エンジンは4型のタービンが組み合わされた13B2ローターのシーケンシャルツインターボで265ps/30.0kgmを誇る。

 当時の新車価格は312万8000円。大事に保管している当時のカタログとともに見せていただいた新車注文書によれば1999年12月13日。フロアマット(3万500円)とマッドフラップ(2万9600円)のディーラーオプションを装着していた。当時、保険の事務員をしていて、現金一括購入したという。

 当初はカタログに載っていたイノセントブルーマイカが欲しいと営業マンに伝えると、ブルーは飽きが来るのでハイライトシルバーメタリックを勧められてこの色にしたという。今思えば確かに飽きが来なかったのでこの色でよかったとコメント。

 「セブンの流線型のスタイルと、このブルーがカッコよくて、このブルーでお願いしますと言ったんです」と、目を輝かせながら話す西本さんの顔を見ていると、とても80歳のおばあちゃんとは思えない。まるで20代のクルマ好きのイキイキした若者の顔のようだ。なぜか嬉しくなってくる。

 これまで乗り継いできたクルマはだいたい10年くらい乗ると調子が悪くなってきて買い替えてきたそうだ。RX-7も調子が悪くなってきたらまた新車に買い替えればいいと思っていたそうだが、生産終了の話を聞いてより大事に乗るようになったという。

 驚いたのは車検整備をお願いしているマツダディーラー関係者以外、RX-7を運転させたことがないこと。息子さんも「お母さんが大事にしているクルマだから」と運転したことはないそうだ。正真正銘の1オーナー車だ。

 長崎は坂の多い町だからマニュアル車にとっては厳しい坂道発進を頻繁にしなければならない。最初は緊張したそうだが、今ではすっかり慣れて平気とのこと。「坂道発進で1mmも下がらずに発進できると嬉しくなってガッツポーズをすることもありました」とお茶目な西本さん。

 身長145cmの女性が坂道でマニュアル車を繰り颯爽と走っていたら誰しもが驚くだろう。それが80歳のおばあちゃんだったらなおのこと拍手喝采だ。

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■西本さんが25年間乗り続けてきたRX-7の状態と、長持ちさせる秘訣とは

とても25年前のクルマとは思えないほどピカッピカ
とても25年前のクルマとは思えないほどピカッピカ

 マツダディーラー赤迫店長が西本さんのRX-7の程度について、とてもいい状態とおっしゃっていたが、25年経ってもここまでいい状態なのは珍しい。長持ちさせる秘訣はあるのだろうか?

 新車から25年間、ボディコーティングを最初は1年ごと、3年ごと、5年ごとにしてきたそうで、実際に見た感じもボディは艶々。普段、停めているのは屋根付きのカーポートということもある。洗車はコーティングしてあることもあってか、自分ではせず、天然の雨のシャワーで汚れや埃を落として来たそうだ。

 実際に実車を隅々までチェックさせていただいたが、左側の前後のホイールにガリ傷はあったものの、外観は素晴らしく綺麗な状態。左右ドア、エンジンルーム、フェンダーなどの修復歴はなかった。サスペンション関係やブッシュ類は交換したことはないという。ただ、若干、エンジンルーム内にオイルの滲みがあるそうだ。 

西本さんが走った総走行距離は7万7592km
西本さんが走った総走行距離は7万7592km

 西本さんがメーターに刻んだ、RX-7の総走行距離は7万7592km。ステアリングは経年、走行距離からすると、とても状態がよかった。ダッシュボードはテカっておらず、天井も落ちていなかった。クラッチを踏んでMTのシフトノブを動かしてみたが引っ掛かりがなく剛性感もあり、クラッチペダルも軽く、ちゃんと整備されている印象。全体的にシャキッとしていた。

 西本さんに25年間、コンディションのいい状態を維持し続けた秘訣はあるのか聞いてみた。「私はクルマ(メカニズムやメンテナンス)のことは何もわからないので、整備士の方にここがもうすぐ悪くなりそうなので換えましょうとか、オイルが減ってきたので交換しましょうとか、とにかく早め早めの対応をしてくださったのがよかったのかもしれませんね」。

13B2ローターのRX-7用エンジン。若干のオイルの滲みがあるという
13B2ローターのRX-7用エンジン。若干のオイルの滲みがあるという

 以前、RX₋専門店に取材したことがあるが、ロータリーエンジンはレシプロエンジンでいうところのピストンリング、アペックスシールが摩耗(5㎏以下は厳しい)してきて圧縮が減ってきたり、破損して圧縮がゼロになることもあると聞いた。また燃焼室の冷却水が通っているライン近くが経年変化でサビてきて、燃焼室と冷却水のラインとの間が開通してしまい圧縮比がダメになるパターンが多い。

 蛇足となるが13B₋REWのエンジンブローを避ける予防策として、エンジンオイルは3000kmごとを目安に、安いオイルではなく良いオイルを使って交換する。冷却水と点火プラグも半年ごとを目安に交換するといいとのことだった。

 取材翌日にはマツダ広島本社にキャリアカーで運ばれ、当時のFD3S開発メンバーによって実際にシャシー、エンジン類などをしっかり診てもらって、交換するべきところは換えるという。

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