助手席側のセンターピラー(柱)がないため、助手席ドアと後席スライドドアを開けると、開放感抜群のセンターピラーレスドア。
しかし、このセンターピラーレスドアは、超便利なのにもかかわらず、現行車では2019年7月に発売されたダイハツタントと、2018年7月に発売された商用車のN-VAN2車種のみで、N-BOXやスペーシア(先代のパレットも)、ムーヴ、ワゴンRなども採用していない。
2代目タントで初めてミラクルオープンドアを採用して以来、3世代にわたってセンターピラーレスドアを採用する現行の4代目タント。
2019年7月の発売以来、軽自動車販売台数では、2019年11月に1位(2万1096台、対前年比190.6%)を獲得したものの、そのほかの月では2~4位の間を行き来しており、なかなかN-BOXの牙城を崩していない状況だ。
ではなぜ、このセンターピラーレスドア車は、なかなか広がらないのか? 何か問題があるのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説します。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】センターピラーレスドアを採用するタントとN-VAN詳細写真
なぜセンターピラーレスドアを採用する車種が増えないのか?
乗降性を向上させる機能として、ボディ中央のピラー(天井を支える柱)をドアに埋め込んだセンターピラーレス構造がある。
最も良く知られているのはタントの左側だろう。中央のピラーをスライドドアに内蔵させた。この機能により、左側の前後のドアを両方とも開くと、開口幅が1490mmに達する。右側にはボディ剛性を確保する目的で、通常のピラーが装着されている。
またライバル車のN-BOXは、左右ともにピラーを備えるが、これをベースに開発された商用車のN-VANは、左側のピラーをスライドドアに内蔵した。

タントと違って電動開閉機能は備わらないが、前後のドアを両方ともに開いた時の開口幅は1580mmだから、タントの1490mmを上まわる。
左側の開口幅が広がれば、当然に乗降性は向上する。タントやN-VANはセンターピラーレス構造を大切なセールスポイントに位置付けるが、装着車はあまり増えていない。
両側センターピラーレスドアを採用した初代プレーリー
過去を振り返ると、古くは1982年に発売された初代プレーリーが、両側のピラーをスライドドアに内蔵した。
ただし、ボディ剛性の確保が困難で側面衝突時の安全性も下がるため、2代目では両側にピラーを備える一般的な形状になった。
トヨタは2003年に発売した2代目ラウム、2004年のアイシスで左側のピラーをドアに埋め込んだが、今は両車とも廃止されている。
現在販売されているコンパクトカーのルーミー/タンク/トール/ジャスティ、軽自動車のルークス&eKスペースなどは、後席側にスライドドアを装着するが、ピラーをドアに埋め込んだタイプではない。