パワートレインも大きなポイント
キックスを日本に導入する理由はほかにも考えられ、パワートレインもそのひとつ。
欧州で販売されている新型ジュークのパワートレインは1Lターボ+DCTのみに対し、キックスは中国マーケットに1.5L+CVTがあるため、ガソリンモデルを追加する時に好都合となっている。
そもそも日本で1Lターボ+DCTがウケるとは考えにくい。欧州で人気のDCTも日本ではCVTのほうが人気が高い。
日産に必要なのはジュークではなくキックス
今の日産に必要なのは、無難に売れてノート、セレナ、デイズ/ルークスに続いて柱になれる車種だと思われる。
同じ日産のコンパクトSUVでもキックスとジュークではキャラクター、コンセプトが大きく違う。
具体的に見ると、キックスがホンダヴェゼル的なのに対し、ジュークはトヨタC-HR的なキャラクターと言える。
トヨタがスペシャルティ要素の強いC-HRをコンスタントに販売しているのには恐れ入るが、初代ジュークでの販売実績を考えると、万人受けして幅広い世代に売りやすいのはキックスであるのは明らかだろう。
さらにSUVは3ナンバーボディに抵抗がなくなってきているとはいえ、ジュークく比べると全幅の狭いキックスのほうが日本で売れる可能性は高いだろう。
以上のことを考えると、日産が日本でジュークではなくキックスを販売すると言いうのは非常に理にかなった正しい戦略であるとわかる。
キックスに対する不安と期待
キックスは月販目標5000台程度になると言われているが、不安がないわけではない。
日本メーカーが海外から輸入して販売したモデルは一部を除き苦戦しているモデルが散見されるからだ。特に東南アジアで生産されたモデルにその傾向が強いのは気になる。
実際日産マーチはタイ生産になった現行モデルは苦戦が続いている。今では同じグループの三菱のミラージュはマーチ同様にタイ生産で日本マーケットに復活したが、残念ながらコンパクトカーとして大きく低迷している。
そのほかホンダはかつてフィットアリアをタイから輸入していたが大きく振るわず、後継モデルのグレイスに後を譲った経緯もある(グレイスは日本生産)。
しかし、これら苦戦している海外生産車に共通するのは、日本で生産されたモデルに対し価格的アドバンテージがあまりなかったり、クルマ自体に魅力が薄いというのがある。
その点キックスには日産の伝家の宝刀、e-POWERによりライバルにないモーター走行という大きな飛び道具を持っているのは強みだろう。
キックスは275万~350万円程度と予想されるように、C-HR、ヴェゼル、ライズに対して価格的な大きなアドバンテージはないだろう。
日産のコンパクトSUVの登場を心待ちにしていたユーザーがかなりいるのは間違いないなか、ブランニューSUVのキックスをユーザーがどのように受け止めるかに注目したい。
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