トヨタの国内市場に対する本気度が試される
このような経緯もあり、クラウンは2019年7月にベーシックなSをベースにした買い得な特別仕様車のエレガントスタイル、10月には同じくSをベースにしたスポーツスタイルを設定したが、販売の回復には至っていない。
以上の流れを見ると「現行クラウンは失敗作か!?」という話になりそうだが、ある程度は想定されていたことだろう。
現行クラウンはユーザーを若返らせるために、外観から乗り心地、グレード名まで、過去から継承した特徴を手離したからだ。そうなると販売面でマイナスが生じることは十分に考えられる。
それでもトヨタは、発表時に月販目標を4500台と公表していたから、実際のマイナスは予想以上だったことになる。
注目すべきは今後の対応だ。デザインの軌道を修正しながら、現行型の優れた走行安定性に従来の快適な乗り心地も取り戻して、新しいクラウンの時代を切り開くのか。それともこのままドイツ車風味の日本車であり続け、売れずに終わってしまうのか。
新たなマイナス要素も気になる。2020年5月から、トヨタが全国的に全店で全車を扱う体制に移行することだ。
東京地区以外では4系列の区分を残すが、クラウンのトヨタ店でも、アルファードとヴェルファイアを扱うようになる。今までのクラウンはトヨタ店の専売車種だったが、今後はクラウンからアルファードへの乗り替えも容易になる。
トヨタの開発者は「クラウンは、お客様、トヨタ店の皆様、トヨタ自動車が力を合わせて育てたクルマだと思っている」と語る。この貴重な体制が失われてしまう。
トヨタは今後のクラウンをどのように発展させるのか、その成り行きからは、トヨタの国内市場に対する本気度も見えてくるだろう。
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