トヨタのハイブリッドモデルのほとんどに、ひっそりと搭載されている魔法の機構がある。それが「バネ上制振制御」だ。実際に何をしているのかは結構ナゾなシステム。ただ、装備のひっそり具合とは逆に、その効果は絶大という謎のシステムを紹介していきたい。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】トヨタのクルマを支えるバネ上制振制御すげぇぞ!!(11枚)画像ギャラリークラウンで有名になったが元祖はプリウスαなのです
バネ上制振制御とはどういう機構なのか。端的に文字で表現すると、路面の起伏に応じて、リアルタイムに駆動用モーターのトルクコントロールを行って路面からのピッチ挙動を低減することができるもの。クルマをフラットな状態で維持するために、今では欠かせなくなった機構である。
バネ上制振制御が世に広まったのは、初代プリウスαの登場時。それ以前にも、アベンシスのディーゼルモデルに搭載されていたが、このクルマは国内導入されなかった。日本で技術の存在が意識されるようになったのは2011年頃になる。
大きな話題になったのは210系クラウン登場時。ガソリンモデルとバネ上制振制御の入ったHEVモデルを、簡単に乗り比べることが出来て、効果のほどが大きく知られるようになった。
ミニバンの乗り心地が超絶アップ! バネ上制振制御の効果とは
バネ上制振制御のシステム概要は次の通り。
例えば、フロントタイヤが路面から入力を受けると、通常は車両がリフト(車両前部が上がり後部が下がる状態)する。この時にモーターの駆動力を弱めることで、アンチリフト(車両前部が下がり後部が上がる状態)方向に車両をコントロールするというもの。
逆に車両がダイブ(車両前部が下がり後部が上がる状態)では、モーター駆動力を強めて、アンチダイブ方向へ車両をコントロールする。
これにより、車両の前後方向の揺れ(ピッチ)が低減され、乗り心地が良くなるのだ。
少々乱暴に言うと、クルマがアクセルを踏んだ時のように「ふんぞり返る」状態のときには、ブレーキをかける要領で車両を前に「つんのめらせ」て、車体の水平を保つ。クルマがブレーキをかけたときのようにつんのめったら、モーターで加速させて水平をとってくれるもの。
アルファード・ヴェルファイアもノア・ヴォクシーも、シエンタだってバネ上制振制御が無くなったらもっと揺れが大きく乗り心地が悪くなる。
HEVからガソリンモデルに乗り換えても分かると思うが、トヨタディーラーにお願いするとコンピューターを使ってバネ上制振制御を停止させることもできるから、興味のある人はディーラーで機能を切ってみて愛車に乗ってみてほしい。
バネ上制振制御によって、車両姿勢が安定し、タイヤの接地性を高めることにもつながるから、操舵フィールも高まる。乗り心地や安心感以外にも、曲がりやすさなどにも寄与するバネ上制振制御。コレ無しにトヨタのハイブリッドモデルは成り立たないのだ。
ハリアーにもプロボックスにも。もちろんEVでもこの技術は働くぞ!
ちなみにバネ上制振制御はクルマが直進している状況が以外でも、効果を発揮している。
例えば車両旋回時。プリウスαに入っていた制御では、操舵時に車両が対角線を軸にしてピッチ&ロールする状態も、バネ上制振制御が抑え込んでいる。制御自体はFFモデルの場合、フロントの左右モーターが独立して動くことで、車体を安定させているのだ。
これが4つのモーターになれば、より制御は緻密になり、乗り心地はよくなっていく。モーター駆動で車体を安定させるバネ上制振制御はHEVだけでなく、今後増えていくBEVでも乗り心地の向上に大きな役割を果たしていくだろう。
特に車体が重く、重心の高いミニバンやSUVでは、この制御の有り無しで乗り心地や車酔いのしやすさが大きく変わってくるのだ。
HEVとガソリン車の違いは、燃費差をフューチャーしがちだが、こうした乗り心地の差も考慮に入れると、30万円程度の価格差が小さく見えてくるのではないだろうか。HEVもEVも、バネ上制振制御で格段に良いクルマに仕上がっているぞ。














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