なぜここまで人気が逆転したのか?
転機は2018年のマイナーチェンジだ。変更点は、内外装のデザイン変更やクオリティアップ、使い勝手の向上、3.5L車に新開発の直噴エンジン搭載と新開発ダイレクトシフト8ATの組み合わせた。
さらに最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」の設定、「第2世代トヨタセーフティセンスP」の標準装備など、多岐にわたっている。
販売台数の明暗に直結したのは、両車のフロントマスクにある。2015年に登場した3代目アルファードは、比較的おとなしめで、クラウンのような清潔感のあるフロントマスクだった(とはいえ縦型グリルはメッキでギラギラだったが)。
エアロタイプの方は、やや厳つさを強調していたが、まとまり感のあるフェイスとなっていた。
それが2018年のマイナーチェンジで、ヘッドランプ内をブラックアウトと細目化を行い、フロントグリルもブラック基調にしながらも、メッキの縦ラインを入れ、高雅ながらも派手なフェイスとなった。特にエアロ仕様による厳つさが「引き締まって程よくカッコよい」と、好評を得た。
ヴェルファイアのほうはというと、2018年のマイナーチェンジで、メッキエリアをフロントのサイドエリアまで拡大し、横に引かれたサイドグリルのデザインと相まって、ますますギラギラ感が増したフロントフェイスとなった。
トヨタは「この手のクルマを好むユーザーは、顔つきがギンギラギンであるほどに喜ばれる」と考えたのかもしれないが、ほどよいバランスに変化したアルファードのほうが、顧客に受けることとなったのだ。
個人的には、アルファードの最上級グレード「Executive Lounge」がもつ雰囲気に、魅力を感じる。あくまで筆者のイメージだが、企業のオーナーや要人、といったVIPを乗せて、運転手がハンドルを握る高級車を想像させてくれる。
全系列併売化でアルファードに一本化? 販売動向はどうなる?
2020年3月の販売台数は、アルファードが7885台、ヴェルファイアが2719台と明暗を分けているが、もし統合されれば、販売台数が1万台以上となる高級ミニバンブランドとなる。
しかし先日、5月1日からアルファードとヴェルファイアに、ゴールドをアクセントにした特別仕様車が設定されることがリリースされた。このことからも、ヴェルファイアが即時、カタログ落ちするということはない、と思われる。
今後は初代のアルファードVのように、アルファードの1グレードになる(ヴェルファイアという名称は消滅)というのが筆者の予想だ。
まとめ
フロントフェイスの造形一つで、これほどの逆転劇が起きてしまうとは、非常に面白い。ただ逆に考えると、フェイスチェンジ一つで、販売失速したクルマが復活する可能性もあるということだ。
直近では、2012年発売の三菱ミラージュがこの4月にビッグマイナーチェンジで、ダイナミックシールド顔となり、南米で2016年から販売されている日産キックスが、フェイスリフトとともに日本に登場する。これらの躍進にも注目だ。
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