【GRヤリスで国産3ドアハッチ復活!!】なぜハッチバックは「5枚ドア」全盛になったのか!?

 2020年1月10日、トヨタの「GRヤリス」が世界初公開。ベースである新型ヤリスは5ドアであるのに対し、GRヤリスは日本にない3ドアのスポーティなハッチバックに。かつて一般的だった3ドアはなぜ激減?

 20~30年前は、ホンダ シビックやトヨタ ヴィッツ、マツダ ファミリア、トヨタ カローラ、日産 パルサー、スズキ スイフトなど、国内各メーカーからラインナップされていた3ドアハッチバックであるが、現在は絶滅状態だ。

 現在、日本市場で販売されている国産ハッチバック車は、軒並み前2枚ドア+後2枚ドアにリアゲートドアを備える「5ドア」となっている。

 そんななか、「GRヤリス」は、久々の3ドアハッチバックとして登場することになる。特別なスポーツモデルとはいえ、昨今の流れを考えると極めて稀なボディタイプのモデルといえよう。

 かつてメジャーだった国産3ドアハッチバック車はいつ頃消滅したのだろうか。そして、消滅した理由とは、何だったのだろうか。

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、編集部、VW

【画像ギャラリー】スイフトにも存在!! 国産3ドアハッチバック車 5選+GRヤリス


なぜ5ドアハッチバック車が急増したのか?

現行型のスズキ スイフトスポーツ。後席のドアノブを目立ちにくくした3ドア風のデザインを採用。近年ではトヨタ C-HRなど同様のデザインを採る5ドア車が増えた

 スポーティなデザインだが、不便で使い勝手の悪い、3ドアハッチバック車。クルマに対し、格好よさや走る性能よりも、使い勝手が求められる時代となり、不便な3ドアハッチバック車が消えていくことになったのは、皆さんもイメージするところであろう。

 ただ、それ以外にも理由が考えられる。

 2000年ごろから、リアのドアノブを隠すデザインが流行した時期があったのを覚えているだろうか。

 例えばアルファロメオの156(1997年)や147(2000年)にてリアドアのノブが消え、まるで2ドアクーペの様なデザインが与えられていた。

「3ドアにしなくても3ドアっぽいスタイリングにできる」考え方が、自動車デザインの中で徐々に確立し始めたことで、国産メーカーでも普及が始まった。

 マツダ RX-8(2003年)や、日産 ジューク(2010年)などが、始まりであろう。

 今では、ホンダ ヴェゼルやトヨタ C-HR、スズキ スイフトスポーツなどにも浸透したことで、純血の3ドアハッチバックは、国内では絶滅状態となったのだ。

スタイル以外のメリットも! 「3ドア」の長所と短所は?

GRヤリス。日本仕様の基準車にはない3ドアを採用。単にドア枚数を減らしただけでなく、ルーフライン形状も見直されており、そこにはデザイン以外の“狙い”があるという

 3ドアと5ドアのメリット・デメリットはいろいろあり、これだけではないかもしれないが、新車開発の設計者であった筆者が考えるメリットとデメリットを、以下へまとめてみた。

【3ドアの長所】

・スポーティなスタイリングになる

 後席ドアがないことで、ボディサイド面へのデザインの自由度が上がり、流麗なスタイリングとなる。

・高速直進性能が高くなる

 リアドアがないために、ルーフラインを後ろへ行くほどに下げることができ、リアウイングに風を多く当てることができる。

 これによりダウンフォースを多く発生させることができ、その結果として道路にへばりつくような安定した走りが可能となる。実際にヤリスGR-4の開発でも、この点に着目して開発が進められたようだ。

・リアドアのウィンドウ上げ下げ機構などが不要となるぶん、若干の軽量化ができる

 リアドアがないぶん、軽量化ができるという意見があるが、後席へアクセスをするために前席ドアを大きく(長く)する必要があり、さらには片持ち支持をするドアヒンジにも相当な負担がかかるために補強が必要となり、期待するほど軽量化はできないことが多い。

・部品点数が減るため安くなる

 リアドアに必要だったウィンドウ上げ下げ機構やドアノブ、ロック機構などが不要となる。

・ホイールベースを短くもできる

 操舵初期の旋回性能が上がる。ただし短いホイールベースは走行安定性を損なったり、ピッチングが発生しやすくなるリスクもあるため、現代はあまり推奨されていない。

【3ドアの短所】

・ドアが大きくて重い

 ドアを開け締めするときに感じる慣性の大きさで、ドアの重さが伝わるだろう。また、大きなドアのために狭い場所だとドアを開けにくく、乗り込みしづらい

・後席への乗り込みが面倒

 乗り込んでしまえば広いものの、腰をかがめて入り込む姿勢は、何度やっても苦痛である。

・後席から自力で降りるのが大変

 前席に人がいると、そもそも降りることができない。

使い勝手では軍配! 「5ドア」の長所と短所

新型ヤリスの標準モデル。オーソドックスな5ドアハッチバックとなっており、GRヤリスと見比べると、その違いがよくわかる

【5ドアの長所】

・後席から乗り降りができる
→3ドア車の後席乗り降りの苦労を知っていると、そのありがたみは絶大。

・後席のレイアウト変更がしやすい
→シートバックを倒したり、起こしたりする操作が後席側からできる(3ドアだと前席側からやらなくてはならないため、非常にやりづらい)。

・側突時の車体剛性を上げやすい
→Bピラーを車両中央に配置できるためサイドからの衝突に対して強い構造を作りやすい。

【5ドアの短所】

・後席乗降性を犠牲にせずに、ルーフラインを下げて格好よくすることが難しい。

欧州市場では3ドアハッチバックが近年も存在

現行型VWゴルフ GTIの欧州仕様。2020年1月時点の日本仕様は全て5ドアとなるが、欧州などでは3ドアも設定されていた

 国産3ドアハッチバックは随分前に消滅したと書いたが、欧州市場には最近まで3ドアハッチバックが設定されていた。

 例えばフォルクスワーゲンのポロやゴルフ、BMW 1シリーズ、メルセデス Aクラス、アウディ A3など、Cセグメントの猛者たちには3ドアが実在した。

 ただし、BMWはFF化した現行モデルで5ドアハッチバックのみとなり、Aクラスも現行型では5ドアのみとなった。欧州市場にも3ドア消滅の波が来ているようだ。

 ちなみに日本メーカーでも、欧州で販売されていたヤリス(日本名ヴィッツ、2010-2019年)をベースに、2019年2月に限定150台で販売されたヴィッツGRMNは、3ドアだった。ほかにも、先代モデルのスズキ スイフト(2010-2016年)にも3ドアがあった。

◆  ◆  ◆

 クルマは使い勝手がいいほうが良い。しかし、どんなに不便であろうとも、3ドアでなければ実現できない魅力があれば、惹かれるユーザーはきっといる。

 昔のように、3ドアハッチが再び流行ることは考えにくいかもしれないが、この「GRヤリス」が起爆剤になることを期待したい。

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