センターピラーレスドアの絶大な長所と意外な短所 便利なのになぜ普及しない?


N-BOXがセンターピラーレスドアを採用しない理由

登録車と軽自動車を合わせた新車販売台数が2018年、2019年と2年連続でNO.1、軽自動車販売5年連続NO.1を誇るN-BOX
全高1790mm、室内高1400mm、スライドドア開口幅640mm。なぜN-BOXはセンターピラーレスドアを採用しないのか?

 なぜタントやN-VANのようなセンターピラーレス構造が普及しないのか。

 N-BOXの開発者は、「N-BOXはピラーを装着しているが、スライドドアの開口幅は640mmとワイドだ。乗り降りしやすく不満はない」という。センターピラーレス構造は必要ないという判断だ。

 車両重量はN-BOXのG・Lホンダセンシングは890kgだが、センターピラーレス構造のN-VANプラススタイルファンホンダセンシングは940kgに達する。ピラーを内蔵すると、補強のために車両重量も増える。

 またタントの開発者は「右側にピラーを備え、左側はドアに内蔵する方式は、左右非対称のボディになるから開発が難しい。実質的に2種類のボディを造るのと同じ手間を要する」とコメントした。

タントのボディ構造。ダイハツの新型プラットフォーム、DNGAを採用する。右側にはセンターピラーがある
センターピラーレスドア側の補強されたタントの左側スライドドア

 そうなると中央のピラーを漠然とスライドドアに収めて乗降性を向上させるだけでは、開発の手間やコストの割に機能的な魅力が乏しい。

 ピラーをスライドドアに収めるなら、別の機能も組み合わせて、さらに大きなメリットを生み出す必要がある。

 先に挙げたN-VANの開発者は「助手席の格納機能がないクルマに、センターピラーレス構造のドアを採用しても意味はない」という。

 助手席の背もたれは、中央のピラーとほぼ同じ位置にあるから、センターピラーレス構造にしても、助手席があると邪魔になって後席の実質的な間口は拡大しないのだ。

 その点でN-VANは、後席に加えて助手席も床面へ落とし込むように格納できる構造とした。助手席と後席を格納すると、運転席以外は床の平らな荷室になる。

 こうなるとピラーをドアに内蔵すれば、荷物の積み降ろし性は大幅に向上する。左側のドアを前後ともに開くと荷室が開放され、ボディの左側面と後部のリアゲートを使って2つの方向から荷物を出し入れできるためだ。これは商用車のN-VANにとって機能上の大きな強みになる。

荷物の積載性が抜群に高いN-VANの室内空間

進化を続けるタントの居住空間

センターピラーレスドアによって室内空間の移動の幅も広がり、車内の作業性を高め、運転席への移動も容易にした

 タントも助手席に380mmのスライド機能を採用した。助手席を前端までスライドさせて前後のドアを開くと、後席の足元空間が大幅に広がり、なおかつピラーレス構造によってボディ側面の開口部もワイドに使える。

 ベビーカーを抱えながら、助手席と後席の間にある広いスペースに乗り込み、車内で子供を後席のチャイルドシートに座らせる作業を行える。

 さらに売れ筋グレードの運転席には、540mmのスライド機能を装着した。運転席を後端まで寄せると、子供をチャイルドシートに座らせた後、車外へ出ないで運転席に移動できる。この機能は雨天時などにメリットを発揮する。

 このようにタントは、ピラーを内蔵してスライドドアの乗降性を向上させただけでなく、助手席も前側にスライドさせることで車内の作業性を高め、運転席への移動も容易にした。

 間口の広いスライドドアから後席に乗り込み、さらに運転席まで移動する導線を引いたことで、センターピラーレス構造の利用価値を大幅に高めた。

 そしてタントの1490mmに達する左側のワイドな開口幅は、福祉車両のウェルカムシートリフト車に発展させた時も威力を発揮する。

 助手席が左側へ回転しながら外側にせり出し、乗降性を向上させる機能だから、開口幅がワイドであれば助手席の回転作動にも余裕が生まれる。

 乗員のツマ先とドアの内張りとの間に十分な余裕があり、回転作動中に足が引っ掛かりにくい。

 スライドドアに中央のピラーを収めた構造は、福祉車両に発展させる時など、効果的に使えるわけだ。今後も用途に応じて、センターピラーレス構造のボディが採用される。

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