2019年12月から走行中スマートフォンなどを使用する「ながら運転」に対する厳罰化が始まり、約4カ月半が経過した。
警視庁の資料によると、ながら運転による事故件数は大幅に増加しており、10年前に1299件だった事故件数は、2018年には2790件と約2倍になっていた。また、携帯電話使用時の死亡事故率は、未使用時の約2.1倍に増加するというデータも出されていた。
当記事では、「ながら運転」に対し強化された罰則の内容や、増加傾向だった事故件数への厳罰化の効果などを紹介していきたい。
文/永田恵一
写真/Adobe Stock
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■「ながら運転」に対する厳罰化の内容
●通話を含めた電話機などの保持や2秒が目安となる注視
・罰則&反則金
5万円以下の罰金(反則金は普通車で9000円) → 6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金(反則金は普通車で1万8000円)
・違反点数
1点 → 3点
●「ながら運転」が原因の事故を起こすなど、交通の危険を生じさせた場合
・罰則 & 反則金
3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金(反則金は普通車で9000円) → 1年以下の懲役または30万円以下の罰金(反則金は対象外で罰則が適用される)
・違反点数
2点 → 免許停止となる6点
取り締まりで検挙される前者に関しては何とか軽微な違反のうちに入るものの、「ながら運転」が原因で事故を起こした後者だと一発で1カ月間の免許停止になるのだから、これは重い罰則だ。
それを裏付けるように、「ながら運転」による事故件数は2008年の約1300件に対し、2017年と2018年には倍以上の約2800件にまで増加しており、厳罰化も納得できる。
■厳罰化の効果はあったのか?
最新データとなるのは、警察庁発表の2019年12月から2020年2月までの3カ月間の「ながら運転」の取り締まり件数と、「ながら運転」が原因で発生した事故件数だ。
●取り締まり件数
前年同時期(2018年12月から2019年2月) 17万2465件 → 6万4617件(62.5%減)
●事故件数
660件 → 363件(45%減、「ながら運転」による事故件数ワースト3は福岡県40件、東京都と埼玉県の28件、兵庫県の23件)。うち死亡事故は2件減の7件、重傷事故は12件減の34件。
と、取り締まりの強化や厳罰化、「ながら運転」の危険性の周知を行った効果はひとまず非常に大きかったと断言できる。
■「ながら運転」の危険性
現状では「ながら運転」の危険性が認知され違反や事故が激減しているのは事実だが、何ごとも“喉元を過ぎれば”のように気が緩むことは多いものである。
そこで注目したいのが交通事故ゼロプロジェクトを展開し、交通事故防止のための啓蒙に力を入れている岡山トヨペットが2020年4月6日に公開した動画である。
その内容は「2秒間何かを注視する人が続き、その2秒間が運転中のながらスマホだったら?」というものだ。動画を見ると普段意識することは少ないが、2秒間という時間は意外に長く、運転中2秒間目を離したらいくらでも事故につながるというのがよくわかる。
それもそのはずで、この動画では40km/hで走っているクルマは2秒間に約22m(1秒間なら約11m)も進むことが強調されている。40km/hで走行中なら、危険を察知し急ブレーキを踏むまでに1秒掛かったとしても、残りあと1秒の合計2秒あれば十分停止できるだけに、何かあって対処ができるのと、「ながら運転」により何もできないというのは当然ながら天と地との差である。
これが「さらにスピードが上がったら(60km/hなら2秒間で約33m、1秒間なら約16.5m)」と思うと、考えるだけでも恐ろしい。
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