フィットにとって通算4代目の新型は「正念場」
以上の経緯を見ていると、新型フィットも心配になる。
初代フィット(2001年)は、丸みのある外観が新鮮で、燃料タンクを前席の下に搭載する方式により、高さを抑えながら後席と荷室も広かった。
2002年には月平均で2万台以上が登録され、同年には軽自動車も含めた国内販売の総合1位になっている。
2代目(2008年)も初代のデザインと機能を洗練させ、月に約1万5000台を登録して登録車販売1位になった。2010年にはハイブリッドも加わり売れ行きを保った。
ところが先代型の3代目(2013年)は、外観が好みの分かれる形状になり、発売後にはハイブリッドの7速DCTが数回のリコールを発生。
ハイブリッドを最初から用意したこともあり、2014年に月平均で1万7000台近くを登録したが、2015年には約1万台、2017年には8000台少々と次第に下がった。
この反省もあり、4代目の新型フィットはフロントマスクを柔和で馴染みやすい形状に変えた。内装やボディの基本的なデザインは視界に配慮している。
開発者は「お客様に尋ねると、今のコンパクトカーでは充分に満足されていないことが分かった。そこで新型フィットでは、従来からの特徴とされた快適な居住性、低燃費などの機能を向上させながら、心地よさ、癒しといった情緒的な要素も盛り込んだ」という。
つまり、フィットは機能的な初代と2代目で手堅い支持を得たが、3代目ではデザインの刷新とリコールで伸び悩み、新型の4代目で改めて新しい発展を見せている。
新型フィットの走行性能、居住性などの実用性は、コンパクトカーとして満足できる仕上がりだ。特に後席と荷室の広さは、従来型と同等ながら、全高が1550mm以下のコンパクトカーでは最も広い。
新型フィットはホンダのジンクスを破れるか
そうなると新型の売れ行きの妨げになるのは、国内市場では売りにくいとされるグリルレス風のフロントマスク、2本スポークのステアリングホイール、上下幅を薄く見せるインパネ形状などだ。
ユーザーの世代は常に新しくなっているから、このフロントマスクやインパネ形状が、若い人達には馴染みやすい可能性も高い。
そうなると現時点の新型フィットの年齢構成(50~60歳が26%、60歳以上が47%、つまり50歳以上が73%)は高めと受け取られ、もう少し若いユーザーに対するアピールも必要だろう。
ちなみに新型フィットの受注台数は、2020年2月下旬時点で2万3000台だ。実質的な受注期間は約4か月と長い。
2代目は発売後2週間で約2万台、低調だった先代型の3代目も、受注期間が長く発売後1か月で6万2000台と発表されている。
数字だけを見れば、新型フィットの注目度はあまり高くなさそうだが、コンパクトカーの売れ方は、趣味性の強いSUVなどと違って発売直後は概して大人しい。
街中で見かけるようになると、安定的に売れることも多いため、新型フィットが息の長い販売を続ける可能性もある。要は販売促進のやり方次第だ。
また、オデッセイ、ステップワゴン、フィットがフルモデルチェンジを重ねるに従って売れ行きを下げた要因として、ホンダ特有の事情もある。従来から売られているクルマの販売力が、新型車に奪われることだ。
オデッセイは1994年に登場して堅調に売れたが、1996年にステップワゴンが発売されると、自社内で競争関係が生じて売れ行きが伸び悩んだ。
そのステップワゴンも、2001年に初代フィットが登場すると販売力を奪われた。さらにフィットも、2012年に初代N-BOXがヒットすると、販売力に加えてユーザーまで奪われている。
このようにホンダ車にはフルモデルチェンジの迷走があり、さらに新規車種が従来モデルのユーザーを奪うことで、さらに売れ行きを下げる悪循環に陥ることが多い。
この悪循環は、ホンダユーザーのために、また国内販売を維持するためにも、解決すべき大切な課題になっている。
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