国内では独壇場だが…王者クラウンが抱える憂鬱な事情

最大のライバルはアルファード

マイチェンでグリルを大型化して威厳に磨きがかかったアルファード。ミニバンながら、従来のクラウンのコンセプトを継いでいると言える

 こういった「クラウンの改革」は、先に述べた高齢化するユーザーの年齢を下げるために行われたが、裏目に出たとも考えられる。販売店にクラウンの売れ行きを尋ねると、以下のような返答だった。

「以前はクラウンがトヨタの頂点に立つクルマだったが、今はセダンを全般的に売りにくくなった。特に現行クラウンのトランクスペースには、ゴルフバッグが入りにくい。ゴルフバッグにもいろいろなサイズがあるから一概にいえないが、従来型に比べると必要な人数ぶんのゴルフバッグが入らず、購入を諦めたお客様も少なくない」という。

トランク容量は充分なレベルだが、ショートデッキとしたことで積載性が悪くなった指摘するオーナーも少なくない。ゴルフ好きには由々しき問題だ

 クラウンを諦めたユーザーはどうしているのか。

「最近はクラウンからアルファードに乗り替えるお客様が増えた。内外装ともに豪華で、乗り心地もいい。しかもTVのニュースなどで、政治家や企業の重役がアルファードに乗っている様子が報道され、イメージもよくなってきた。クラウンにとって一番の競争相手は、アルファードかもしれない」と説明した。

ドイツ車に流れるユーザも!!

クラウン史上初めてニュルブルクリンクで走行テストをしたというだけに、走りのスタビリティは高いが、そのぶん従来の優雅な乗り心地がなくなった

 現行クラウンを運転すると、走行性能の優れたセダンになったが、メルセデスベンツEクラスに近付いたことを感じる。そうなると予算に余裕のあるユーザーなら、クラウンではなく、本場のEクラスやCクラスを選ぶだろう。

 クラウンで売れ筋になるハイブリッドRS(2.5L)の価格は551万6500円だから、メルセデスベンツE200dアバンギャルドの757万円でも、さほど高くは感じない。C180アバンギャルドなら504万円に収まる。

 走りで選ぶならBMW5シリーズ(649万円~)、3シリーズ(452万円~)に流れることも考えられる。

走りで選ぶならメルセデスベンツ、BMW(写真左)に鞍替えする人も出てきている。価格は高いがクラウンを買うオーナーにはそれほど痛くない!?

 そしてセールスマンが指摘したとおり、アルファードの世界観は、豪華さと快適な乗り心地を重視した従来のクラウンに近い。

 アルファードがセダンではなくミニバンであることに、マイナスのイメージを持たなければ、アルファードのほうがユーザーの好みに合う場合もある。

 アルファードにも2.5Lのハイブリッドが用意され、2列目に豪華なエグゼクティブパワーシートを装着したG・Fパッケージの価格は550万7000円だ。クラウンハイブリッドRSとほぼ同額になる。

セダンにこだわらず後席の快適性を重視する人にとってはアルファードの快適な2列目はもの凄く魅力的となる

 そうなるとオーナーが後席に座る使い方をする場合、クラウンではなくアルファードが選ばれることも多いだろう。

 またオーナー自身が運転するドライバーズカーとしては、ドイツ車風味の現行クラウンよりも、本場のメルセデスベンツが魅力的に感じる。

 このようにクラウンのニーズが、上級ミニバンのアルファードと、メルセデスベンツなどの欧州車に分散されて、現行クラウンの売れ行きが下がってきた。

次ページは : トヨタの国内市場に対する本気度が試される

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