マツダは何が変わったのか? 大黒柱CX-5販売減は成長の犠牲か、乗り越えるべき試練か

現在のCX-5はなぜ以前より台数が減っている?

2019年発売のCX-30。CX-3とCX-5の間を埋める車格で、なおかつ全高は低く、使い勝手も良いのが特長。それがCX-5のユーザーと一部重なっていると渡辺氏は指摘

 魂動デザインとSKYACVTIV技術に基づく今のマツダ車で、代表的な存在はCX-5だ。

 誕生翌年の2013年には日本国内で3万8520台(月平均で3210台)を登録。2015年には2万7243台(同2270台)に下がったが、2016年12月に現行型へフルモデルチェンジされ、2017年には再び4万1622台(同3469台)に増えた。

 当時の販売店からは「堅調に売れた先代CX-5のお客様が新型に乗り替えている。またフォルクスワーゲンなど、欧州車のお客様がCX-5を購入されるケースもある。先代CX-5に注目しながら、様子を見ていた他メーカーのお客様が、2代目にフルモデルチェンジしたのを見計らって購入されている」というコメントが聞かれた。

 この後もCX-5は、2018年に3万8290台(3191台)を登録したが、2019年には3万1538台(2628台)に下がった。2018年比で18%減っている。2019年にはマツダの国内販売が前年比7.8%のマイナスとなったが、CX-5の減り方はそれ以上だ。

 CX-5の登録台数が下がった背景には、複数の理由がある。

 まず2019年には、マツダ3とCX-30という新型車が加わったことだ。特にCX-30は、CX-3とCX-5の中間的なサイズのSUVで、日本の市場環境に合っている。

 売れ行きも堅調で、1か月に3000~4000台を安定的に登録している。CX-5は少なからずユーザーを奪われ、2020年の1か月の登録台数は2000~3000台だ。

 CX-30にユーザーを奪われた理由として、CX-5の価格が以前に比べて高まったこともある。先代CX-5の後期型(2016年)は、2.2Lディーゼルターボを搭載する「4WD・XDプロアクティブ」が316万4400円だった。

 それがフルモデルチェンジを経た今は、同じグレードが340万4500円になる。安全装備が充実して商品力と価格が高まり、2%の消費増税も加わって割高感が強調された。

 筋の通る値上げだから不満はないが、人気の高いディーゼル搭載車の大半が300万円以上になると、感覚的に先代型の買い得な印象は薄れてしまう。

 CX-30の価格は1.8Lディーゼルターボの「4WD・XDプロアクティブ」が312万4000円だ。ボディとエンジン排気量はCX-5より小さいが、外観デザインと基本設計は新しい。

 CX-30の価格をCX-5と比べると、「4WD・XDプロアクティブ」同士の比較で28万円程度の違いだ。それでもCX-30の外観や運転のしやすさに魅力を感じるユーザーは少なくないだろう。このような経緯もあって、CX-5の売れ行きが下がった。

大きく変わったマツダを取り巻く環境

2017年にモデルチェンジして販売された現行モデルのCX-5。SUVは以前にも増して車種も増え、激戦区となっており、他社との違いや優位性を打ち出すのは至難の業だ

 また、CX-5の属する全長が4500~4600mm、売れ筋価格帯は280~340万円というミドルサイズSUVは、人気も高く競争が激しい。RAV4、エクストレイル、フォレスターという具合に強豪がそろう。

 このほか直近では、コンパクトSUVのライズも加わり、登録車の販売1位になった。「CX-5のようなミドルサイズSUVではなく、コンパクトなライズで充分」と考えるユーザーも増えているだろう。

 以上のように、CX-5を含めてマツダを取り巻く市場環境は大きく変わっている。先代CX-5が発売された2012年頃に比べると、今では目新しさや買い得感が薄れた。当時売られていたミニバンも廃止されている。

 今のマツダ車は優れた商品に成長したが、車種のラインナップ、価格、売り方などでユーザーの気持ちを逆なでしている。非常に惜しいところで失敗しているわけだ。

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