日産のブランニューコンパクトSUVのキックスは2020年5月下旬に発表し、6月から販売を開始することが確実となっていて、4月中には価格なども決まり先行予約が開始されると見られている。
キックスは日本ではブランニューとは言うものの、そもそもは2016年にブラジルでデビューし、その後北米、中国などで販売されている既存車なのだ。
日産は2019年9月に新型ジュークを欧州で発表したにもかかわらず日本では販売していない。そのジュークは日本では2019年いっぱいで生産が中止となり、日本ではジューク後継としてキックスが販売されることになる。
本企画では、キックスについて見ていくと同時に、なぜジュークではなくキックスなのか? という点も考察していく。
文:永田恵一/写真:NISSAN、TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI、SUZUKI
【画像ギャラリー】海外で生産して日本で販売されている現行日本車
キックスはジュークよりも居住性アップ
キックスのボディサイズは全長4295×全幅1760×全高1585mm。2019年いっぱいで生産中止となったジュークが全長4135×全幅1765×全高1565mm、欧州で販売されている新型ジュークは、全長4210×全幅1800×全高1595mmということで大差はない。
しかしジュークがクーペタイプなのに比べてキックスはルーフラインが高い形状のため、リアの室内居住空間はかなり拡大しているといえるだろう。
いっぽうデビューしてからSUVで断トツトップの販売台数をマークしているトヨタライズのボディサイズは全長3995×全幅1695×全高1620mmという5ナンバーサイズである点が違うが、日産がライズの対抗馬として考えていることは間違いないだろう。
2016年から海外で販売されているキックスだが、最新タイプのVモーショングリルの採用などにより古さを感じることはない。
パワートレインはシリーズハイブリッドである1.2Lエンジンを発電に使う、日産得意のe-POWERユニットのみを搭載することになるという。しかもキックスに搭載されるe-POWERはモーター出力や制御の向上、アイドリング時のエンジン騒音低減、ワンペダル操作でのスムーズな走行性など大幅に改良が施されている点が新しい。
駆動方式はデビュー時はFFのみで、4WD、1.5LのNAガソリン、1.6Lターボは多少遅れて追加されるというのが有力だ。
車両本体価格は275万~350万円程度と予想され、トヨタC-HRやホンダヴェゼルのハイブリッド車と対抗させる。そして1.5LのNAを追加して200万円台前半の価格とすることで、ライズをも標的とすると考えられる。
タイ生産の絶大なメリット
と、現在わかっていることに予想を加えてキックスについて見てきたが、実はキックスは日本で生産するのではなく、マーチ同様にタイで生産したものを輸入する形で販売される。
いっぽう新型ジュークは欧州で生産されている。同じ海外生産モデルなのに、日本で販売するのはなぜジュークではなくキックスなのか?
初代ジュークは日産の世界戦略車の1台だったが、それに代わるモデルとして開発されたのがキックスで、北米では2018年にキックスの導入と同時に初代ジュークは北米市場から完全撤退している。日本は北米と同じ流れるなる。
それに対して新型ジュークは欧州専用車で、欧州ではキックスは販売されていないことからも、新型ジュークは欧州、それ以外の地域はキックスと決まっていため、新型ジュークを日本で販売する予定は最初からなかったのだろう。
キックスは世界戦略車として現在、ブラジル、メキシコ、中国の3拠点で生産されていて、それに新たにタイが加わることになるが、タイで生産する大きなメリットがある。
タイ政府は2017年から自国での電動車の生産を促すために生産設備の輸入税免税や物品税の減税などの優遇制度を開始していて、電動車にはEVだけでなくハイブリッド、PHEVも含まれる。
日本でしか生産していなかったe-POWERを海外で生産する手間はタイでも欧州でも同じだろうが、タイで生産することで設備投資費は大きく節約できる。
ちなみにこの優遇制度はトヨタ、ホンダ、三菱も申請ずみのようなので、今後タイ生産の電動車が日本に導入されるケースが増えてくるのではないだろうか。
コメント
コメントの使い方