近年大きく評価を上げた自動車メーカー、マツダ。その核となっているのがSKYACTIV(スカイアクティブ)技術と呼ばれる新しいパワートレーンと鼓動デザインで、最新のマツダ車は、この2つの核に基づくクルマ作りがおこなわれている。
その端緒が、2012年に登場したSUVの「CX-5」であり、同車は販売面でも成功を収めたほか、日本カーオブザイヤーなどにも輝き、「マツダのクルマ作りが変わった」、「最近のマツダ車は良いらしい」と評価を高めるきっかけの1台ともなった。
しかし、今はCX-5が誕生した当時と比べると、ややマツダのそうしたイメージ・定評が薄れてきている印象もある。
CX-5誕生時と今でマツダは何が変わったのだろうか。渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎
写真:MAZDA、編集部
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欧州メーカー流に舵切ったマツダのクルマ作り
クルマに対する好みはユーザーによってさまざまだが、好みが分かれるとすれば欧州メーカーで、メルセデスベンツやBMWが挙げられる。
欧州メーカーの好みが分かれるのは、ブランドの個性がハッキリしているからだ。運転感覚にも全車に通じる特徴があり、機能を表現する外観やフロントマスクも、メーカーやブランドごとに統一されている。
こうした日本メーカーのなかで、欧州メーカーのような発展を見せているのが今のマツダだ。
マツダの2000年時点での世界生産台数は78万台、国内販売台数は31万台であったが、約10年間で海外・国内ともにマツダ車の売れ行きは半減していた。
そこで生み出された復活プランが、今のマツダ車を支える魂動デザインとSKYACTIV技術だ。デザインとメカニズムを絞り込み、2005年頃から開発を開始した。
エンジン、プラットフォーム、サスペンションなどを同時に開発することで、すべてを刷新させる新しいクルマ作りに取り組んだ。
ただし、複数のメカニズムを同時に開発すれば、投資が一時期に集中するから、経営的に大きなリスクが生じる。そこで採用した方法が、マツダの「モノ造り革新」であった。開発と生産の合理化によってコストを抑え、同時開発に対応した。
デザインとメカニズムを絞り込むクルマ造りにより、商品ラインナップも変わった。ミニバンのプレマシーやビアンテ、空間効率の優れたコンパクトカーのベリーサなどは、すべて生産を終えた。
魂動デザインとSKYACTIV技術に基づく車種ラインナップは、いずれも走行性能が優れ、外観は格好良く、クルマ好きのユーザーに適した商品だ。いい換えればミニバンのプレマシーなどは、新しいマツダ車の性格に合わないから廃止された。
魂動デザインの外観は、フロントマスクの形状も含めて、マツダ2からCX-8まで共通化されている。マツダのホームページの「カーラインナップ」を開くと、同じクルマがたくさん並んでいるように見える。これは狙い通りで、マツダ全車に通じる魂動デザインをストレートに表現したわけだ。
初代CX-5で始まった新しいマツダは成功しているのか
魂動デザインとSKYACTIV技術に基づくクルマ造りを最初に確立させたのは、2012年2月発売の先代CX-5であった。同年11月には、現行マツダ6(アテンザ)も登場して、車種をそろえていった。
マツダ車の売れ行きを振り返ると、魂動デザインとSKYACTIV技術を確立する前の2010年は、世界生産台数が131万台、国内販売はOEM軽自動車を含めて22万台だった。
CX-5やマツダ6を発売した2012年は、世界生産台数が119万台/国内販売台数は22万台に下がっている。
しかし、2013年には126万台/23万台に回復して、2015年は154万台/25万台、2017年は160万台/21万台、2019年は149万台/20万台と推移している。
このように見ると、世界生産台数は2010年が131万台、2019年は149万台だから、魂動デザインとSKYACTIV技術の採用で18万台増えた。比率に換算すれば14%増加している。
逆に国内販売は、2010年が22万台、2019年は20万台だから2万台減った。比率にすれば10%のマイナスだ。
つまり、マツダの新しいクルマ造りは、海外では成功したが、国内ではあまり高く評価されていない。先に述べたとおり、2010年の時点では、ミドルサイズミニバンのプレマシーとビアンテ、さらにLサイズのMPVも販売されていた。
コンパクトカーのベリーサ、ロータリーエンジンを搭載するRX-8もあり、これらの廃止が販売低下に結び付いた。
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