【かつての栄光はいずこへ…】名車と言われたスカイラインとエルグランド衰退の分水嶺

 国内市場に冷たいと言われ、新車投入も軽自動車くらいと、ニュースの乏しい日産。そんな日産にあって、国内市場ではその存在感が極めて薄くなっているのが「スカイライン」と「エルグランド」だ。

 2台ともかつては栄華を極め、多くのファンがいるモデルだ。しかし盛者必衰の理か、いまやライバルに大きく差をつけられる衰退ぶり。この2台は、どこで運命が分かれてしまったのか? その分岐点となったポイントを、岡本幸一郎氏が考察する。

スカイラインとエルグランドの2019年6~12月の販売台数。ちなみに2019年12月で見ると、クラウン:1687台、アルファード:5183台、ヴェルファイア:2287台だった

文/岡本幸一郎
写真/NISSAN

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■「ケンメリ」の栄光は今いずこ!? 日本で行き場を失ったスカイライン

「スカイライン」と「エルグランド」。かつて輝いていた日産の2台の名車が、いまではお寂しい状況となっているのは周知のとおりだ。

 マイナーチェンジで少し息を吹き返したスカイラインだが、かつての栄光からするとあまりにほど遠い。レースで名をはせたスカイラインは、名実ともにすごかった。もっとも売れたのは4代目のC110型、通称「ケンメリ」で、4年間で約67万台が売れた。月販に換算すると約1万4000台ということになる。いまや年間でも万単位には遠くおよばないのとは大違いだ。

スカイラインのピークは月1万台超も売れた「ケンメリ(ケンとメリーのスカイライン)」

 同じく1950年代に生まれたクラウンが、セダン不遇の時代にあって、けっして安くはない価格帯ながら最新モデルもまずまずのセールスを記録していることを考えると対照的で寂しくなる。とはいえマークXも消滅し、ほかのメーカーを見渡しても売れているといえるセダンなどクラウン以外にはなく、市場の変化が最大の要因といえそうなことは大前提として断っておきたい。

 スカイラインのジリ貧ぶりは、V35よりもずっと前のR33あたりから見えていた。それまで悪くても約4年のモデルライフで30万台ほどを販売していたのに、R33は20万台あまりまで落ち込み、続くR34は約3年で6万4623台まで急減した。そこで2001年、日産はR34の販売を予定よりも早く打ち切り、本来はスカイラインでなかったはずのV35を急遽スカイラインとして売り出した。この判断の背景には、スカイラインの行き場がなくなったことが見て取れる。

 意気揚々で世に出したR32は高く評価された半面、販売的には伸び悩んだ。とくにセダンが。スカイラインがこれではいけないと、続くR33では大型化により広い室内空間と荷室を確保した。スタイリングも落ち着いたテイストとされた。ところが、今度はスカイラインらしくないと評された。そんなわけでR34は、ダウンサイズとR32を彷彿とさせるデザインにより、あのようにされた。

R32スカイラインのセダン。当時の6気筒エンジン搭載車クラスで最も狭い居室&トランクに、セドリック並みの大きくて力強いエンジンという組み合わせを採用していた

 個人的にもR33はいまいち好きではないが、R32とR34は好きだし、R34が出た時もこうするしかなかったのだろうと開発陣の心中をおもんばかったものだが、それが売れなかったのだから、もうどうしていいのかわからなくなった。だから、あのような形でV35がスカイラインとされたのも仕方がないと思っている。仮にV35とは別のスカイラインを企画したとしても、それが売れたとは到底思えない。

 V35も北米ではそこそこ売れたが、日本ではもはや販売台数が話題にならないほど売れなくなった。V35は野暮ったい印象があったが、続くV36は洗練されていたし、スカイラインはこれでいくという日産の決意も感じられて悪くなかったように思う。

 そしてV37は、当初はインフィニティバッジがうんぬんと、本質とはまったく別のところでとやかく言われたわけだが、デザイン自体は上々だと思う。いささかとってつけた感のある後期型ではなく前期型もスカイラインと名乗るからには少しでもスカイライン的な要素を入れようと努力したことがうかがえた。

現行型スカイライン(V37 前期型)。2014年2月にデビューしたが、インフィニティのエンブレムで物議をかもした。北米では「インフィニティQ50」として販売されている

 スカイラインがここまで売れなくなったのは、V35以降がスカイラインのまっとうな後継ではないこともあるが、理由としては価格帯が上がったことのほうが大きいように思う。実際にはそれなりに内容の濃いクルマでも スカイラインでひとこえ500万円が普通というのは、割高感があるのは否めず。そうなると、この価格帯なら十分に狙えるドイツ勢などの輸入プレミアムセダンに目が向いていると考えるのが妥当だろう。

 もうどのみちスカイラインにかつてのスカイラインのような未来はなかった。だからこれでよいと思う。ひとまずセダンは、どうせ売れないからと日本市場に導入されないクーペのようなことにはなっていないわけだし、スカイラインの名前が消滅するよりは、こうして残されていることを歓迎すべきかと思う。

■「キング・オブ・ミニバン」衰退の引き金は強力ライバルだけではなかった

 一方のエルグランドは、シボレー「アストロ」がブームだった1997年に登場し、日本車でもこんなクルマが出てきたと多くの人を驚かせ、もともとスカイラインのような神話性もないなかで、まさしく商品自体の力で売れに売れた。当時も不振にあえいでいた日産の底力を見せつけられた思いがしたものだ。

初代は「キャラバンエルグランド」もしくは「ホーミーエルグランド」という名前だったが、1999年にマイナーチェンジを実施し、車名を「エルグランド」に統一

 ただし、スカイラインの場合は誰かに敗れて売れなくなったわけではないのに対し、エルグランドの場合は明確に好敵手に敗れての衰退ということになる。エルグランドが2代目にモデルチェンジした、まさしくその翌日にトヨタ「初代アルファード」が発売され、当初こそ販売は拮抗していたものの、ほどなくアルファードが優勢となり、1年後ぐらいにはだいぶ差がついていたように記憶している。

 敗因としては、エルグランドもけっして悪くはなかったのだが、内外装デザインが一枚上手だったことはもとより、当初からリーズナブルな2.4L直4エンジン車の設定があったことや、後輪駆動によるバランスのよさでは上回っていたものの、いかにも重心の高そうな乗り味が払拭できていなかったことなどが挙げられる。初代エルグランドから買い替える際にアルファードを選んだ人も少なくないと聞く。

「打倒エルグランド」を目指した開発された初代アルファード。クラウンのような内装と、外装にもメッキパーツを多く採用したラグジュアリーミニバンとして登場した

 その後も年々、販売台数の差は開いていった。エルグランドも途中で小排気量2.5L車を追加したものの、気筒あたりの排気量が小さいV6で低速トルク特性が芳しくなく、重量級の車体に対しては動力性能、燃費性能とも相性がよろしくなかった。

 その後、アルファードは2008年にひとあし早くモデルチェンジし、「ヴェルファイア」というさらなる強敵まで加わった。対するエルグランドは、2010年にFF化と低全高および低床化、4気筒の2.5Lエンジン車を設定するなど大変革を図ったのはご存知のとおり。低重心に加えてリアサスがビーム式ではなく独立懸架としたのもライバルに対する優位点であり、そこを評価する向きもあった。

2010年に登場した、2.5Lエンジンを搭載したエルグランド 250XG (2WD)。現行型である3代目だが、走りや室内空間の広さは高評価だったが、ミニバン購買層が求める「視界の高さ」や「ボリューム」を自ら手放してしまった

 ただし、結果的にはここで自身の価値までも失ったといえなくなく、販売的には当初から伸び悩んだ。高めの車高による目線の高さもまた、こうした大柄な箱型ミニバンにとっては大きな価値のひとつ。また、インテリアの豪華さでは負けていなかったが、テールゲートを開けた部分の荷室の高さがたりず、ゴルフバッグを縦に積めなかったことも販売の足を引っ張った。

 途中で改善されるも、一度トヨタに流れた顧客を取り戻すのは難しいのはいうまでもない。

 そのほか、先進運転支援系の装備でも日産が先んじている部分が多々あったものの、見た目の押し出しや豪華さや前出の目線の高さなど、クルマとしての本質的な魅力の部分で及んでいなかったのは否めず。さらに相手は2017年のマイナーチェンジで、走りの質感もかなり引き上げてきた。もはやまったくかなう相手ではなくなった。

 エルグランドに求められていたのは、まさしく3代目でやめてしまった部分だったといえる。次期モデルがどうなるのかはまだわからないが、市場が何を求めているのかは開発関係者もよくわかったことだろうから、そのあたりも盛り込みつつ、もっとガチンコの戦いを演じてくれるよう期待したいところだ。

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